多くの企業が抱える「理念浸透」の課題
近年、多くの企業がパーパス、ビジョン、ミッション、バリューなど、いわゆる「企業理念」の策定や刷新を進めています。企業理念の目的は「企業文化」を形成すること。その理念のもと社員の意識や行動が変化し、企業独自の文化が醸成され、事業活動を活性化させる原動力になることです。
成功例としてまず思い浮かぶのが、サイバーエージェントです。同社は「21世紀を代表する会社を創る」というビジョンを事業づくりから日々の行動に至るまで、すべての判断基準としています。同様に、メルカリの「Go Bold」やDeNAの「『こと』に向かう」といった価値観も、企業の“らしさ”を示し、事業成長に貢献してきたことが広く知られています。
また、大手企業やJTCなどにおいても、経営理念の存在感は大きいです。サントリーのバリューの1つ「やってみなはれ」は、創業者 鳥井信治郎氏の開拓者としての覚悟を込めた言葉で、同社の挑戦に前向きな企業文化を生み出す原動力となっています。
企業に求めるものや働き方の価値観が多様化している時代において、企業理念は力強い企業文化を生み出し、事業成長を支えるのに欠かせないものになっているのです。
しかし、一方で企業理念の「浸透」に課題を抱える企業も多くあります。2023年にパーソル総合研究所が実施した「企業理念と人事制度の浸透に関する定量調査」によると、企業理念を「当たり前に実施できている」と感じている人は35.9%にとどまり、「6割以上」の人が理念を“お題目”以上には捉えられていないことがわかっています。また、日々、セブンデックスに寄せられる課題も浸透にまつわるものが多くあります。
現場のメンバーにとって、企業理念は業務に直結しないため、関心を持たれにくいのが実情です。特に大手企業では、組織の規模が大きいため浸透させるために動かすべきものが多いことも、ハードルの高さになっています。企業理念の策定が進んだからこそ、これからは「どう浸透させていくか」が大切です。
浸透しやすい理念は体系と文言がポイント
では、理念を浸透させるには何が必要なのか。次の2つに分けて考えてみたいと思います。
- 浸透しやすい理念の策定
- 理念を浸透させる施策
多くの企業が後者の施策自体に課題を抱えていると思われがちですが、実は前者に課題を抱えるケースも少なくありません。
たとえば、策定した理念体系の構造が複雑すぎるケース。パーパス、ビジョン、ミッション、バリューなどの一般的なものに加え、独自の標語やキーワードが乱立し、社員がどれを覚え、どの場面で意識すべきかわからなくなってしまいます。
また、1つひとつの文言のわかりづらさも課題になります。「明確さ」「共感性」「独自性」「発話のしやすさ」「覚えやすさ」などを考慮しながら、そもそも浸透しやすい理念を策定することが大切です。
理念浸透の5ステップ
良い理念が策定できているとすれば、浸透の部分に課題があると考えられます。そこに効くのが「ブランド投資」です。その前提として、理念浸透のステップについて説明したいと思います。
セブンデックスでは、理念浸透は「認知→理解→共感→行動→習慣化」の5ステップで進むと整理しています。理念策定の最終目標である「企業文化の醸成」とは、ステップ5の「習慣化」まで到達した状態のことです。
これをもとに、各ステップに必要な施策を実行していくことで、理念を浸透させていくことができます。たとえば、「認知」が課題であれば、理念を書いた社内ポスターを掲示して接触頻度を高める方法が考えられます。「共感」を得るためには、感情に訴える動画を制作するのも効果的です。「習慣化」を目指すには、理念を評価制度に反映させることで、日常業務に組み込むことが考えられます。