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【特集】テクノロジーで変化する、社会、広告、マーケティング

CESは世界に挑戦するためのプラットフォーム アワード審査員が強調する、日本企業の魅力・ポテンシャル

日本企業が注目すべきテクノロジー領域

 ここで、日本企業にこそ関心を持ってもらいたいテクノロジー領域を2つ紹介する。1つ目は「AIホーム」だ。

 冒頭で述べたとおり、これまでCESが「IoT」や「クルマのモビリティ化」といったグローバルトレンドを先導してきたことを踏まえると、CES 2025以降は「AIホーム(≒スマートホーム)」や「ゼロ・レイバー・ホーム(家事のない家)」といった次世代のコンセプトが注目を集めることになるはずだ。このトレンドは、日本市場に様々な形で流れ込むと予測される。

AIホームを披露したLGの基調講演
AIホームを披露したLGの基調講演

 「AIホーム」が普及することで、家電製品の機能やスペックが語られるだけではなく、セキュリティやデータプライバシーの重要性が議論される可能性が高い。家庭内データの活用が進めば、情報漏洩リスクやサイバー攻撃への備えが不可欠となる。Matterのような国際規格に準じる動きが主流となるのか、それとも独自のセキュリティ基準やデータ保護サービスが新たな市場を形成するのか。家電の進化とともに、こうした新領域の展開にも注目が集まるだろう。

 さらに、この流れはかつての競争力を取り戻せていない日本の家電業界にとって復活の兆しをもたらす可能性もある。かつて世界をリードした日本の家電メーカーが、AIやスマートホームといった新たな分野で再び競争力を取り戻すチャンスかもしれない。価格競争だけではなく、セキュリティ関連での安心・安全を付加し、消費者の信頼を取り戻すことができれば、日本の家電業界が再び存在感を発揮する可能性は十分にあるのではないか。

ヘルスケア×テクノロジー領域でも成長が顕著な「エイジテック」

 もう1つ、私が積極的に日本市場に浸透してほしいと考えるのは、ヘルステック領域の「エイジテック」と「味覚テック」だ。多種多様な分野のテクノロジーが披露されるCESだが、今年は高齢者向けのプロダクト、「エイジテック」が特に強い存在感を示していた。

 エイジテック関連ソリューションを集約して展示していたAARP(旧・全米退職者協会)の予測によれば、エイジテック市場は2030年までに約1,200億ドル(約19兆円)の規模に達する見通しとのこと。そして、この分野のキーワードとして注目されるのが「AginginPlace(住みなれた住居や地域で暮らし続ける)」である。この言葉には、米国消費者の52%はエイジテック関連の製品を所有しており、半数以上がさらなる追加購入を検討しているという現状が反映されている。高齢者が安心して自宅で年齢を重ねていける環境作りが求められているのだ。

 エイジテックや高齢者向けのAIホームは、日本が直面する社会課題を解決する鍵となるだけでなく、グローバル市場での競争力を発揮できる成長産業にもなる。事実、日本では既に見守り技術や高齢者向けのスマートデバイスが普及しており、これらは高齢者が安心して自宅で暮らし続けるための実用的なソリューションとして高い評価を受けている。

 「Aging in Place」というキーワードは、こうした日本の技術と思想が国際市場でも受け入れられる可能性を示唆しているのではないだろうか。本来であれば日本のマーケターがこのようなキーワードをもとに、ソリューションをまとめあげて国外発信できるとよいのだが、ここではCESの言葉を借りることとしよう。

 エイジテックと同様に有望な分野として「味覚テック」が挙げられる。健康志向の強い日本市場では、これらの技術が一定の需要を獲得しており、国内外でのさらなる展開が期待される分野である。

 実際、CES 2025では、日本企業が複数出展していた。たとえば、キリンが明治大学の宮下芳明教授と共同開発した減塩スプーン「エレキソルト」は、CES 2025のイノベーションアワードを2つ受賞し、メディアからも大いに注目を集めていた。他にも、味の素とロボット開発企業ユカイ工学が共同開発した、電気刺激により食品の味を増強する「電気味覚プロダクト」が印象的だった。

キリンの出展には多数のメディアが集まっていた
キリンの出展には多数のメディアが集まっていた

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この記事の著者

西村 真里子(ニシムラ マリコ)

元:(株)バスキュール プロデューサー 現:(株)HEART CATCH代表
IBMでエンジニアとしてWebソリューションスキルを蓄え(特許取得)、AdobeでFlashなどのWeb製品マーケティングマネージャーを経て現職に至る。プロデュースプロジェクトは次世代マス・リアルタイム エンターテインメントの可能性を探るべ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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2025/03/14 09:30 https://markezine.jp/article/detail/48553

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