日常的な経済活動にまつわる、消費者の感情
東洋大学の尾崎由佳教授による「日常的な経済行動が感情に与える影響―経験サンプリング法を用いた検証―」は、「経験サンプリング法」という新しい調査手法を用いて、日常的な消費行動と貯蓄行動が消費者の感情にどのような影響を与えているかを検討した論文です。
経験サンプリング法は、単発の調査・実験と異なり、スマートフォンなどのデバイスを用いて1日に複数回データを取得する調査手法です。調査対象者から数時間おきに回答を得ることで心理的な変化を時系列で把握することができ、マーケティングの効果検証にも有用です。本論文では経験サンプリング法の手続きやデータ分析方法などが詳細に紹介されています。
昭和女子大学の藤島喜嗣教授による「結末情報の付加が幸福度判断に及ぼす影響―異なる要因配置によるDiener,Wirtz,&Oishi(2001)の追試―」は、「ピーク・エンドの法則(幸福感の評価は、感情の高まりが最大となるピーク時と終了時の感情の平均で決まる;Diener et al.,2001)」について詳細な検討を行った論文です。
たとえば、あるイベントの満足感の評価は、イベント中に最も感情が高まった瞬間と終了時の感情の平均で決まるとされます。この現象がどのようにして生じるかについて、本論文では4つの実験を行って丁寧な検討がなされています。合わせて、本論文では実験結果の信頼性について、すなわち、繰り返し実験を行って同じ結果が再現されるかという問題についても丁寧に論考されています。
どのような時に人は環境問題解決に協力的になれるのか
奈良女子大学の安藤香織教授らによる共著論文「社会的ジレンマにおけるオンラインでのコミュニケーションの効果―オンラインごみ処理ジレンマゲームの開発―」は、環境問題解決のための人々の協力行動をいかに促すかという課題について、ゲーミング・シュミレーションを用いて検討しています。ゲーミング・シュミレーションとは、仮想社会での意思決定を通じて人の行動を学習・研究する方法です。

本論文では、実験の参加者は「工場の社長」となり、廃棄物の処分においてコストを支払って資源ごみとするか、無料だが環境負荷の高い方法で処分するかを選択していきます。どのような時に環境配慮行動が促されるのかを詳細に検討した論文です。
本特集号が読者の皆様にとって、新しいマーケティング・アイデアを創出するための一助となりましたらば、望外の喜びです。