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MarkeZine Day 2025 Autumn

田中洋が紐解く、ビジネス成功のキーファクター

圧倒的成長を生み出すGoogleの4つのルール バイスプレジデント岩村水樹氏が語るマネジメント術

 ブランド戦略論の第一人者であり、中央大学名誉教授でもある田中洋氏による本連載。第13回は、Google アジア太平洋・日本地区 マーケティング バイスプレジデントの岩村水樹さんと対談しました。インターネットの黎明期から米国でマーケティングに携わってきた岩村さん。そのエキサイティングなキャリアや、Googleの組織文化に基づいたマネジメントの考え方、AI時代のマーケティングなどについて、前後編でお話しいただきました。

Googleの行動規範であり意思決定の要「Do the Right Thing」

田中:前編に続き、3つ目の話題に移らせてください。Googleはなぜこれほどまでに速く、かつ継続して成長できるのかということです。その成長の秘密をGoogleさんのカルチャーの面からお話しいただければと思います。

この記事で紹介しているGoogleのカルチャーを形成する行動規範や考え方とマーケティングの原則

 

1.Do the Right Thing:Googleのミッションを具現化する行動規範

2.Think Big:Googleのイノベーションを支える中核的な哲学の一つ、「Think 10X」はその発展形

3.20%ルール:社員の自律性と創造性を向上させる働き方

4.Know the User, Know the Magic and Connect the Two:Googleにおけるマーケティングの大原則

 Geminiを使い、いわゆるGAFAMのCAGR(年平均成長率)を遡れる範囲で算出し、比較してみました。5社の中でもっとも高いのはMeta(40.0%)なのですが、Metaは割と歴史が浅いので脇に置かせていただきます。GAFAMの中でその次に高いのはGoogleで、CAGR19.6%です。ここまで高い成長率を継続しているというは驚異的です(※CAGR算出については末尾を参照)。その背景にGoogleの組織文化やカルチャーがあるのではないかと思っていますが、いかがでしょうか。

岩村:確かに組織カルチャーは、Googleの成長のドライバーの基盤となっています。そのカルチャーの中でも、ミッションや価値観を大切にするという点が重要だと思います。

 Googleにはもともと世界中の情報を整理して、誰でもアクセスして使えるようにするというミッションがあります。

グーグル合同会社 Vice President アジア太平洋・日本地区 マーケティング 岩村水樹氏
Google アジア太平洋・日本地区 マーケティング バイスプレジデント 岩村水樹氏

 この壮大なミッション実現にあたっての行動規範や考え方を、創業間もない頃から「Googleが掲げる10の事実」としてまとめていますが、日常業務の中で最も頻繁に援用されるのが、User First、Do the Right thingです。

 ユーザーにとって正しいこと、世界にとって正しいことをする。このモットーは、Googleのブランド形成に寄与しています。この規範があることで、どちらの意思決定がユーザーにとっていいかという基準で物事が決めやすくなる、つまり意思決定もしやすくなるのです。

10%成長ではない、10Xを目指す「Think 10X」のカルチャー

岩村:もう1つ、イノベーションを生み出すカルチャー形成も重要です。「Do the Right Thing」と両輪になりますが、「大胆に考えよう」というカルチャーです。Googleは、イノベーションは1人の天才が生み出すものではなく、多様な人材によるチームで生み出すものと考えています。そのために重要なのはやはりカルチャーです。

 また、カルチャーを守り育てることは、トッププライオリティの一つで、そのためのコミュニケーションにトップマネジメントが時間を多く使っています。毎週CEOがライブストリームで全社集会を行っているんですよ。

田中:イノベーションに関して言うと「Think 10X」という考え方があるそうですが、それについても教えてください。

岩村:Think10Xとは、10%ではなくて10倍で考えようという意味です。たとえば、10%成長を目指そう、というと既存の路線で考えてしまいます。ですが、10X=10倍となったとたん、まったく違うアプローチを考えなくてはいけなくなりますよね。

 交通事故による死傷者を10分の1に減らすためには、多くの事故の原因となるドライバーの不注意をなくなさければならない。そこで自動運転という発想が生まれ、Waymoというイノベーションにつながるわけです。

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GoogleニュースやGmailを生んだ「20%ルール」

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この記事の著者

田中 洋(タナカ ヒロシ)

中央大学名誉教授。東京大学経済学部講師。京都大学博士(経済学)。マーケティング論専攻。電通で21年実務を経験したのち、法政大学経営学部教授、コロンビア大学客員研究員、中央大学大学院ビジネススクール教授などを経て現職。日本マーケティング学会会長、日本消費者行動研究学会会長を歴任。『ブランド戦略論』(2017年、有斐閣...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/10/01 08:30 https://markezine.jp/article/detail/49644

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