Physical→デジタル→Physicalの世界観が常態化していくと?
Physical AIというと、工場・倉庫の自動化や自動運転といった産業向けのユースケースが想起されますが、より身近な「ホームAI」を例にとってみましょう。今年はサムスンやLGのホームAIが注目されていました。
たとえばサムスンのホームAIでは「Ambient Sensing」というコンセプトが示されていました。簡単に説明すると、Ambient Sensingとは家の環境情報を丸ごとセンシングして、“コンテキスト”を読み解き、あらゆるデバイスから人々の生活にリーチしていく、というような世界観です。
コンテキストを読み解くので、ユーザーがAIに指令・命令するのではなく、「○○がこうなっていると推測されるから、こうなるだろう・こうするとよいだろう」という具合にAIがエージェントとして家族に寄り添います。
たとえば、運動中であることを察知して最適な温度や湿度にエアコンやファンを制御したり、赤ちゃんの泣き声や動きからお腹を空かせているよと教えてくれ、ミルクに必要なお湯を自動で用意してくれたり。家電とデバイスから情報が吸い上げられて構築される家庭内のデジタルツインが、実際の生活と滑らかにつながっていくのです。
このように、Physical AIの時代になると「Physical→デジタル→Physical」の世界観が常態化してくると考えます。となると、企業が人や社会に価値を提供するとき、その価値はPhysicalに閉じたものではなくなるでしょう。もちろん、デジタル世界で完結するわけでもありません。Physicalとデジタルの結合をいかに有効活用するかを考える必要があります。
ここで難しいのは、その価値(体験)にブランドごとの差異を出すことです。これまで、ブランディングは商材やサービスの個性・魅力を起点に考えられてきましたが、AIエージェントが普遍化した世界での価値提供は、基本的に「あなたに合わせて何でもお答えします」という方向性になると考えられます。要は、どのブランドも同じようなものになってしまうわけです。
ブランドの個性をどうAIエージェントの応対や物理的な対応へと落とし込むか。マーケティングでは、このあたりがポイントになってくるでしょう。
