20周年を迎えたローソンストア100
──ローソンストア100が20周年を迎えられました。この20年間を振り返って、小売業界を取り巻くマーケティング環境はどのように変わってきたとお考えでしょうか。
小栗:まずデジタルシフトによるデータドリブン化が急速に進みました。セグメント・パーソナライズ・オートメーションが急速に発達し、施策が科学的に打てるようになったと感じています。一方で、店舗で毎日お客様と向き合う業界では、買い物のワクワク感や安心感といったエモーショナルの価値が同時に高まってきていることを強く感じます。

慶應義塾大学、同大学院卒業。在学中は米国カリフォルニア大学へ奨学研究員として派遣され、情報通信分野の研究に従事。2004年4月に三菱商事株式会社へ入社。ロンドン・ビジネス・スクールにて MBA を取得。2007年よりニューヨーク駐在を経て、2013年にファーストリテイリングへ転籍。シンガポールを拠点にアジア太平洋 EC ディレクターとして地域横断型の EC/デジタルマーケティング基盤を構築し、2017年にはユニクロ・タイランド COO として ASEAN 市場の事業拡大を牽引した。2022年3月に株式会社ローソンへ移りマーケティング戦略本部長、2023年3月に株式会社ローソンストア100上級執行役員戦略企画本部長を歴任し、2024年4月より代表取締役社長。生鮮強化と店舗メディア化、データドリブン経営を柱にブランドの成長を推進している。
小栗:PRの領域では、媒体の多様化と発信の多層化により、“パブリック” の意味が拡張してきています。メディアとの関係構築だけでなく、CXO(企業の責任者)、クリエイター、生活者にまでパブリックの対象が広がっています。したがって、PRを進化させていくという意味では、そのアプローチしていく先も広がり、有機的につながってきていると感じます。
チャネルの「買い分け」が進む中、小売業界の戦略は?
──昨今の生活者のインサイトや行動をどのようにとらえられていますか。
小栗:最近ではデジタルだけでなくリアルでも取れるデータが増えてきたことで、お客様一人ひとりの行動が収集できるようになってきました。これらを解析した結果、お客様は意識的・無意識的含め、デジタル・リアル含めた店舗での「買い分け」をしています。同じカテゴリーの商品であっても、タイミング・気分・ライフステージに合わせて、チャネルを使い分けているのです。
──こうした中、小売業界各社ではどういった戦略が取られていると感じていますか。
小栗:店舗を最大のメディアととらえて戦略を構築しています。各店舗に合わせ、お客様や社会とどのようにコミュニケーションできるか、またそのクオリティを上げていけるかを考えていると思います。
コンビニですと、店舗の入口には店頭幕が設置されていますが、そこで「何を打ち出していきたいのか」を考え、実行することは外せない施策です。店外から店内、通路に至るまで、各社が店舗のメディア化を強化している印象です。