スポーツチームの立ち上げに活きた、マーケターの感覚とは?
廣澤:普段の業務の向き合い方やコミュニケーションによって、KOSÉ 8ROCKSの立ち上げに携わることになった中村さんですが、選手集めや事業計画の立案など、初めてのこともたくさんあったと思います。最初は何から取り組み始めたのでしょうか。
中村:本当に何も決まっていない状況だったので、最初はダンスのジャンルから決めました。D.LEAGUEはブレイキン以外にもヒップホップやロックなど異なるジャンルのダンスを踊るチームが存在します。

その中で、当時2024年にパリオリンピックで競技として初めて採用されるという噂もあったことから、国際的にも人口が多く今後競技として発展していく可能性が高いブレイキンを選びました。そして、ブレイキンに精通しており、国内外で実績のあったISSEIをディレクター(監督)に迎えました。
その後はダンスだけでなく、衣装や楽曲など、ダンスに関わる演出全般を得意とするパートナー企業を探し、チームとしての組織を整えていきましたね。
廣澤:コーセーとしてプロダンスチームを持つ理由から適切なジャンルを見極め、市場が伸びるポテンシャルのあるブレイキンを選ぶ。そして、D.LEAGUEの中で独自性を発揮できるよう、ISSEIさんとパートナー企業の協力を得てチームのコンセプトを作っていく。この過程がまさにマーケティング的でおもしろいですね。
中村:そうですね。今回のプロジェクトはコーセーの特定の化粧品に紐づいた取り組みではないので、ダンスチームとしてどうすれば人気が得られるかを前提に考えていました。その中で一番チャンスがあるのがブレイキンでした。
マーケティング思考でチーム作りをフォローする
廣澤:一番チャンスのあるジャンルを選べば、結果としてコーセーの認知も広がりますよね。ちなみに、中村さんはチームを立ち上げる前からダンスカルチャーに精通していたのですか。
中村:全くですね。自分が学生のときはダンスの授業もありませんでした。
廣澤:ダンスの前提知識がそこまでない中で、ISSEIさんなどと議論し、方向性をまとめていくのは大変ではなかったですか。
中村:ダンスについて勉強したのはもちろんですが、マーケターとしてこれまで仕事してきたことが役にも立っていたと思います。競合となる敵チームがどのジャンルかを理解し、自分たちがどのようなショーケースを作ればいいのか、ビジネス的視点から戦略的に考えることができました。
ダンスも広義で見ればコミュニケーションなので、周りからどう見られるかを考えるという点では近かったので、その点からフォローすることを心掛けました。
ゼロイチの経験で培われたスキルとは?
廣澤:全くの初心者だったところから、プロの協力のもとKOSÉ 8ROCKSを立ち上げたわけですが、学びになったことや得られたスキルはありますか。
中村:何も決まっていない状況からルールや仕組みを作り、組織に落とし込んでいく力がつきました。広告宣伝の仕事って、ある程度出稿できるメディアも決まっていて、一定の枠の中で何をするか決めると思うんですが、KOSÉ 8ROCKSの立ち上げは何も枠のないところからのスタートでした。その中で物事を抽象化して、形式化していくのはとても勉強になりました。
廣澤:実際にチームを立ち上げ、運営していく中でファンの方の反響はどうでしたか。
中村:コロナ禍に立ち上げたこともあり無観客のオンライン配信のみで、動画へのコメントやSNSの投稿で反応は見ていたもののどのくらい見ている方が熱狂しているのかははっきりとしていませんでした。
でも、有観客で声出しOKの試合を始めて見たとき、観客の盛り上がりを感じることができて、そこでちゃんと需要があると実感できました。