従業員体験がCXや売上に与える影響の測定方法
4.内発的動機を高める
南雲氏が目下の最重要テーマとして捉えているのが「内発的動機づくり」だ。EX(従業員体験)からCX(顧客体験)への連鎖効果を測る検証を行った結果、従業員の内発的動機と従業員体験の向上がCX向上と売上向上に寄与することが実証されたという。

「内発的動機の強化によって従業員の幸福度が高まり、感動創造に資する行動が増加すると考えています。内発的動機のスイッチを入れるために、従業員向けの動画や漫画を制作しています」(南雲氏)
また同社では、CX向上を測る指標として「感動スコア」を店舗別に毎日測定し、各店舗にフィードバックしている。加えて独自指標「ハピネススコア」を用いて、すべての社員・アルバイトを対象にEXを月次で測定。これらの指標間の相関関係を分析し、どの要素がCX向上や売上拡大に寄与するかを継続的に検証しているそうだ。
目標値の100%以上に必達するための独自メソッド
5.ビルディングブロックづくり
南雲氏は丸亀製麺で独自に実践している「ビルディングブロックづくり」にも言及。ビルディングブロックとは、目標を達成するための施策と数字の積み上げのことを指す。
前述のブランドコミュニケーション×商品プロモーションによるハイブリッド戦略では、ベース売上の予測が重要となる。前年との曜日偏差、天候の影響、マクロ要因、インフレの動向、飲食業界全体のトレンド、メディア量の前年比較、ブランド認知の現状などを確実に把握し、理解した上で予測を行う。さらに、その年度中に投入予定の商品が前年と比較して強いか弱いかを勘案しながら、予算策定や目標設定を行うとのことだ。

たとえば「売上100億円達成」を目標とし、前年売上が100億円で予算も100億円に設定されている場合「フェア商品で5億円を積み上げ、シェイクうどんで2億円減、無料の薬味とトッピングで3億円積み上げる」という具合でビルディングブロックを構築する。これらの積み上げにより125億円の売上が見込める算段だ。実際は算段どおりに進行しないため、最終的には110億円で着地することになる。
この手法は手間を要するが「施策ごとの予測値を日別に積み上げることが重要」と南雲氏。簡単な作成方法では間違いが生じやすいためだ。
大抵の場合は想定外の事態によって計画どおりに進行しない。3回程度の失敗があっても120%程度の達成率を維持する目論見で準備を進めれば、目標値の100%以上を必ず達成できるわけだ。「このような積み上げにより、ブランドなりのブロックを構築することが望ましい」と南雲氏は語る。
最後に南雲氏は「HR領域をはじめ、様々な領域でマーケティングの力が必要とされています。皆さんのマーケティングの知恵を結集し、一緒に日本を元気にしていきましょう」と語り、講演を締めくくった。