超富裕層市場の潮流、顧客は今なにを求めているのか?
MarkeZine編集部:ベントレーの顧客層である超富裕層市場において、最近の潮流や顧客のインサイトをどう捉えていらっしゃいますか?
遠藤:冒頭でお話ししたように、全体として富裕層の若年化が著しい印象です。その他の潮流として注目に値するのは、やはり「クワイエット・ラグジュアリー」のトレンドです。「クワイエット・ラジュグアリー」というと、表面上のデザインのトレンドと認識されているかもしれませんが、私は「本質的な価値」を希求するものと見ています。
ゴージャスなデザインや見栄え、ブランドロゴのネームバリューではなく、ブランドの社会的価値・存在意義に納得できるかが見られているのです。
たとえば、ベントレーは、10年以上前から電力の100%を自給するなど、工場で使うエネルギーを自社内での循環型にしています。また、地域の生物多様性への貢献として敷地内で養蜂も行い、そのミツバチが作った蜂蜜はお客様へプレゼントしたりしているんですよ。当社が続けてきたサステナビリティのための取り組みは、「本質的な価値を持つ」ことを大事にする今の時代と若い方々が求める価値観にフィットし、選ばれる一因になっています。


こうしたパーパスや社会的価値に関する取り組みの印象が、購入の意思決定に直接つながるとは言えません。しかし、それらがないブランドは、最初から選択肢の土俵にすらあげてもらえないと考えます。
「超高級車」の枠を越え、ラグジュアリー・ライフスタイル・ブランドへ
MarkeZine編集部:遠藤さんは長年、自動車業界でキャリアを歩んでこられました。ベントレーならではのマーケティングの面白さをどのように感じていらっしゃいますか?
遠藤:ベントレーの長い歴史や伝統を踏まえつつ、いかに現代のお客様に向けてブランドの魅せ方をブラッシュアップしていけるかがチャレンジで、そこが面白い点だと思います。富裕層の方はTPOでお車を購入されるので、時にはブランドスイッチもあります。それでも当社との関係性はなくならず、何代も続くことがほとんどです。当社の先人が築いたお客様との絆をしっかり受け継ぎ、それを成長させて次世代に繋げていく責任を感じています。
MarkeZine編集部:ブランドの魅せ方について、方向性はどのようにお考えですか? 展望も含めてお答えください。
遠藤:従来の「超高級自動車ブランド」だけでなく、ファッションやアート、音楽、旅など全方位的にお客様とコンタクトできる「ラグジュアリー・ライフスタイル・ブランド」を目指しています。既にマイアミでは高級コンドミニアム「ベントレーレジデンス」が着工していますし、イギリスにはミュージックバー「ベントレーレコードルーム」があり、ドバイやミラノではソファなどのインテリア商品を提供する「ベントレーホーム」も展開しています。

ベントレーは良い意味で、本当に限られた人しかアクセスできないブランドです。自動車の枠を超えたライフスタイル・ラグジュアリー・ブランドとして、日本でももう少し門戸を広げたマーケティングやセールス活動を展開予定です。
たとえば、6月末にはブルガリホテル東京にてベントレーに試乗できる体験型イベントを行います。ホテルの素敵な空間で、ゆっくりお茶などを召し上がりながらベントレーに触れていただいたり、ホテル周辺をご自身でドライブしたりできます。プロドライバーが同乗し、どのような運転が一番心地良いかなどをご紹介しますので、運転に不慣れな方にもお楽しみいただけると思います。その他7月以降には新モデルの発表もございますので、ご期待ください。