博報堂DYホールディングス、博報堂テクノロジーズ、松尾研究所は、大規模言語モデル(LLM)を広告領域向けに高度化し、広告コピーの「多様性」と「品質」を同時に実現する自動生成技術を開発したと発表した。
従来の汎用LLMでは、平均的で画一的な文調になりやすく、ニッチな表現やロングテールキーワードを反映した広告コピーの生成が困難という課題があった。今回の開発では、Meta社のLlamaをベースに、Supervised Fine-Tuning(SFT)やRLHF(DPO手法)などの先端的アプローチを組み合わせ、広告表現の多様性とコピー品質を両立する新技術を確立した。
同研究は以下の技術的アプローチにより、リスティング広告のような短文コピーにも適した高品質・多様な生成を実現している。
-
Supervised Fine-Tuning(SFT)
一般的な言語知識を備えたLlamaをベースに、広告特化のデータを用いて追加学習を実施。従来の汎用モデルでは難しかった広告ドメイン固有の文脈理解を強化 -
人間のフィードバックを活用(RLHF、DPO手法)
人間のフィードバックをもとに、より最適なコピーを生成するようモデルを強化 -
デコーディング戦略やセマンティックな後処理
生成候補の比較を行い、最も効果的な表現を選択するアルゴリズムを採用 -
ペルソナ・カスタマージャーニーの導入
消費者の属性や行動に合わせた広告コピーの自動生成を実現し、より効果的な訴求が可能
生成された広告コピーに対して、広告領域のベンチマークや実際の広告配信データから多角的に品質を評価した結果、BLEU-4やROUGE-1等の品質指標でGPT-4oと同等水準を保ちながら、Distinct-NやHill numberといった多様性指標でより高い値を示すケースが確認された。

Distinct-N(多様性スコア):ユニークなN-gramの割合
SELF-BLEU(類似度スコア):生成文同士の類似度を測定
BLEU / ROUGE / BERTScore:従来の言語モデル評価指標
今後の課題として、生成時のパラメータ設定やプロンプト設計によって多様性と品質のバランスが変化することを挙げており、さらなる最適化を追求するという。
本技術は、博報堂DYグループの統合マーケティングプラットフォーム「CREATIVITY ENGINE BLOOM」の広告文生成機能(CREATIVE BLOOM TEXT Ads)に導入される予定だ。
【関連記事】
・博報堂・NEL・pHmedia、SNS拡散×ドン・キホーテの店舗を活用した広告パッケージの提供を開始
・博報堂とNTTデータ、デマンドチェーン革新を目指す新会社「HAKUHODO ITTENI」営業開始
・Acompanyと博報堂DYホールディングス、「統計合成データ」を実証実験 元データに遜色ない有用性
・博報堂DYホールディングス、「メタバース生活者定点調査」実施 メタバース内広告が認知興味に好影響
・博報堂グループ、web3を活用した「界隈」マーケティングソリューションを開発