ECにも“楽しさ”が求められるように
ZETAは、ECサイト向けのサイト内検索、ハッシュタグ、レビュー・Q&Aなどの機能を効果的に実装するソリューションを提供している。顧客体験(CX)の向上を支援するサービスを展開し、アパレルや小売をはじめ国内大手企業の導入実績が豊富にある。
同社の山崎氏はセッションで、デジタル技術の進化にともなう現代の消費行動についてまず紹介した。スマートフォンの普及によってどこにいてもデジタル端末を使えるようになったことに加え、SNSの台頭でユーザーが積極的に情報発信するようになった。「物心が付いたころからネットがあり、子どもの頃からスマホを使っている世代が主要購買層になりつつあります」と山崎氏は語る。

それにともないECサイトの位置付けも変化し、ECにも「楽しさ」を求める人が増えてきているのだ。
「昔のECは、購入機能に特化した簡素なものが多く商品価格の安さが特徴で、“楽しい買い物体験”を提供するのは実店舗の役割でした。しかしSNSの普及にともないECもソーシャルネットワーク化する中、購買の利便性だけでなく『いかに楽しめるか』が重視されてきているのです」(山崎氏)
デジタルマーケティング領域では、購入前と後の両方の顧客行動を表す「ダブルファネル」も注目されている。新規顧客獲得にとどまらず、購入後の情報発信やリピートを重視するようになり、ユーザーの能動的な行動がファネルを構成する大きな要素になっているという。初回購入者が2回目の購入を行うF2転換率も、新たな指標として重視されている。
「いかに納得して買ってもらい、満足してファンになり情報発信をしてもらえるか。この循環にユーザーを巻き込みECへ愛着を生み出すことが重要です」と山崎氏は話した。
訪れたユーザーをワクワクさせる要素とは?
では、ECサイトに何があれば、ユーザーに楽しんでもらえるのか。山崎氏によると、ECサイトは多彩な機能を備えた「コマースメディア」へと進化しており、「楽しむ」「探す」「買う」「配送」そして「情報発信」の機能を持つという。

具体的な要素として、口コミやレビューは特に重要な役割を果たす。そして近年注目されているのが、商品を組み合わせてスタイリングやコーディネートを紹介するキュレーション機能だ。山崎氏は「今後は店舗スタッフだけでなく、ユーザーも『こういう組み合わせがおすすめ』と投稿するようになると思います」と述べ、レビューに次ぐユーザー発信コンテンツになっていくのではないかとの見解を示した。
加えて、ハッシュタグを使ったコンテンツも注目を集めている。アパレルなどのECサイトでは、商品ページをはじめとしてサイト内に多くのハッシュタグが表示されている。「春物」「オフィスカジュアル」などのわかりやすい言葉だけでなく、「自宅で洗える」「2way」などユーザー目線のハッシュタグも増えているという。
ECサイトにハッシュタグとレビューの機能が両方あれば、レビューを解析してキーワードを抜き出し、新たなハッシュタグを生成することも可能だ。このようなハッシュタグを活用することで、ユーザーはワクワクしながら商品ページを渡り歩くことができるだろう。
そして、ファンを増やすために重要なのがロイヤルティプログラムだ。商品の購入やレビューの投稿などに基づいてユーザーのランクを設定し、ランクに応じた特典や優遇サービスを提供する。ユーザーはポイント還元や値引き率向上といったサービスを受けることができ、さらに「自分はブランドのコアなファンの一人」と実感できる。これによりブランドへの愛着が深まり、何度もECサイトを訪れるきっかけになるだろう。

一方、ECだけでなく実店舗も重要な要素だと考えられる。実際の商品に触れられることに加えて、店舗スタッフと会話ができる。山崎氏は「EC化率が高くなっても店舗は必要だと考えますが、ショーケースとしての役割が強くなってきています。来店後、いかに自社ECで買ってもらうかが今後さらに重要になるでしょう」と話す。
