コンテンツ選択の鍵は「集中度」と「気分」
CTVにおけるコンテンツ選択の背景には、視聴者の「集中度」と「気分」が大きく関わっています。家事など生活行動が主なのか、コンテンツ視聴が主なのかその集中度で選ぶものが変わるのです。
今回の調査では、「あまり見ておらず流しておく程度」を最も集中度が低いとし、次に低いものが家事などを主にしており時々視線が画面にいく「何かしながら横目で見る」、視線は画面にあるが意識の集中度が低いのが「ぼーっと何も考えずに見る」、最も集中度が高いのは視線も意識もコンテンツに向いている「しっかり集中して見る」と設定。この集中度を調べたところいくつかの特徴が見えてきました。
リアルタイム放送は「何かしながら横目で見る」が約4割で最も多く、日常生活の一部として、ながら見されています。見逃し配信は「しっかり集中して見る」が約4 割を占め、高い集中度で視聴されています。見逃してしまった番組をわざわざ選ぶ様子がうかがえます。無料動画は「ぼーっと何も考えずに見る」が約4割と、視線は向けられていますがやや集中度は低くなりました(図表3)。

また視聴時の気分についても聞いてみたところ、いずれも「リラックスしたい」が最も多く、特にリアルタイム放送ではその傾向が顕著です。見逃し配信は「ワクワク」「感動」と気分をより高め、無料動画は「気分転換」を求める傾向が、他のコンテンツよりも高くなるという結果となりました。
一方、スマホではまた状況が異なるようです。見逃し配信は「集中して見る」が多く、タテ動画は「ぼーっと何も考えずに見る」が約5 割と、受動的な視聴態度が顕著です(図表4)。

また気分に関しては、TVスクリーンでは「気分転換」のポジションだった無料動画が、スマホでは「リラックスしたい」が最も多くなりました。スマホで見るタテ動画はTVのリアルタイム放送に近い、リラックスを求めるコンテンツとなっていることがわかります。スマホで見る見逃し配信は「気分転換」「集中」「ときめき」といった気分を喚起し、リアルタイム配信は「感動」「やる気を出したい」「さみしさを紛らわしたい」といった多様な気分に応えるコンテンツとして機能しています。
スクリーンによって変化するコンテンツの価値、今後の広告戦略への示唆
今回の調査から明らかになったのは、「同じコンテンツでも、視聴されるスクリーンによって、その価値が大きく変化する」ということです。たとえば、TV スクリーンでは、リアルタイム放送が「リラックス」という価値を提供していましたが、スマホでは、タテ動画がその役割を担うようになっています。これは、TVでたまたま流れているリアルタイム放送をぼーっと受け身で見ていた感覚が、スマホの前ではタテ動画にも表れてきている可能性を示唆しています。
また、スマホで主に視聴されていた無料動画や見逃し配信が、CTVの普及によってTVスクリーンでも視聴されるようになったことで、これらのコンテンツの価値も再定義されつつあります。TVスクリーンで見る見逃し配信は「ワクワク」や「感動」といった感情を喚起する力が強化され、無料動画は「有意義な時間」という時間価値が高まっていることがわかりました(図表5)。
