日本ブランドは強く、競争力はあるが……
米国における日本製品の信頼性や品質への評価は依然として高く、街中を見回しても走っている車の多くが日本車。カメラやプリンターなどの電子機器は、日本メーカーが人気です。エンターテインメントでも日本のアニメやマンガ、キャラクターはどんどん新しいものが輸入されてきています。寿司やラーメンが食のジャンルとして定着するなど、衣食住すべてにおいて、日本ブランドは北米圏の生活に密着しています。

結論から申し上げると、関税によって日本企業の競争力が直ちに落ちるとは考えられません。ただし、ずっと製品の力頼みで営業するだけでは足りず、マーケティングPRの力をつけないと他国の企業に負けてしまう恐れがあります。
これまで「高品質で手頃な価格」というポジションで支持を得てきた日本製品(※)にとって、関税による価格上昇は大きな逆風となります。執筆時点では自動車・鉄鋼・アルミニウムに対する関税が大きな争点となっていますが、食品・飲料・生活雑貨・アパレルといった製品にも波及する恐れもあります。特に、一般消費者向け商品は価格敏感性が高く、競合との比較が起こりやすいカテゴリーです。
※日本製品:記事中では生産地にかかわらず、日系企業が手がける製品を日本製品として紹介します。
今は、1980年代の日本と米国の貿易摩擦の時のように日本製品の不買運動などは起きておらず、日本ブランドはコミュニケーション戦略において活用できそうです。余談ですが、私の住むカナダでは、米国製品のボイコットが起きており、米国・カナダの関係分断が不安視されています。
これまでの日本ブランドは「高品質・高技術力なのに安い」
日本ブランドといえば、製品の品質や技術力が人気で米国市場でも存在感を示しています。たとえば、自動車業界では、日本車の米国市場シェアは6割近くもあり、トヨタやホンダをはじめとする日本車は、米国消費者の中で「壊れにくい」「燃費が良い」「長持ちする」といった信頼を獲得してきました。

ソニーやパナソニックといった電子機器も信頼性と革新性が人気です。それだけではなく、包丁などの日本製の刃物も人気です。現地のメーカーが「ニンジャ」「サムライ」、または日本人の名前を製品名に入れて日本ブランドの様に売り出しているケースもよく見られるほどです(評判はイマイチのようですが……)。
生活雑貨ではダイソー、衣料品ではユニクロが米国全土で店舗数を急拡大しています。元々米国でもDollar General、Dollar Tree、Family Dollarと行った米国版の百均ストアのブランドは全国展開されていましたが、ダイソーはそのレッドオーシャンの中でも「価格に対して品質が高い」「他のダラーストアよりも優れた商品が多い」という定評があります。また、米国では見たことがないような便利で珍しい商品が並ぶことでも人気を博しています。