会社の「危機」を通して、社内の共通項ができることも
田中:西田さんは、印象深かった事例はありますか?
西田:良い事例ではないかもしれませんが、お題の「社内の意思統一」という意味で言うと、日立が大赤字になった時は、ある意味社内で「危機感」という共通項ができたように思います。本当に、「やらなくては」という意識が揃った時の強さはこの時に感じました。

また、当時「グローバル化」も半ば強引に進みましたね。日立製作所はグローバルといってもドメスティックな要素もある会社なので、かつては「まずは国内ありき」という様子だったのです。これが社長の号令により大きく変わり、「国内」「海外」という区分が廃止されました。たとえば、私がいた宣伝部も、国内グループ・海外グループと分かれていたのですが、この分け方もやめましょうと。こちらは、経営陣の意識改革により、社内の意識がガラリと変わったケースですね。
クリエイティブは代理店任せで良いのか?
田中:続いて、2つ目の議題に入ります。メッセージ戦略についてです。どういったメッセージをどういうメディアでどういう表現で、誰に伝えるのか。どういうご苦労があるのかをお伺いしたいです。
瀬戸口:私は宣伝部出身でもあるので、いわゆるクリエイティブは非常に大事だと思っています。構想力をもってクリエイティブワークの前段階にあるストーリーやシナリオを開発し、クリエイティブやメッセージに繋げていくことが大事だと思います。
田中:構想力でメッセージ開発というのは、すごくいい言葉ですね。ただ、企業によっては広告代理店に任せる領域でもあると思います。瀬戸口さんは、やはり社内の宣伝部で構想力を持つことが必要と考えられますか?
瀬戸口:宣伝部あるいはそのブランドに関係しているマーケティングコミュニケーションチーム、広報のチームがワンチームとなり、そこにチャレンジしていこうという機運を作ることがカギだと思います。
構想力は数年で身につけられるものではありませんが、事業会社でもそうした人材を育てるための投資を惜しむべきではないですし、外部のパートナーに任せれば済むことではありません。クリエイティブを完全にアウトソーシングしてしまうと、事業会社の宣伝部は予算・広告出稿・広告エージェンシーの管理に業務がとどまってしまいます。そうすると、社内にコミュニケーションのノウハウが蓄積されないことが問題なのです。