ファンづくりの秘訣は「ユーザーとサービスを共創できるコミュニティの構築」
サポーターから提供された情報が大きく予報に貢献している例として、村田氏は「桜の開花予想」「ゲリラ豪雨」を挙げた。
桜の開花予想では、サポーターが自分の住む地域の桜の様子を写真に撮って投稿することで高精度での予報が可能になっているのだという。気象庁は「同等の情報提供が民間気象事業者から行われている」として、2009年に桜の開花予想の発表を終了した。
また、ゲリラ豪雨に関しては、短時間で局地的に発生するため、従来の天気予報のような「1時間ごとの更新」では、カバーしきれていないことが課題として挙がっていた。しかし、同社の場合、サポーターが「黒い雲が出てきた」「体感的に涼しくなってきた」といったリポートをリアルタイムで送ってくれるため、いち早く前兆を捉えて、突発的な現象に対しても高精度な予報が行えるのだという。
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このように同社では、「ユーザーが自主的にサービスを共創してくれるコミュニティの運営」を行うことで、サポーターの“ファン化”を促進しているのだと村田氏は語る。
ファン同士の交流機能でコミュニティを活性化
しかし、たとえ企業がコミュニティを運営したところで、ユーザーが積極的にサービスに携わってくれる仕組み作りは容易ではないだろう。
それにも関わらず、サポーターが主体的に同社のサービス改善に携わってくれている理由として村田氏は、「サポーター同士の交流機能」の存在を挙げた。
「いくらサポーターのリポートによって天気予報の精度が上がると言っても、1日に20万件も投稿がある中では各サポーターがサービスに貢献している実感は持ちにくく、継続するモチベーションはなかなか生まれません。そこで、ウェザーニュースでは、投稿したリポートにサポーター同士が“いいね”を押したり、コメントしたりする機能をつくりました。こうすることで、コミュニティが活性化し天気予報に必要なデータが集まる。すると、予測精度が向上するためお天気メディアとしての“信頼度”が高まる。それにより、アプリを開く頻度も上がり、積極性がさらに増すという好循環を作れていると思います」(村田氏)
加えて同社では、サポーターによるエンゲージメントを高めるために定期的にユーザー参加型のキャンペーン企画も実施しているのだという。その一つの例として村田氏は「チャリティーウェザーリポート」を挙げた。ウェザーニュースでは、天気の報告を行うとポイントを得られる仕組みとなっているのだが、その獲得ポイントに応じて同社が被災地などに寄付を行うという企画だ。
こういった企画を行うことで、「天気を報告する」という身近な取り組みに社会的な意義を付加する狙いがあるのだと村田氏。こういった仕掛けを行うこともサポーターの貢献意識を高め、コミュニティを活発化させることにつながるのだと語った。