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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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注目マーケティングトピックス2025

「労働力としてのマーケターはもういらない。」すがけんさんに聞く、生成AI時代にマーケターが生き残る術

「労働」はAIで代替できる時代。閉ざされつつあるマーケターのキャリア

――シビアな状況ですね。しかし、さぼっているわけではなく、毎日忙しく目の前のタスクに取り組んでいるマーケターも多いはずです。

 そうですね。日々の仕事に真摯に取り組んでいるマーケターが多いのは確かです。ただ、それでもなお「人が担ってきた作業」の多くが、今やAIによって代替可能になってきていることも事実です。

 これはデジタル広告に限らず、マスマーケティングやブランドマネジメントなど、これまで人間の感性や経験に頼っていた領域においても同様です。たとえば広告運用やクリエイティブの初稿制作、資料作成、レポート集計、メディアプランなどは、今やAIが高い精度で作成できるようになっています。

 もちろん、すべてがAIに置き換わるわけではありません。ブランドの意味づけや顧客との関係構築、社会的コンテクストの読み解きなど、人間ならではの視点が必要な部分も依然多く存在します。しかし、「実行するだけ」「まとめるだけ」の仕事は確実に減っていく。つまり、“実務の担い手”としてのマーケターは徐々に必要とされなくなるという現実が、すでに始まっているのです

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――人がいらないとなると、今後マーケターや宣伝部はどう変化していくのでしょうか?

 そもそも人が少ない宣伝部が、さらに矮小化していくでしょうね。マーケターがクビになることはないでしょうが……、今の仕事はAIに取られ、昇給も出世も難しくなっていくと思います。

 たとえば、2,000人規模の会社の宣伝部が20人程度の場合、全体に対する組織規模が小さすぎるため、宣伝部長が取締役に昇進することはかなり難しいでしょう。実際に、宣伝部長やCMOという肩書きを持ちながらも、組織構造や評価制度の影響で、その先のキャリア形成が難しくなるケースも少なくありません。

 本来、マーケティングは会社にとって非常に重要で、マーケターが取締役に入っていてもおかしくないはずなのに、社長や経営陣はそれを重視していない。ましてやマーケター自身も当事者意識がなく、その重要性に気づけない。もはや、CMOさえも不要と考える企業は増えているのかもしれません。

マーケターが生き残るカギは、ビジネストランスフォーメーションにあり

――では、「労働力としては不要」になったマーケターはこれからの時代、どのような役目を担っていくべきなのでしょうか。

 マーケターは「ビジネストランスフォーメーション(BX)」の推進役になるべきだと考えています。BXとは、企業の戦略やビジネスモデル、提供価値、組織構造に至るまでを抜本的に見直し、新たな価値創造へと転換していく取り組みです。

 たとえば、かつてレンタルDVDを主力としていた企業が、時代の変化をとらえてストリーミングサービスへ転換するーーこうしたモデルチェンジもBXの一例です。マーケターがこの変革を主導できれば、企業価値の向上に直接貢献でき、経営層からの信頼も自然と高まっていくはずです。

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――BXに向けて、マーケターや宣伝部は何から始めたらいいのでしょう。

 企業によってやるべきことは様々ですが、私だったらまずは広告費を可能な限り抑え、リサーチなどへ予算配分の比重を高めるかもしれません。リサーチに時間と予算をかける企業はまだまだ少ないですが、たとえば10億円の予算のうち、1億円をリサーチ費用としてもいいと思います。

 徹底的なリサーチによって、新顧客と新市場、そして新提供価値が見えます。顧客は常に進化してニーズはどんどん変わっています。それによって大きな市場の中の細分化された市場は見えないうちに再編され続けていますが、“大きな市場”と大まかに捉えているとそれはまったく見えてきません。大きな市場でたくさん売れるものを作ろうと思った結果、どの企業も同じような商品で溢れかえっている現状に繋がります。新顧客と新市場そして新提供価値というデータや羅針盤があればプロダクトチームと新商品を共創できるようになり、BXへの第一歩につながるでしょう。

――広告出稿などの「狭義のマーケティング」を担当するだけではなく、全社横断的な役割となるイメージですね。

 まさにその通りです。広告出稿や販促施策といった「狭義のマーケティング」だけを担う時代は終わりつつあります。これからのマーケターには、顧客の変化を起点に、事業そのものの設計や価値の再定義に関わっていく「全社横断型の価値創造パートナー」としての役割が求められています

 実際、顧客インサイトを一番深く持っているのはマーケターです。その知見を活かして、営業・商品企画・開発・経営と連携し、企業全体でどのように価値を届けるかを設計する。それがBXを推進するうえでのマーケターの真の役割だと思っています。

 社内での立場としても、「プロモーション予算の執行者」から「価値創出と成長戦略の共同設計者」へと進化していける存在になってほしいですよね。実際に僕がMoonshotで進めているプロジェクトではCMOや経営者の理解がこのように変わることで良い変化が生まれています。

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マス偏重から脱却を。「蓄積型の投資対象」としてSNSを育てていく

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この記事の著者

安光 あずみ(ヤスミツ アズミ)

Web広告代理店で7年間、営業や広告ディレクターを経験し、タイアップ広告の企画やLP・バナー制作等に携わる。2024年に独立し、フリーライターへ転身。企業へのインタビュー記事から、体験レポート、SEO記事まで幅広く執筆。「ぼっちのazumiさん」名義でもnoteなどで発信中。ひとり旅が趣味。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

福島 芽生(編集部)(フクシマ メイ)

MarkeZine副編集長。1993年生まれ、島根県出身。早稲田大学文学部を卒業後、書籍編集を経て翔泳社・MarkeZine編集部へ。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/06/05 07:30 https://markezine.jp/article/detail/49156

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