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素早さと創造性が勝利に導く。ロレアル、マスターカードの元戦略コンサルが語るキャンペーン作りの最前線

W杯直後にメッシの発信よりも好反響!事例に学ぶ創造性

━━わかりやすい事例があれば教えていただけますか?

 2023年にカンヌライオンズのモバイル部門でグランプリを受賞した、アルゼンチンのフードデリバリーサービス企業「Pedidos Ya」のキャンペーンはブランドマーケティングとCRMを融合した、最高の事例だと思いました。

画像を説明するテキストなくても可
PedidosYa - World Cup Delivery (case study) Mobile Grand Prix at the Cannes Lions 2023より抜粋

Pedidos Yaのキャンペーン「World Cup Delivery」とは?

 2022年、FIFAワールドカップにてアルゼンチン代表が優勝した16時間後に、Pedidos Yaは自社フードデリバリーアプリ内で「嘘の配送プッシュ通知」を送付。アプリの誤作動を疑い、不安視するユーザーが続出したが、同社が「優勝トロフィー」の位置をリアルタイム追跡し伝えているとわかると反応は一変。優勝に熱狂し、チームの凱旋を心待ちにする国民のモーメントを捉え、「いつ届くのか知りたい」というインサイトに自社の追跡技術で応えた同社に称賛の嵐が巻き起こった。

 たとえ瞬間的でも、あのメッシ選手よりPedidos Yaが教えてくれることのほうが響いたのは驚きですよね。このような反応が生まれたのは、ブランドが顧客のマイクロモーメントを捉えてリーチすることの効果の高さをとても良く表しているのではないでしょうか。

創造性あるマーケティングを行うための3つの鍵

━━そのようにクリエイティビティを持ってエンゲージメントの高い顧客体験を提供するためにはどのような点を意識すべきなのでしょうか?

 クリエイティビティを開放し、ブランド成長を促す鍵は、3つあると考えています。

 1つ目は、ブランドとパフォーマンスの融点(melting-point)を見つけ出すことです。従来では短期的に売上達成を目指すこと、中長期的にブランド成長を目指すことは分断され、相反する関係にあるようにも考えられてきました。ROIにこだわる企業では、しばしば短期的な目標を重視し、長期的なブランドの成長を軽視することもあります。しかし、それら2つは本来、互いを補完し合うものです。将来のマーケティングにおいては両方の融点を見つけ出し、取り入れなくてはなりません。

 2つ目は、デジタルボディーランゲージを学んで表現の方法を理解すること。現在の消費者は平均して14以上のデバイス、プラットフォーム、チャネルを使いこなしていると言われます。たとえば、Instagram、LINE、メール、それぞれで使う言葉も内容も異なりますよね。それを総合的に理解し、顧客が出すシグナルをしっかりと読み取る能力、そしてそれに見合ったメッセージを届ける能力が必要なんです。これが顧客との信頼関係構築にも、データを使ってさらなる付加価値を提供することにもつながります。

 特に小売やEC、観光業、ホテル業などでは顧客との対話が求められています。私がここ20年使っている航空会社からもメールが送られてきますが、パーソナライズされていると言っても、最初にファーストネームを呼んでくれるだけ。これが友人だとしたら、仲が良いとは言えないですよね(笑)。ここで言う対話は企業から顧客への一方的なメッセージなどではありません。顧客とは生涯をかけてお付き合いをすると考え、そのライフスタイルに合わせて、自分たちのメッセージを変えていかなくてはならない時代になってきています。

 1対1ならシグナルに気づくこともできますが、数百万、数千万というユーザーのデジタルボディーランゲージを理解するのは難しいものです。その分析のサポーターとして長けているのは、Brazeが持つ優位性の一つですね。

 もちろん、デジタルボディーランゲージから読み解く消費者の感情は一つではなく、着目する感情は業種によっても異なると思います。たとえば、レストランチェーンのKFC(ケンタッキー・フライド・チキン)が着目するのは、「Hangry:腹が立つほどお腹空いている」という感情です。同社のように購入の動機となるような感情を探り、それに見合った施策を行うことは非常に高い効果を発揮しています。

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 Brazeを利用するブランドは顧客プロフィールに設定した項目と、各ユーザーが示すその値によって、感情を読み解くヒントとなるシグナルを発見する。一定のパターンのシグナルを発したユーザーには、それに見合った訴求をすることも可能となる

 そして最後、3つ目の鍵が、データを使ってより良いストーリーテラーになることです。

 今の消費者は「自分がデータを提供することによって、自分の生活にメリットがあるのか」を常に問うています。それは現在のことだけではなく、自分のライフステージの変化に応じて本当に自分にとってプラスかを考えているんです。

 我々はデータを提供する消費者を主語とした時、収集されたデータで企業から届けられる価値を、次の「データバリューピラミッド」というもので整理しています。

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データ活用は顧客にとっての付加価値を基準にせよ

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この記事の著者

安原 直登(編集部)(ヤスハラ ナオト)

大学卒業後、編集プロダクションに入社。サブカルチャー、趣味系を中心に、デザイン、トレーニング、ビジネスなどの広いジャンルで、実用書の企画と編集を経験。2019年、翔泳社に入社し、MarkeZine編集部に所属。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/06/09 08:00 https://markezine.jp/article/detail/49001

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