デジタルとリアルの比重が逆転
MarkeZine編集部(以下、MZ):はじめに、お二人について教えてください。
谷本:私は、ひろぎんホールディングスにてTOPPANさんと一緒に個人のお客様をメインとしたデジタルマーケティング(以下、デジマ)に取り組んでおり、またグループ会社の広島銀行では、公式アプリ「ひろぎんアプリ」の企画推進も担当しています。現在取り組んでいるデジマはアプリを主な接点チャネルとしてお客様とのリレーション構築を目的に行っていますので、デジマとアプリは両輪だと考えています。どちらが欠けても成り立たないと考えているため、現在は両方の責任者としてアプリの利用促進とお客様とコミュニケーションのための施策推進を並行して行っています。

山本:私は事業会社などでCDPやMAの導入を推進してきました。2019年にTOPPANに入社後は、デジマ基盤、オウンドメディア、アンケートシステムの導入など、多岐に亘り業界や業種を問わずサポートしています。

MZ:ひろぎん様がデジマを強化したり基盤を整えたりしようと考えられた背景や課題感などを伺えますか。
谷本:今までの地銀は各地域に店舗があり、いつでもお客様にご来店いただける接点を持てることが強みでした。しかし現在、山間島しょ部を中心にお客様の高齢化や少子化が進み、全体的に来店客数は減少しているため実店舗の再編も行っています。一方でアプリをはじめデジタルチャネルの利用者は増えてきており、接点チャネルとしての利用者数は逆転してきています。
今後も地方銀行として、店舗を強みとした対面でのコンサルティング業務を強化しつつ、店舗の営業時間以外でも取引ができる利便性をデジタルチャネルでご提供し、リアルとデジタルの融合を進めていく方針です。
そのデジタルチャネルでは単に銀行取引ができるだけではなく、お客様の日常生活の中で接点を持ち、ライフイベントなどに応じて必要な情報をお届けするコミュニケーションチャネルとして、アプリに様々な仕組みや機能を搭載し続けています。
私達がきちんとお客様をご理解したうえで、お客様に自分事として情報を受け取っていただけるような視点を常に持ち取り組んでいます。
最終的に内製化を目指しTOPPANが伴走
MZ:TOPPAN様が2023年に伴走支援を開始するまでの経緯もお聞かせ願えますか。
谷本:アプリでのサービス提供を考え始めたのは2015年頃ですが、当時はまだパソコンでインターネットバンキングを行うのが主流でした。ただ、スマートフォンも普及し始めており「今後はスマホアプリを使ってサービス提供していきたい」と考え、2016年からアプリでのサービス提供をスタートしました。当初は口座開設や周辺ATMを紹介するといったシンプルなものでしたが、口座開設後もお客様とつながることができるアプリを目指し、2019年にリニューアルしました。

当時はアプリでのコミュニケーションまでは考えておらず、まずはアプリの機能を拡充しながら、ユーザーの増加と定期的に利用いただけるアプリにすることに注力しました。ユーザーが一定数増えてきて、「このチャネルを使ってデジタル上のポータルとし、コミュニケーションチャネルにしよう」と考えたのが2021年です。その段階で現在実行しているものの原型となる構想はあり、コミュニケーションを行うためのデジマ環境構築に着手しました。
まずはどのような戦略、環境、体制でやっていくのかを検討し、2022年から2023年の約1年でMAツールとCDPを導入し、デジマ環境を構築しました。2023年7月より運用を開始したのですが、そのタイミングでTOPPANさんにサポートをお願いし、今に至っています。
私たちは最終的には内製運用を目指しています。やりたいことがスピーディーにできますし、自分たちが望むものは、自分たちで検討、企画して作り上げていくべきだと考えているからです。
施策を一緒に検討し、実装する中で少しずつスキルを教わり、今年は施策の検討、企画部分から自分たちでトライしています。私たちで十分な議論を重ねたものをTOPPANさんにご提示して意見をいただき、ブラッシュアップするようになりました。
技術面では、過去の施策をカスタマイズして実装できる部分は自分たちで進め、未熟な部分はサポートをお願いしています。全体としておおよそ当初の計画通りに進んでいますね。