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デジタル領域でブランドリフトが実現!製薬企業アラガン・エステティックスが取り組んだオムニチャネル戦略

 メディアをまたいだ広告出稿が当たり前になっているが、ただ複数のメディアで出稿するだけでは、効果的な配信はできない。米国に本社を置く製薬企業アッヴィの美容医療部門であるアラガン・エステティックスでは、The Trade Deskを通して様々なメディアで統合的に広告配信・効果測定をするオムニチャネルマーケティングを実施。その結果、CVRやBLS(ブランドリフトサーベイ)の向上、より精緻なオーディエンス分析が実現した。The Trade Deskの支援で得られるデータの連携や横断的な分析のメリットについて、アラガン・エステティックスの西澤氏、細田氏、The Trade Desk の井川氏、森川氏に話をうかがった。

広告のデジタルシフトとメリット

──今回はアラガン・エステティックスがThe Trade Deskと実施したオムニチャネルマーケティングについてうかがいます。まずはアラガン・エステティックスの事業内容についてお聞かせください。

西澤(アッヴィ):アラガン・エステティックスは、美容医療を牽引する製品およびブランドを開発・製造し、販売しています。具体的には、注入治療をはじめ、様々な医薬品・医療機器を提供している形です。

──アラガン・エステティックスではデジタルシフトを進めてこられたと伺っていますが、昨今の流れをどのように見てますか。

西澤(アッヴィ):AIによるオーディエンス拡張や広告配信が進み、今はターゲティングやワーディングやクリエイティブもAIを活用することで、簡単に作られています。

 またコミュニケーションチャネルや広告メニューの多様化が大きく進みました。しかし、企業の予算には限りがあるため、データに基づいた精緻なターゲティングももちろんですが、どの広告を活用するのか、どのようなコンビネーションで広告を出すのかが重要です。その中でプラットフォーマーと直でつながることで一次情報を得ることができ、媒体の理解も深まっていると感じます。

疾患啓発で認知を広げ、態度変容を促す

──アラガン・エステティックスでは、どのような情報発信戦略を立てていますか。

西澤(アッヴィ):美容医療に対する関心の高まりにより多くの情報が氾濫しており、しばしば誤ったメッセージも散見されることから、サイエンスに基づいた適切な情報を提供することが必要であると考えています。そこで弊社では、肌の老化のメカニズムや、その対処法の一つとして美容医療を啓発する活動を行っています。

 具体的には、オウンドメディアの「アラガン・エステティックス・ビューティー」で正しい美容情報を発信し、アッパーファネルの態度変容を目指しています。他にもペイドメディアやLINE、SNSなどで美容医療の情報発信を行っています。

アッヴィ合同会社 アラガン・エステティックス 西澤氏 同社にてデジタル部門を統括。またグローバルのデジタルチームでのリードも兼任し、他国でデジタル領域の教育なども行っている。
アッヴィ合同会社 アラガン・エステティックス デジタル部 部長 西澤 孝士氏
同社にてデジタル部門を統括。またグローバルのデジタルチームでのリードも兼任し、他国でデジタル領域の教育なども行っている。

西澤(アッヴィ):加えて、The Trade Deskさんを通して、DOOHやTVer広告といった新しい取り組みも実施しました。ただ買うだけじゃなくデータを使用してターゲティングをし、媒体をまたいで自然な接触を試みており、面ではなく線でコミュニケーションするような買い方をしています。

──どのように広告評価をしていますか。

西澤(アッヴィ):BLSをはじめ、広告接触前後でどのような態度変容が起きたかを見ています

森川(The Trade Desk Japan、以下TTD):BLSに加えて弊社のタグをWebサイトに設置し、動画広告を視聴した後に実際にサイトに来訪したか計測する「ビュースルーCV計測」や、サイト来訪したユーザーの属性や興味関心を理解するためのオーディエンス分析も実施しました。

様々なメディアを統合した「オムニチャネルマーケティング」の効果と優位性

──どのようなきっかけでオムニチャネルマーケティングを始めたのでしょうか。

西澤(アッヴィ):元々弊社の米国のデジタルチームもThe Trade Deskのサービスを使っていました。MetaやGoogleの広告とあわせてCTVや音声広告を実施したところ、CVが倍くらいまで跳ね上がったと聞きました。日本でのコミュニケーションを開始した後、「それだけ大きな効果があるのなら、日本でもオムニチャネルマーケティングをやってみよう」と始めてみることになりました。

─The Trade Desk では、オムニチャネルマーケティングをどのように定義していますか。

井川(TTD):弊社では、「複数の広告チャネルやデバイスを統合した広告配信で、一貫した広告体験をユーザーに提供するだけでなく、シングルプラットフォームで横断した効果計測ができること」と定義しています。

 たとえばユーザーは、多岐に渡るメディアに接触をしていますよね。TTDは様々なチャネルのメディアと、パートナーシップを組んで弊社のプラットフォームに接続しています。それにより、メディアを横断したユーザー単位のフリークエンシー管理ができ、マーケターが気になる「ユーザーがどういったメディア達に接触して、最終的にサイト訪問や購入に至ったのか」とユーザージャーニーを明らかにできるのです。

The Trade Desk Japan株式会社 井川氏<br />広告主向き合いの営業を担当。企業の担当者に向けて、広告における課題の洗い出し、活用方法を提案している。
The Trade Desk Japan株式会社 アソシエイト ビジネス デベロップメント ディレクター  井川 麻里子氏
広告主向き合いを担当。企業の担当者に向けて、広告における課題の洗い出し、活用方法を提案している。

──アラガン・エステティックスには、どのような提案をしましたか。

井川(TTD):美容医療が悩みの解決策の一つになると、より身近に感じられるきっかけをつくるべく、ユーザーとアラガン様との信頼醸成が重要と考えました。興味関心や位置情報を基にした細かなターゲティングに加えて、目的に沿った掲載面を提案した形です。

 またThe Trade Deskは、ユーザー動向や態度変容の可視化ができるようにキャンペーン設計をするのも強みの一つです。メディアを横断して一律の評価基準を持つことの重要性に共感していただいただけでなく、データを蓄積し、継続してマーケティングを改善し続ける点をご評価いただきました。

チャネルごとに異なるファネルのBLSが向上

──具体的なお取り組みについて、教えてください。

森川(TTD):2024年11月に、11月14日はアンチエイジングの日であることを訴求したオムニチャネルキャンペーンを実施しました。プレミアムな在庫でインパクトのあるTVer、DOOH、 GumGum のリッチメディア広告でキーワードを使用したコンテクスチュアル配信をすることで、美容に関して興味があり、今まさに検索している人に向けて配信を行いました。さらにTVerのターゲティングについてはDOOHの視聴者リターゲティングや、サイト来訪を起点にした独自の自動類似拡張、美容医療に関するサードパーティデータも活用。また、美容関連施設に通っているユーザーなど、様々な切り口でターゲットリーチを広げていきました。

The Trade Desk Japan株式会社 森川氏<br />広告運用を担当。広告代理店や広告主のメディアプランニングから配信までの運用サポートなどを手がけている。
The Trade Desk Japan株式会社 アカウントマネージャー 森川 亜耶子氏
代理店や広告主のメディアプランニングから配信までのコンサルティングサポートなどを手がけている。

細田(アッヴィ):SNSに全振りするマーケティングから、新しいリーチを獲得することが重要です。The Trade Deskさんとであれば様々な消費者のタッチポイントに触れられると感じ、オムニチャネル配信に取り組みました。

 美容医療のクリニックに通われている患者さんは、レーザー治療や医療脱毛を利用している方が多く、我々が情報発信している注入によるしわ治療を受けられている方はごく一部です。したがって、クリニックに通っている方にも認知いただくために位置情報を活用し「美容医療を受けられるクリニックのあるエリアによく行く人」もターゲティングしました。さらに、20代〜50代、特に30代後半以降の方々をコアなターゲットとしました。

データから精緻にユーザー像を浮かび上がらせ、配信

──配信後のオーディエンス分析では、どのようなことがわかりましたか。

井川(TTD):今回のサイト訪問者は、年収が比較的高めな女性で、主に20~30代、美容やスキンケア、ラグジュアリーブランドに関心が高い層から多く反響がありました。他にもデートや、ウェディング、婚活、フィットネスアクティブ層、海外旅行関心層と親和性が高いことが明らかになりました。

細田(アッヴィ):美容医療は「自由診療」のため「保険診療」とは違い、全額自己負担で行われます。美容や健康など自分への投資に積極的な方の関心が高いものなので、今後はオーディエンス分析で浮かび上がったブランド関心層や海外旅行関心層にもリーチを広げていきたいです。

──どのような成果を得られましたか。

森川(TTD):オムニチャネルでの訴求を通じてユニークリーチを最大化しながら、クリニック検索率が48%アップしました。また、各メディアでBLSも実施し、TVerではブランド認知が4%、広告接触者の認知者が33%アップし、アッパーファネルへの施策に効果がありました。

 DOOHは広告認知が15.2%、ブランド認知が4.4%アップしました。特に30代女性の認知が12%、美容クリニックでの利用意向が6.3%向上しており、アッパーファネルとミドルファネルに響いていたことがうかがえます。

 GumGumによるコンテクスチュアル配信では、興味度が3.3%、行動変容で公式Webサイトのアクセスが1.9%向上しました。実際にクリニックで相談をした人も1.2%増え、ミドルファネルやローワーファネルに効果があることがわかりました。

細田(アッヴィ):DOOHなどのOOHメディアはブランドリフトが難しいと思っていたので、計測できたことやブランドリフトが見られたこと自体が、大きな意義を感じたポイントでした。また医療従事者の方からも広告を視聴したとお声をいただき、定性的にも実感がありました。

アッヴィ合同会社 アラガン・エステティックス 細田氏<br />医薬品の営業を経て現職。デジタルマーケティングのリードを担う。現在、「アラガン・エステティックス・ビューティー」という美容情報を発信するオウンドメディア運営やLINE、ペイドメディアでの情報発信などを行っている。
アッヴィ合同会社 アラガン・エステティックス デジタル部 デジタル/マルチチャネル マーケティング マネジャー 細田 紘史氏
医薬品・医療機器の営業、マーケティングを経て現職。デジタルマーケティングのリードを担う。現在、「アラガン・エステティックス・ビューティー」という美容情報を発信するオウンドメディア運営やLINE、ペイドメディアでの情報発信などを行っている。

細田(アッヴィ):今まで様々なプラットフォームを試してきましたが精緻に取得できるデータの豊富さという点では、The Trade Deskさんが一番ではないでしょうか。「こんなデータも見られるんだ!」と驚くほど掘り下げられ、大きな学びになりました。しっかり分析できるプラットフォームのおかげで、そこを起点に仮説を立てることができており、他の施策にも活かせています。

ベストプラクティスを求め、新たなメディアにチャレンジ

──今後の展望をお聞かせください。

西澤(アッヴィ):現在はファーストパーティデータを蓄積している最中なので、どんどん貯めて広告の精度をさらに上げていきたいです。加えて、まだ出稿していない音声メディアやコネクテッドTVにもトライしてみたいです。そうして日本で得たベストプラクティスを、グローバルでも展開していけたらと考えています。

細田(アッヴィ):我々の持っているチャネルやWebサイトもうまくThe Trade Deskとの広告に連動させて、大きなオムニチャネルをつくっていきたいですね。今後も、より精度の高いパターンを見つけ、適切な美容医療の情報発信を行っていきたいと思っています。

 またThe Trade Deskでは広告配信の前後1時間で、広告接触者が指定のキーワードを含んだページに来訪したかどうかを計測するIBI (Inferred Brand Intent)という計測方法もあるため、次回配信で、ユーザーの態度変容を見ていきたいですね。この計測方法により、1時間前には美容医療に関するWebサイトの閲覧行動がなかった人が広告を見た後、1時間以内に関連した領域のWebサイトを見た場合、態度変容したと考えられ、「1CV」とカウント可能と聞いています。

森川(TTD):今回のオーディエンス分析結果で出てきた新しいターゲティングやクリエイティブの検証に加えて、美容院サイネージや音声広告、ソーシャル素材の活用など、他の新しいメディアでの効果も検証しながら、アラガン様にとって1番良い配信設計を一緒に考えていきたいです。

井川(TTD):The Trade Deskは、マーケターの皆様が様々なメディアやターゲティングのTry&Learnを重ね、ナレッジを積み上げていけるプラットフォームです。引き続き効果的なオムニチャネル戦略を実施し、新たな計測の切り口にトライすることで一緒にアラガン様にとってのベストプラクティスを探していきたいです。

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この記事の著者

平田 順子(ヒラタ ジュンコ)

フリーランスのライター・編集者。大学生時代より雑誌連載をスタートし、音楽誌やカルチャー誌などで執筆。2000年に書籍『ナゴムの話』(太田出版刊)を上梓。音楽誌『FLOOR net』編集部勤務ののちWeb制作を学び、2005年よりWebデザイン・マーケティング誌『Web Designing』の編集を行う。2008年よ...

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MarkeZine(マーケジン)
2025/06/12 10:00 https://markezine.jp/article/detail/48269