日本でも急成長中!CTV広告市場
──本日は、エン・ジャパンのCTV活用について伺います。CTVへの注目が高まっていますが、昨今のデジタルコミュニケーションの変化をどのように見ていらっしゃいますか。
キン(エン・ジャパン):生活者のデータを見ても、CTVの視聴時間は増加傾向にあり、デジタルマーケティング全体を見ても、CTVの立ち位置が確立されつつあると感じています。当社としても転職希望者との接点を増やすため、CTV広告に注目しています。

マーケティング部 チームリーダー キン イキ氏
鈴木(The Trade Desk、以下TTD):「日本の広告費2024(電通)」によると、インターネット広告費のうちCTVを含むテレビメディア動画広告は、2024年には年間約650億円の市場規模となっており、前年比1.5倍の成長率で拡大を続けています。
CTV広告は、地上波と同様に大画面で見られることに加え、家族やパートナーと一緒に視聴する「共視聴」が特徴的です。また、専念視聴からくるブランド認知や利用意向の向上にもつながっています。プレミアムな広告体験を提供できることに加え、デジタル広告と同様にターゲティングや計測を行うことで、費用対効果を可視化できるのがCTV広告の価値だと思います。
「ミドルの転職」のプロモーション戦略
──エン・ジャパンは「ミドルの転職」において、CTV広告を活用したと伺いました。どのような戦略で進めているのでしょうか。
キン(エン・ジャパン):「ミドルの転職」は、30代・40代を中心としたミドル世代に特化したスカウト転職サービスです。デジタル広告を中心に活用して、会員数の増加を目指しています。
スカウト転職サービスは、多くの競合が存在し、プロモーション量が非常に多いため、デジタル広告のユーザー集客効率が年々悪化傾向にあります。そのため、従来と同じやり方では効果が出しにくい状況にある中で、より高い成果が求められています。こうした背景から、従来の手法は磨きつつ、新しい手法を取り入れることを意識してきました。

キン(エン・ジャパン):そこで2024年4月から検討し、活用を決めたのがCTV広告です。より事業を成長させるために、成長の伸びが大きいCTV領域で挑戦する必要があると考えました。
調べていく中で、地上波広告よりもCTVのターゲティング精度が高いことや、効果計測が非常にしやすく、わかりやすい点に大きな魅力を感じました。また、完全視聴率や注視率も高い水準であることから、ミドルの転職の会員登録数や指名検索数の改善も期待できると思いました。
エン・ジャパンがCTV広告に注目した理由
──CTV広告の支援会社をTTDにした決め手を教えてください。
キン(エン・ジャパン):きっかけは、上司がマーケティングのイベントでTTD様の話を聞いたことでした。競合環境が激しくなる中で、いち早く効果を出し、確実に成果を上げ、PDCAを回しやすい手法を模索していたため、TTD様ならばパフォーマンスの改善が短期間でも期待でき、広告最適化が可能と判断しました。
──実際、TTDはどのような提案をしたのでしょうか。
鈴木(TTD):転職を意識するタイミングは人により様々ですし、転職サービス自体が多様化する中で、実際に転職を考える際、どのように第一想起を獲得できるか、サービス認知をどう広げていくかが大きな課題だと考えています。
具体的には、CTV広告の配信を通じて認知獲得と運用最適化を両輪で行っていくことを提案しました。CTVの配信方法には、大きく分けて2つあります。1つは地上波と同様のリーチ重視型で、もう1つは配信しながら効果改善を行っていくパフォーマンス重視型の手法です。私たちとしては、この2つを両立できるような運用型のCTV配信を提案しました。

鈴木(TTD):ミドル世代、かつハイクラス人材をターゲットとするサービスは、オーディエンス自体が狭く、かつ競合性も高い市場です。したがっていかに適切なユーザーに対して効率的にリーチしていくかが重要です。当社と連携している多様なデータパートナーからデモグラや転職関心層などのデータを活用することで、適切なオーディエンスに広告を届け、効果を見ながら次の施策を判断し、PDCAを回しました。
最適化によってコンバージョンが10倍に!「ミドルの転職」のCTV広告活用
──具体的に実施した、CTVの取り組み内容について教えてください。
キン(エン・ジャパン):まず、CTVでの配信を前提とした動画を制作し、TVerやABEMAのCTV広告枠で配信しました。ターゲティングでは、転職関心層といった具体的なセグメントへの絞り込み配信を行い、指名検索数や会員登録数といった成果指標をリアルタイムで確認しながら配信内容の最適化を継続的に実施する設計のもと、施策を展開しました。
チェ(TTD):結果、動画を視聴した後に指名検索からサイト流入につながる流れが生まれ、広告キャンペーン経由でのサイト流入数は配信開始後、30日間で10倍以上に改善しました。

チェ(TTD):この成果を実現できた理由は、大きく2点挙げられます。
1点目は、担当の広告会社様と密に連携し、効果によって予算を柔軟にチューニングしたことです。リアルタイムで効果の良いオーディエンスやクリエイティブ、時間帯別・曜日別でのコンバージョン数の動向をすべてデータで可視化し、効果の高いものに予算を集中させました。

チェ(TTD):2点目は、当社の強みであるデータの活用です。転職関心層や、競合の転職アプリを利用しているユーザーなど多様なオーディエンスデータをターゲティングに活用し、デモグラフィックデータも細かく設定することで、ミドルエイジ層にしっかりと届くよう調整しました。これによりコンバージョンに至る確度の高いユーザーに対して配信を行えました。

チェ(TTD):特に効果が高かったのが「Koa オーディエンス」という弊社独自の類似オーディエンスへの拡張機能です。コンバージョンをしたユーザーを細かく分析し、その傾向や共通項となるデータを基に拡張配信することで、コンバージョンへのモチベーションが高いユーザーへの効率的なリーチが可能となりました。
新たな示唆や視点を得て「次につながるマーケティング」を実現
──CTVの活用を開始してから、新たに気づいた学びはありますか。
キン(エン・ジャパン):ペルソナを具体的に可視化できたことです。予想通りの面に加え、これまで気づかなかったような視点も得られたため、今後も活用していきたいですね。

チェ(TTD):当社では、配信後の分析を通して示唆やコンバージョンユーザーのペルソナなど、他のマーケティング全般に活用いただけるインサイトも提供しており、他の広告プラットフォームでは出力できない分析データも含んでいます。エン・ジャパン様の場合、今まで想定していなかったオーディエンスの特徴も発見でき、新たなマーケティングメッセージの検討や、これまでアプローチしていなかった層も見えてきました。
鈴木(TTD):既存のマーケティング戦略の答え合わせができただけでなく、さらなるターゲットユーザーの探求もでき、「次につながるマーケティング」の重要な気づきをご提供できたのではと考えています。
CTV広告を活用するうえで重要なことは、継続です。一過性のキャンペーンで終わってしまうと、運用型・改善型の配信手法の価値を十分に活用できません。今回エン・ジャパン様では、1ヵ月間の配信でもコンバージョンの改善を実現することができましたが、継続的に配信することで様々な気づきや効果改善を実感していただけます。
チェ(TTD):当社は特に多様なデータの活用と計測の正確性が大きな強みです。ユーザーが保有するモバイルデバイスのみならず、CTV視聴を行っている世帯単位での分析が可能です。テレビデバイスを視聴している世帯、そしてその中の個人のデモグラフィックや興味関心、さらにそれに紐づく各デバイスの結びつけをしっかりと把握することで、多様なターゲティングの実現と、その精度を向上させられます。
オープンインターネットの可能性と統合配信への期待
──最後に、今後の展望や展開をお聞かせください。
キン(エン・ジャパン):ミドル世代の転職活動をもっと支援したいですね。ただ、マーケティングの難易度が上がっているので、現在の施策を改善しながら、新しいチャレンジにも取り組んでいきたいです。
その中でCTV広告は、今後も利用者数の増加が見込まれるので、引き続き活用していきたいです。TTD様はCTV利用ユーザーのデータを豊富にお持ちであり、様々な切り口で広告データを分析・可視化していただけます。今後もCTVプロジェクトの際にはぜひご一緒させていただきたいと考えています。
鈴木(TTD):TVerやABEMAといった動画配信プラットフォームに加え、最近では弊社を通じてNetflix広告の配信も開始し、統合的に最適化を行うアプローチが可能です。
またCTVに限らず、音声広告やデジタルサイネージなど、様々なユーザータッチポイントとなるチャネルを当社のプラットフォームで統合化することでより効率的な広告配信が実現できると考えています。
マーケティングが複雑になる中、当社としてはオープンインターネットの可能性や価値を多くのブランド様に実感いただくため、今後もさらなる配信先メディアとご利用いただけるデータの拡充を図ってまいります。
チェ(TTD):CTVはもちろん様々なメディアに対して、共通の運用指標を適用しながらメディアごとに効果を測定し、リアルタイムで効果の高いメディアへチューニングし、全体を横断して広告の接触回数をコントロールすることで統合配信が実現できます。
今後もエン・ジャパン様とは、課題解決のためにCTVにとどまらず、統合配信のプランニングに一緒に取り組ませていただきたいです。