組織間の浸透圧を日頃から合わせ、流動的に動かしていく
MarkeZine:2,500人規模の組織となると、現場との目線合わせも大変かと思われます。スピーディに組織戦略を実行していくにあたり、どのようなことを意識されていますか?
杉浦:お話しできることがあるとすれば、日頃から素地を作っておくということかもしれません。私は「(組織間の)浸透圧を合わせる」とよく例えるのですが、まったく専門性の異なる部門長同士が状況を共有し合う場を設けるなどして、組織間の壁を作らないようにしています。普段から他部署の情報に触れておくことで、全社を挙げて何かに注力する際にも、社内の違和感や齟齬を最小限に抑えることができると考えています。

MarkeZine:なるほど、4つの組織の連携にもよい影響がありそうですね。比較的大きな組織改革があったばかりですが、今後も電通デジタルの形は変化していくのでしょうか?
小林:専門性をもってクライアントに価値提供する組織(MC・XT)と、それを統合的にプロデュースする組織(CP)、そして特定の投資領域を伸ばす組織(SF)という大きな構造はそう大きくは変わらないと思います。ただ、部門同士の連携や領域の区分は、その時々に応じて流動的に変わっていくでしょう。

それ以前の話題として、AIとの協働により、これまでの「広告代理店」の仕事自体が大きく変わっていくかもしれません。従来の型に囚われず、時代にあわせて提供価値を拡張させていきたいですね。
創造的破壊を通して、AIと共に、人も組織も成長していく
MarkeZine:「AIとの協働」というトピックスが出ましたが、人材・組織の強力化に向けて、電通デジタルではどのようにAIを活用していますか?
杉浦:電通デジタルは、かなり早い段階からAI活用に取り組んできました。全社員にChatGPTのアカウントを配布したのは2023年。業務効率化のための活用は全社的にかなり進んでいる状況です。加えて、「∞AI」を中心としたソリューションを積極活用し、クライアントへの提供レベルの高度化にも注力しているところです。社内と社外、両輪でAI活用を推進しています。
MarkeZine:AIにより、広告ビジネス、さらには広告代理店のビジネスは大きく変わっていきそうです。
杉浦:はい、マーケティング業務自体が抜本的に変わると考えています。「クリエイター」や「職人」といった電通デジタルの専門人材の思考回路をAIにのせて、それを「AIエージェント」としてクライアントへ提供する時代がやってくるでしょう。電通デジタルならではの、秘伝のタレをAIに入れるイメージですね。
そうなれば、クライアントとの向き合い方も当然変わってきます。AIの答えを目利きし、クライアントと伴走することが、広告代理店の仕事になっていくかもしれません。

小林:私たちはいわゆる「広告代理店の仕事」の概念を自分たちで壊しにいく覚悟です。自分たちでやらなければ、きっと誰かに壊されてしまうでしょうから。創造的破壊により、日々進化するAIと一緒に、人も組織も成長していけるのではないでしょうか。