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有園が訊く!

テレビ業界のビジネスは変われるか 奥律哉氏に聞く、地上波の“その先”のサービス

同時配信だけでは不十分 新しい放送サービスを志向せよ

有園:テレビ番組についてはどうでしょうか。同時配信の現状はどうですか。

奥:NHKは2020年から「NHKプラス」というサービスで、すべての時間帯において総合テレビとEテレの同時配信を実施しています。

 民放キー局は2022年から、配信サービス「TVer」で、プライムタイム(午後7~11時)の同時配信を始めています。まだ部分的な実施にとどまっているのが現状です。

有園:冒頭で、新しい放送サービスを志向していくことが重要だというお話がありました。同時配信は一つのキーになるのでしょうか。

奥:同時配信はあって当たり前で、プラスアルファがなければいけません。たとえば、TVerにもオリジナルコンテンツがあります。オリンピック中継では、テレビで放送されていないような競技も配信していました。ネットでは、それぞれのオケージョンによってコンテンツの出し方が変わってきます。それを考慮してサービスを提供することが重要だと思います。

有園:ラジオについては、インターネットで番組を聞けるサービス「radiko」がうまくいっていますね。

奥:ラジオ放送とほぼ同じものがネットに出せています。既に若い人たちにとっては、「ラジオ放送をネットで聞く」のではなく、ストリーミングサービスの一つとして認識されているようです。ラジオはローカル局の自社制作比率が高いため、権利の問題もクリアしやすいようです。

「本物の情報」の価値とは

有園:テレビ局は昭和から平成にかけて、日本の文化を支える情報発信の柱でした。時代が変わっても、クオリティの高い情報を発信する映像メディアは残さなければならないと思います。残念ながら、インターネットのプラットフォーマーのビジネスではそれができていません。AIによる低品質なコンテンツがネットにあふれていくほど、プロの人間が作ったコンテンツの価値が相対的に上がります。AIの時代だからこそ、テレビ局の価値は高まるはずではないでしょうか。

奥:ほぼ同意です。NHKは「情報空間の参照点を提供する」と掲げています。人がきちんと取材したコンテンツがネット上にあったほうがいい。本来、ジャーナリスティックなものこそがネット上にあるべきです。

 しかし、ジャーナリズムはお金になりにくい上にお金がかかります。それを支えてきた旧来のマスメディアが発信力を失っていくと、社会は手に負えないほどのダメージを受けるのではないでしょうか。だからといって、公的な補助金で賄うのは違う。ビジネスとして広告費が回るような設計や、そのためのハードルをなくす仕組みが必要で、それが一番の課題です。

 偽物ではない、“本物”の情報にはお金がかかります。手間暇がかかります。しかし、そういう認識があまり広がっていません。広告は、間接的にそれをサポートすることにもつながるのです。

有園:このままだと民主主義が崩壊してしまう。制度設計が重要というお話でしたので、政治に訴え続けることも必要ですね。本日はありがとうございました。

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この記事の著者

有園 雄一(アリゾノ ユウイチ)

Regional Vice President, Microsoft Advertising Japan

早稲田大学政治経済学部卒。1995年、学部生時代に執筆した「貨幣の複数性」(卒業論文)が「現代思想」(青土社 1995年9月 貨幣とナショナリズム<特集>)で出版される。2004年、日本初のマス連動施策を考案。オーバーチュア株式会...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

加納 由希絵(カノウ ユキエ)

フリーランスのライター、校正者。

地方紙の経済記者、ビジネス系ニュースサイトの記者・編集者を経て独立。主な領域はビジネス系。特に関心があるのは地域ビジネス、まちづくりなど。著書に『奇跡は段ボールの中に ~岐阜・柳ケ瀬で生まれたゆるキャラ「やなな」の物語~』(中部経済新聞社×ZENSHIN)がある。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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2025/03/19 08:00 https://markezine.jp/article/detail/47944

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