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第107号(2024年11月号)
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AI×データ活用が導く、新時代のマーケティング変革とは?電通グループのキーパーソンに聞く

dentsu Japanが考える、AI時代のデータ戦略のポイント

安成:dentsu Japanが考える、これからのデータ戦略のポイントをお教えください。

松永:dentsu Japanはグローバルに事業を展開しているため、国や地域によるデータ環境の違いにも精通しています。dentsu Americasが統括する米国は、2ndパーティデータが流通しており、IDによってユーザーの生活環境がわかります。それをCRMや広告配信に活用しています。一方、欧州を含むdentsu EMEAは、規制などの影響で非常にデータが流通しづらい地域です。またアジアやオセアニアを統括するdentsu APACは、国によって環境がまったく違うため、それぞれ対応しないといけません。

 日本のデータ環境は、dentsu Americasの地域とdentsu EMEAの地域の中間といえます。データがあまり流通していませんし、現時点では1stパーティデータの活用も限られています。そのため、クライアント企業やプラットフォーム事業者とのアライアンスを活用して必要なデータを使えるようにしています。グローバル企業だからこそ、dentsu Japanでは海外の状況を把握しながら、日本特有のデータ戦略を精緻化しています。

安成:データを集めても、分析できる人材がいないとクライアント企業への提案はできません。人材育成についてはいかがでしょうか。

松永:データサイエンティストの育成にも注力しています。独自の認定制度なども設けており、前述のような3つのデータを統合的に分析できる人材が、dentsu Japanで500名ほどいます。専門人材の育成に加え、dentsu Japan全体での分析スキルの底上げのために、データサイエンスやAIに対して動画や資料を通じて学び、ナレッジをシェアする基盤も整備しています。

 一方、生成AIが広がるにつれて、クライアント企業目線でのコンサルティングやストラテジーがより重要になってきます。クライアント企業の商品やサービスに込めた想いや顧客の気持ちも理解した上でディレクションし、顧客体験を作っていくことが不可欠です。

 このような領域はAIではなく、人間が担う必要があります。コンサルタントやストラテジスト、マーケターといった人材が豊富な点も、dentsu Japanの大きな特徴だと思います。

良いマーケターが、AIの良い使い手になれる

安成:これからはマーケティング戦略を策定する上で、AIを活用することが標準的になっていくのでしょうか。

深田:そう思います。マーケティングの仕事では「理解するフェーズ」「企むフェーズ」「実行するフェーズ」があると考えていますが、AIによって、理解するフェーズにおける効率化が飛躍的に進みました。たとえば当社では社内サービスの「スマートワークコンシェルジュ(SWC)」というチャットボットに対して、ある商材の市場分析を依頼すると、当社独自のデータやAI利用許諾済みのレポートから、一般的なマーケティングフレームによる分析結果がすぐに手に入ります。

 企むフェーズでは、作業の本質は「気づく」ことです。多彩な視点を持ち、色々な角度から事象を見て突破口に気づけるかが重要です。これまではマーケターの頭の中でこの作業をしていましたが、今はAIがブレインストーミングの相手になってくれます。クライアント企業への提案でも、先方からの意見をいったん持ち帰るのではなく、その場でAIに問いを投げかけてブレインストーミングすることが可能です。

 顧客体験を中心に始まったAI活用が、市場理解プロセスや戦略策定プロセスにも良い循環をもたらし、イノベーションを起こしているのです。

株式会社電通 執行役員(ストラテジー領域) 深田欧介氏 電通でクライアント企業のマーケティング戦略策定を担うチームを率いる。2024年1月1日付で設置された11のマーケティング局を担当。
株式会社電通 執行役員(ストラテジー領域) 深田欧介氏
電通でクライアント企業のマーケティング戦略策定を担うチームを率いる。2024年1月1日付で設置された11のマーケティング局を担当。

安成:AIと対話して新しい気づきを得る力は、誰しもが持っているものではないと思います。AIと対話しながらマーケティング施策を深める技術はどうやって身に付けるのでしょうか。

深田:人を理解すること、つまり、どうすれば人の心が動くか、経験によってわかることがマーケターの“凄み”になっていきます。それは、AIを使う時も同じではないでしょうか。AIをツールではなく人格と捉えて、この優れた知能とどのような対話を行い、提案される選択肢の中からいかに良いものを選ぶかが、人間側に問われています。

 したがって、AIの時代においても、マーケティングの勝ち筋を考え感度を高めていくという基本的な能力を培うことが、AIとの対話力を上げるために重要です。良いマーケターが、AIの良い使い手になれるのです。

次のページ
業務効率化の視点で捉えられがちなAIを、dentsu Japanはどう活用していくか

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この記事の著者

加納 由希絵(カノウ ユキエ)

フリーランスのライター、校正者。

地方紙の経済記者、ビジネス系ニュースサイトの記者・編集者を経て独立。主な領域はビジネス系。特に関心があるのは地域ビジネス、まちづくりなど。著書に『奇跡は段ボールの中に ~岐阜・柳ケ瀬で生まれたゆるキャラ「やなな」の物語~』(中部経済新聞社×ZENSHIN)がある。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:株式会社電通コーポレートワン

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2024/11/20 17:17 https://markezine.jp/article/detail/47324

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