大谷翔平選手に匹敵!バイトルのアニメIP起用
さらに多くの企業でも取り入れやすい事例として、ディップが運営する求人情報サイト「バイトル」による、アニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』を起用したプロモーション施策を紹介する。
近年は高校生の3人に1人が大学進学に奨学金を利用している社会の状況もあり、高校生のアルバイト需要が高まっている。初めて家族・学校以外のコミュニティに入っていく機会であり不安も多いことから、バイトルはアルバイトをしたい高校生に対して不安を払拭し後押しできる環境作りを目指している。
しかし、バイトルの既存のテレビCMはタレントを起用し、高校生以外も含む幅広い年齢層をターゲットとしていた。そのため、高校生により深くアプローチするために、社として初めてアニメのIPを使うことにした。
「高校生全員をターゲットとするというより、その中でもアニメ界隈の人たちに深くアプローチしていこうという戦略でした。高校生が通りそうな場所の交通広告を出稿するだけでなく、オリジナルでコラボ動画やグッズの制作、キャラクターも起用したおすすめバイト診断など、ファンに楽しんでいただくことを意識した企画を行いました」(中村氏)
結果的に高校生の応募数が前年比で130%に増加し、コラボ動画の総再生回数は1億回を突破。そして、野球の大谷翔平選手を起用したプロモーションと同等の2万件以上の発話数をSNSで観測。中村氏は、ファンによって発話が促進されたことで、オーガニックでの拡散に貢献したと分析している。
「なぜ、『界隈』がいいのかを振り返ると、熱狂を生むことができるからでしょう。企業として『界隈』へアプローチすることの最大のメリットは、『界隈』に対してある種のムーブメントを作って、結果的に自分ごと化を促せるところではないかと考えています」(中村氏)
「運営に物申す」ファンと、真摯に向き合う
「界隈」へのアプローチは、SNS上で大きな反響を得られる可能性がある一方、炎上リスクも秘めている。そのためにバイトルがこだわった点は、「界隈内の作法に則ったコミュニケーション」だと中村氏は語る。
「たとえば『界隈』があったとして、そこに『ちょっとすいません、お邪魔させていただきます』という感覚です。このため、『界隈』の人に直接話を聞いたり、IPの制作サイド・社内メンバーと議論したりしながら、お作法に則るように意識していました」(中村氏)
アニメやゲーム、アイドルとのコラボ施策に取り組んできたウィゴーも、ファン目線であることの大切さを実感しているという。
「熱狂的なファンはいるものの、あまりメジャーではないゲームタイトルとコラボした時に、すぐ欠品となり『運営になめられている』と反感を抱かせてしまったことがあります。その後は、真摯な対応を継続することで認めてはもらえました」(園田氏)
「Z世代では、『運営に物申す』ことが当たり前になっています。価値観が多様化する中で企業に求められるのは、全員に好かれるのは無理だとまず諦めること、そしてターゲットの『界隈』を決めたらリスペクトを持ってコミュニケーションすることではないでしょうか」(椎木氏)
