予定調和は消費者のワクワク感を削ぐ
まず「食を愛好する一人の消費者として、自分自身の内面を徹底的に深掘りする」というものだ。このアプローチにより、他の消費者にも共通する潜在的なニーズや感情を発見できるという。

続いて「バリアを外す」アプローチだ。多くの人は思い込みや先入観に縛られて行動している。これらのバリアを取り除くことで、消費者の動きが捉えやすくなり、新たなインサイトの発見につながる。最後は「課題の解決」だ。日常生活における不便を見出す習慣が、消費者の感じている不便や課題の特定を促すという。
前述したアプローチにより、南雲氏が発掘したインサイトは次のとおりだ。

第一のインサイトは「人のぬくもりのある食体験・手づくり、できたて」。手づくりの温かさ、熱々できたての状態という要素を普遍的で強力なインサイトとして位置づけている。このインサイトは時代を超えて消費者の深層心理に訴える力を持つ。
第二のインサイトは「驚きたい・ワクワクしたい」だ。予定調和は消費者の興味やワクワク感、興奮を削ぐ。一方、予定調和を外すことで消費者にドキッとした感覚を与え、興味を喚起し、驚きとワクワク感を創出できるという。
これらのインサイトを踏まえ、丸亀製麺では全店舗で粉からうどんを手づくりするスタイルを事業の根幹とし、製麺所の中で食事をするコンセプトを採用した。製麺スペースを店舗の前面に配置し、ライブ感や実演によるワクワク感を演出。加えて全店舗に麺職人を配置し、人のぬくもりとおいしさを実感できるようにしている。
さらに「うどーなつ」のような新商品によって、驚きとワクワク感を創出。最近は無料トッピングの種類を増やし、手づくりの価値を強化したそうだ。
3.パーセプション形成と衝動づくり
丸亀製麺では、左脳と右脳にアプローチするマーケティング戦略を展開している。左脳には論理的な購買理由(他とは違う選ぶべき理由)によるパーセプションを形成。一方の右脳には「とにかくおいしそう」と思わせることで、衝動や感性に訴える手法を用いている。
「コミュニケーションによって、選ばれるパーセプションと衝動をつくり、店舗では実感を醸成しています」(南雲氏)
ブランドコミュニケーションと商品プロモーションの掛け算でマーケティングを実行している南雲氏。ブランド訴求でベースを向上させた上で、商品プロモーションによって衝動の山をつくるのだ。衝動の山には高低があるが、二つの相乗効果が業績の向上に寄与しているという。
