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素早さと創造性が勝利に導く。ロレアル、マスターカードの元戦略コンサルが語るキャンペーン作りの最前線

 すべてをひっくり返す完璧なインサイトを捉えることよりも大事なことは━━? 顧客起点のマーケティングという考え方が広まって久しい2025年、消費者はソーシャルメディアをはじめとした多様な媒体とつながり続けている。世界の有力ブランドではインサイト理解の方法も、キャンペーンにおける基本的な手法でさえ、変わり始めているようだ。大手広告会社でいち早くソーシャルメディア戦略の研究に携わり、名だたる企業の支援を行ってきたシャロン・パネロ氏に最近の状況や事例について取材。現在はカスタマーエンゲージメントプラットフォームを展開するBrazeでテクノロジーを駆使した新たな研究と戦略コンサルティングに携わる彼女が、今後のキャンペーン作りに求められる前提条件と、クリエイティビティを開放する3つの鍵を語った。

インタラクティブな体験の創造を最前線でリードし続ける

━━はじめに、パネロさんが現在取り組んでいらっしゃる業務の内容や簡単なご経歴を教えてください。

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Braze, Inc. 戦略コンサルタント シニアディレクター シャロン・パネロ氏

 私は現在、Brazeが米国ニューヨークに構える研究室「427° Innovation Lab」のヘッドを務めています。アナログとデジタルをつなげることで、オムニチャネルにどのような体験をもたらせるのか、日々実験を行っています。

 たとえば最近ですと、K-POPのアーティストがステージで使うマイクをファンの盛り上がりに合わせて光るようにする、といったインタラクティブな体験を開発し、ファンとのエンゲージメントを高める取り組みを進めています

 Brazeに入社する前は、ニューヨークに拠点を置く広告会社マッキャンエリクソンでソーシャルメディアを研究しており、マスターカードやロレアルの仕事も経験しました。当時はまだソーシャルメディアで100万人のフォロワーがいても利益、費用対効果にはつながらないと言われていた時代です。CMOたちにはKPIがどれだけ改善するかと言われても誰もが答えにくい状況でした。現在では、それこそ我々が展開するカスタマーエンゲージメントプラットフォーム「Braze」をはじめとした新しい技術によって目に見える成果が出せるようになりました。研究者の一人としてこの進歩を嬉しく思っています。

スピード感、そして創造性が求められる時代に

━━パネロさんはソーシャルメディア活用の最前線にいる中で顧客インサイトを起点にしたマーケティング戦略を重要視されてきた印象です。パネロさんが印象的に思うインサイトの変化、あるいは先進企業の顧客インサイトへの向き合い方について感じている変化を教えてください。

 従来のマーケティング活動では、分析に時間がかかろうともそれ一つですべてをひっくり返す完璧なインサイトを探し、カスタマージャーニーの一点を目掛けて完璧なクリエイティブを作る、といった方法が選ばれてきたと思います。しかし現在では、マイクロモーメントからインサイトを捉えていかに早く価値を届けられるのかというスピード感が優先され、これが勝負の分かれ目だと考えられるようになっています。

 消費者は以前よりも、ブランドがよりパーソナルなメッセージを届け、それを通じて親密な関係を構築することに期待するようになりました。仮に何百万人という規模であっても、それぞれにパーソナルなメッセージを届けることが企業に求められる時代が来ているんです。

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━━パーソナルな体験が求められるとは言え、多くの企業ではまだまだ提供できていないと思います。パネロさんは現状をどのように見ていますか?

 そもそも10年前と比べるとマーケティングにおいて扱うデータ、タッチポイント、メッセージは増えており、カスタマーエンゲージメントは複雑化しています。プラットフォームや各所の連携など、学ぶべきことが増え、AIという技術まで出てきて……言うなればマーケティングという宇宙にビッグバンが起きたわけです。

 しかし、チームは急に大きくできるわけではなく、予算も限られています。多くのブランドは限られたリソースでいかに効果を出すかを考えていることでしょう。

 大量のデータと高度化したAI、以前よりも洗練されたアルゴリズムがその鍵になる、と思いきや、皮肉にも多くのブランドは結果的に同じような発信、サービスを行っており、自分たちの魅力を伝えきれていません魅力を引き出すためのクリエイティビティが大きく成長できていないからです。現在のマーケティングでは、クリエイティビティこそが大きな優位性を生み出します。そして、扱えるテクノロジーが良ければ良いほど、クリエイティビティも成長する、さらに良くなると私は考えています。

 私は広告会社の時代から現在に至るまで、ブランド企業がカンヌライオンズをはじめとした世界有数のクリエイティブアワードで受賞するようにサポートし、実現させてきました。優秀と評価された施策の数々がデータやデジタルの仕組みを活用しており、そのこともテクノロジーがクリエイティビティを支えている証だと考えています。

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W杯直後にメッシの発信よりも好反響!事例に学ぶ創造性

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この記事の著者

安原 直登(編集部)(ヤスハラ ナオト)

大学卒業後、編集プロダクションに入社。サブカルチャー、趣味系を中心に、デザイン、トレーニング、ビジネスなどの広いジャンルで、実用書の企画と編集を経験。2019年、翔泳社に入社し、MarkeZine編集部に所属。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/06/09 08:00 https://markezine.jp/article/detail/49001

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