SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

おすすめのイベント

おすすめのセミナー

マーケティングは“経営ごと” に。業界キーパーソンへの独自取材、注目テーマやトレンドを解説する特集など、オリジナルの最新マーケティング情報を毎月お届け。

『MarkeZine』(雑誌)

第112号(2025年4月号)
特集『いま選ばれる「ブランド」の作り方』

MarkeZineプレミアム for チーム/チーム プラス 加入の方は、誌面がウェブでも読めます

MarkeZine Day 2025 Spring

売上前年比116%に!ロッテ「パイの実」はリニューアルをどう進めたのか?問い直した“本質的な価値”

 ロングセラーブランドが停滞期を迎えたとき、その立て直しには苦労を要する。ロッテを代表するロングセラー商品「パイの実」も、2020年以降売上が停滞。リニューアルに踏み切り試行錯誤を重ねた結果、売上は前年比116%を達成した。MarkeZine Day 2025 Springでは、そのリニューアルプロジェクトをけん引した久保田祐揮氏が、実際の取り組みを紹介するとともにヒントとなる知見を共有した。

ロングセラーブランド「パイの実」が陥った停滞期

 「パイの実」は、1979年に発売されたロングセラーのブランドだ。パイ菓子が百貨店でしか買えなかった時代、「ちょっといいお菓子を手軽に食べたい」というニーズに応える形で誕生した。

株式会社ロッテ マーケティング本部 第一ブランド戦略部 焼き菓子企画課 久保田祐揮氏
株式会社ロッテ マーケティング本部 第一ブランド戦略部 焼き菓子企画課 久保田祐揮氏
「パイの実」「カスタードケーキ」のブランドマネージャーとして、ブランド戦略構築や新商品開発、プロモーション企画を担っている

 開発時からのこだわりは「64層のパイ生地」。サクサクの食感を追求して試行錯誤した末に、ようやくたどり着いた層数だという。

パイの実の品質特徴
※クリックすると拡大します

 そんなパイの実ブランドが抱えていた課題は、2020年頃から売上がじわじわと下降していたことだ。話題化のための施策や新商品の導入を行ったが、効果は限定的で伸び悩んでいた。

 これまでも「課題発見のための定量・定性調査は、継続的にしてきた」と久保田氏。しかし、消費者インタビューで出てくるのは「嫌いじゃないけどなんとなく買わない」といった曖昧な回答で、売上の停滞を打破する解決策には結びつかなかった。

売れない理由より「買われる理由」からインサイトを探す

 そこでパイの実が行ったリニューアル戦略は、簡単に言えば「Who、What、Howの見直し」だ。久保田氏いわく、ロングセラーブランドこそ基礎を徹底することが重要なのだという。まずは「パイの実の価値」を徹底的に洗い出す作業を行った。「香ばしい」「かわいいパッケージ」「昔からある」といったキーワードを久保田氏自ら書き出したという。

 その上で、Whoを見つめ直すためには、顧客の行動や価値観を基に9つのセグメントに顧客を分類する「9セグマップ」を活用した。これまで積極離反顧客への調査を重ねてきたが、改善のヒントは見つからなかった。そこで今回は、購入頻度と金額が高い「積極ロイヤル顧客」、つまりパイの実を買い続けているファンに注目した。

 「パイの実の積極ロイヤル顧客が、パイの実に対して感じる本質的な価値とは何か。パイの実をなぜ買い続けてくれているのかを徹底して聞きました」(久保田氏)

 1対1のデプスインタビューを行う上では、久保田氏は「顧客にダイレクトに価値を聞かない」ことに注意したという。

 「インタビューでは『パイの実はあなたにとってどんな価値がありますか』と聞いてしまいがちだと思います。しかし、この質問で得られるのは、既にCMやパッケージなどで訴求されている教科書的な答えです。そうではなく、間接的でプロジェクティブなアプローチで、対象者自身も自覚していない価値を探ることが必要です」(久保田氏)

 そこで久保田氏がとったアプローチは、たとえば「どんな気持ちのときに、どんなお菓子を食べたくなりますか」「それぞれのブランドに合う画像を持ってきてください」といった他のブランドを含めた質問だ。好き嫌いを直接聞くのではなく、間接的なアプローチをとることで顧客の深層心理、インサイトが掴みやすくなるという。

デプスの注意点
※クリックすると拡大します

会員登録無料すると、続きをお読みいただけます

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
    ※プレミアム記事(有料)は除く
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

次のページ
「パイ菓子」としてパーセプションチェンジを図る

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
関連リンク
MarkeZine Day 2025 Spring連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

岡田 果子(オカダ カコ)

IT系編集者、ライター。趣味・実用書の編集を経てWebメディアへ。その後キャリアインタビューなどのライティング業務を開始。執筆可能ジャンルは、開発手法・組織、プロダクト作り、教育ICT、その他ビジネス。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2025/05/13 08:00 https://markezine.jp/article/detail/48500

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング