「消齢化」が進む社会 シニアマーケティングに必要なこと
山口:今回の施策では、今後のシニアマーケティングに活用できる発見もありました。たとえば、ひと昔前はシニア世代の広告運用で成果が出やすいのはYahoo!というイメージがありましたが、現在ではGoogleでも獲得できるようになってきており、Yahoo!とGoogleでそこまで成果に差が出なくなっています。このことからも令和シニアのデジタル化がどんどん進んでいることを実感しています。
加えて、シニア層の検索クエリは文章が長い傾向があります。単語の区切りのない、会話のような検索文が特徴的です。調査結果としても表れているのですが、検索時に音声入力を活用しているシニア層が多いのです(参照:若年層よりシニア層が活用するスマホの「音声検索機能」| ビデオリサーチ)。クエリの分析はこれからになりますが、疑問系や希望系など単語以外のニュアンス部分で成果に応じて除外したり、キャンペーンを出し分けたりできそうだと攻略の可能性を感じています。
MarkeZine:今後シニアマーケティングを行ううえで、どのようなことを意識していけばよいのか、読者へアドバイスをお願いします。
山口:まずはシニア世代へのイメージやバイアスを見直すことです。マーケター側のバイアスが事業展開の拡大やブレークスルーを妨げていることは業種を問わず見られる現象だと感じます。
生活者の意識・好みや価値観などについて、年齢による違いが小さくなる「消齢化(※)」が進んでいます。バイアスを一度疑ってみる、あるいは外したうえで、シニア世代のリアルな声に触れることが大切だと思います。私たちも常に学習を続けていますが、この視点を持つことで、よりシニア世代の心に届くマーケティングが可能になると思います。
※「消齢化」「消齢化社会」は株式会社博報堂の登録商標です

「ミライスピーカー」を世界中で愛される製品に
MarkeZine:今回の取り組みを振り返りながら、今後どのような挑戦をしたいか展望をお聞かせください。
山地:「ミライスピーカー」は聞こえづらさを起点に開発されましたが、様々なシーンで活躍する製品です。製品を通じて、一人でも多くの「聞こえる」をサポートしていきたいと思っています。今後、活用シーンが多様化していく可能性もありますので、シニア世代から若い世代まで、幅広い年代の方々に「ミライスピーカー」をお使いいただけるよう、デジタル広告に限らず様々な媒体を活用していきたいと思います。
また、昨年より米国展開をスタートしており、英語圏のお客様からも「言葉が聞き取りやすくなった」という評価をいただいています。聴覚の悩みは国境を越えた普遍的な課題です。グローバル展開を強化し、世界中で愛される製品に育てていきたいと思います。
MarkeZine:令和シニア研究所では、今後サウンドファンをどのように支援していきたいですか?
山口: まだサウンドファンさんにはお話ししていなかった部分ですが、個人的には女性に向けた訴求開発に伸びしろを感じています。聞こえづらさという観点では、実は女性の方が影響を受けやすいということが調査でも明らかになっているのですが(参照:男女別・世代別の平均聴力を解明 |東京医療センター、慶應義塾大学医学部)、現在の製品購入者は男性が中心となっています。
これまでもクリエイティブの工夫で成果改善を実現してきましたが、あくまでもシーン描写の工夫であり、女性向けというわけではありませんでした。このように、マーケティングを支援させていただく中で感じる仮説や可能性はどんどん共有して、ミライスピーカーを多くの必要としている方にお届けできるよう尽力していきたいです。
また、これはサウンドファンさんに限った話ではないですが、令和シニア研究所として、動画を活用したシニアマーケティング手法の開発を進めていきたいと考えています。総務省の調査によると、世代別のYouTube利用率は、50代85.6%、60代66.3%とかなり高いこともあり、動画マーケティングは影響力の大きいチャネルの一つと捉えています。たとえば、テレビの通販番組のような購買導線をYouTubeでも再現するなど、令和シニアの特性を活かしたマーケティングの開発も構想しています。
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