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トランプ政権で変わる米国コミュニケーション戦略

日本品質の信頼×ストーリーテリングが鍵──米国市場攻略には低価格戦略からの脱却が不可欠に


 「関税、関税、関税……」と毎日のニュースで騒がれており、混迷を極める世界経済。2025年1月、ドナルド・トランプ氏が再び米国大統領に就任し、アメリカ・ファースト(自国第一主義)の政策を強く押し進めています。特に、輸入品への関税強化や海外企業への圧力が再び強まる中、日本企業が米国市場で従来のように「価格の安さ」や「コストパフォーマンス」で勝負することは、難しくなりつつあります。では、企業はどのようにこの状況を切り抜ければいいのでしょうか。本稿では、米国市場向けPRとマーケティング支援を行い、カナダ在住の神村 優介氏が、消費財(食品、飲料、生活雑貨、アパレル、エンタメなど)を扱う日本企業において、今後米国市場で勝ち残っていくために必要な「価値訴求型コミュニケーション」の視点と、その背景にある市場の変化を、具体的な事例とともに解説します。

日本ブランドは強く、競争力はあるが……

 米国における日本製品の信頼性や品質への評価は依然として高く、街中を見回しても走っている車の多くが日本車。カメラやプリンターなどの電子機器は、日本メーカーが人気です。エンターテインメントでも日本のアニメやマンガ、キャラクターはどんどん新しいものが輸入されてきています。寿司やラーメンが食のジャンルとして定着するなど、衣食住すべてにおいて、日本ブランドは北米圏の生活に密着しています

米国のユニクロ店内
米国のユニクロ店内

 結論から申し上げると、関税によって日本企業の競争力が直ちに落ちるとは考えられません。ただし、ずっと製品の力頼みで営業するだけでは足りず、マーケティングPRの力をつけないと他国の企業に負けてしまう恐れがあります。

 これまで「高品質で手頃な価格」というポジションで支持を得てきた日本製品(※)にとって、関税による価格上昇は大きな逆風となります。執筆時点では自動車・鉄鋼・アルミニウムに対する関税が大きな争点となっていますが、食品・飲料・生活雑貨・アパレルといった製品にも波及する恐れもあります。特に、一般消費者向け商品は価格敏感性が高く、競合との比較が起こりやすいカテゴリーです。

※日本製品:記事中では生産地にかかわらず、日系企業が手がける製品を日本製品として紹介します。

 今は、1980年代の日本と米国の貿易摩擦の時のように日本製品の不買運動などは起きておらず、日本ブランドはコミュニケーション戦略において活用できそうです。余談ですが、私の住むカナダでは、米国製品のボイコットが起きており、米国・カナダの関係分断が不安視されています。

これまでの日本ブランドは「高品質・高技術力なのに安い」

 日本ブランドといえば、製品の品質や技術力が人気で米国市場でも存在感を示しています。たとえば、自動車業界では、日本車の米国市場シェアは6割近くもあり、トヨタやホンダをはじめとする日本車は、米国消費者の中で「壊れにくい」「燃費が良い」「長持ちする」といった信頼を獲得してきました。

日本車は、自家用車だけでなく、タクシーなどの商業車でも人気
日本車は、自家用車だけでなく、タクシーなどの商業車でも人気

 ソニーやパナソニックといった電子機器も信頼性と革新性が人気です。それだけではなく、包丁などの日本製の刃物も人気です。現地のメーカーが「ニンジャ」「サムライ」、または日本人の名前を製品名に入れて日本ブランドの様に売り出しているケースもよく見られるほどです(評判はイマイチのようですが……)。

 生活雑貨ではダイソー、衣料品ではユニクロが米国全土で店舗数を急拡大しています。元々米国でもDollar General、Dollar Tree、Family Dollarと行った米国版の百均ストアのブランドは全国展開されていましたが、ダイソーはそのレッドオーシャンの中でも「価格に対して品質が高い」「他のダラーストアよりも優れた商品が多い」という定評があります。また、米国では見たことがないような便利で珍しい商品が並ぶことでも人気を博しています

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日本ブームの理由はどこにある?

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この記事の著者

神村 優介(カミムラ ユウスケ)

 シェイプウィン株式会社 代表取締役 ShapeWin Canada Ltd. CEO

 山口県光市出身。徳山高専情報電子工学科卒業後、株式会社セガトイズに入社。お風呂で使える家庭用プラネタリウム「ホームスター アクア」で年間15万台出荷するヒット商品をプロデュース。

 2011年に日本と北米に拠点...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/05/14 09:44 https://markezine.jp/article/detail/49018

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