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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2025 Autumn

CXマーケターの革新事例を探る(AD)

EC売上前年比二桁増を達成。「コスメデコルテ」売上過去最高の裏側にあった“顧客理解の深化”の全貌

 コーセーが手がけるハイプレステージブランド「DECORTÉ(コスメデコルテ)」が好調だ。2024年度は国内売上が過去最高を記録し、特にEC売上は前年比二桁成長を達成している。この成長を支えるドライバーの一つが、顧客ID「KOSÉ ID」の活用だ。同IDはコーセーグループの共通メンバーシップIDとして2021年から活用が開始されていたが、2023年から蓄積したデータの本格的な分析と活用を開始。ブランドとチャネルを横断した顧客分析によって、深い顧客理解に基づいた施策改善が生まれている。コーセーで全ブランドのEC・デジタル戦略実行を統括する塩谷悠氏と、本プロジェクトを伴走支援したプレイドの内山正信氏に、取り組みの狙いと詳細について尋ねる。

コーセーのハイプレステージブランド「DECORTÉ」

MarkeZine編集部(以下、MZ):本日の取材では、コーセーが「DECORTÉ」において実践した顧客分析・改善施策について伺います。まずは「DECORTÉ」ブランド、ならびに塩谷さんのご担当領域について教えてください。

塩谷:「DECORTÉ」は、コーセーが誇るハイプレステージブランドです。ブランドステイトメントは「誇りある美を、世界中へ」。スキンケアからメイクまで、お客様一人ひとりに気品を感じていただけるようなアイテムを展開しています。

 コーセーでは、グローバル(Global)、ジェンダー(Gender)、ジェネレーション(Generation)の頭文字をとった「3G」というキーワードを掲げています。これは、国や性別、年代にとらわれない新たなお客様づくりを推進しようという考え方です。「DECORTÉ」も、国境や性別、年齢を超えた幅広いお客様に、“誇りある美”をお届けするブランドを目指しています。

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塩谷:私が所属するコーセープロビジョンは、コーセーにおけるデジタルマーケティングを推進する組織です。各ブランドのECサイト運用、直営店の運営、そして顧客情報を一元管理する「KOSÉ ID」の運営などを通じて、お客様に商品を直接お届けするDtoCビジネスを担っています。

課題は“分断された顧客体験” 「ツール」と「人」で選んだKARTE

MZ:今回のプレイドとのお取り組みは、どのような背景から始まったのでしょうか。

塩谷:我々が目指しているのは、KOSÉ IDの活用によりあらゆるタッチポイントの顧客体験を“高度化”し、LTVの最大化を図ること。顧客体験の高度化とは、「必要なときに、必要な量の、必要な内容を、各ブランドらしく情報提供する」ことを指しています。この理想を実現するため、2023年からプレイドの「KARTE」を導入しました。

 かつてのコーセーは、各ブランドが個別に施策を実施するなど、顧客接点が分断されがちな状況にありました。そこで、既に2021年に発足していた「KOSÉ ID」を本格的に活用し、顧客データを起点としたマーケティングを加速させるパートナーとして「KARTE」を提供するプレイドを選んだのです。

コーセープロビジョン株式会社 ダイレクトビジネス室 課長 EC統括 塩谷 悠氏
コーセープロビジョン株式会社 ダイレクトビジネス室 課長 EC統括 塩谷 悠氏

MZ:様々な選択肢がある中で、プレイドを選んだ決め手は何だったのでしょうか?

塩谷:理由は大きく2つあります。1つ目は、「KARTE」のツールとしての優秀さです。Webサイト上のポップアップ表示、メルマガやLINEの自動配信、さらに広告連携まで、顧客とのあらゆる接点を一つのプラットフォームで管理できる点は大きな魅力でした。

 2つ目は、業界に精通したチームによるサポート体制です。当社を担当いただいている内山さんは、大手化粧品メーカーのご出身で、化粧品業界を深く理解されています。単なるツールの話にとどまらず、「この商品では、こういったコミュニケーションが良いのでは」といった業界の文脈に沿った提案をいただけるため、我々も施策の解像度を格段に高めることができています。

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データで“共通の顧客像”を形成。OMOを見据えたプレイドの伴走支援

MZ:コーセーの課題感に対し、プレイドは具体的にどのような提案・支援を行ったのでしょうか?

内山:まず、EC担当者から店頭スタッフまで、全部門で「共通の顧客理解」を形成することを提案しました。これは、オンラインとオフラインを融合させるOMOを推進する上でも不可欠だと考えたからです。

 具体的には、部門横断の勉強会を実施しました。それまで蓄積されていた「KOSÉ ID」の購買データと、「KARTE」で取得したオンライン上の行動データを掛け合わせ、「どのようなお客様にご購入いただいているのか」「今後ロイヤル顧客になっていただけそうなのは、どのような方か」「その方々の体験上のボトルネックはどこか」といったテーマで、ファクトに基づいた顧客理解を深めていきました。

株式会社プレイド Sales&Origination Sales Manager 内山正信氏
株式会社プレイド Sales Manager 内山正信氏

塩谷:これまでも、ビューティコンサルタント(美容部員、以下BC)やECメンバーは研修を通じて「DECORTÉ」というブランドへのインプットを受けていました。しかし、お客様の反応や行動をデータとして可視化し、ブランド作りへフィードバックするサイクルは十分ではありませんでした。

 今回の取り組みでデータという客観的な裏付けが加わったことで、「どのお客様に、どのような提案をすべきか」というコミュニケーションの解像度が飛躍的に高まったと実感しています。

内山:もう一つ、ブランドのクレド(信条)に基づく「Web接客のアセスメント」の作成も支援しました。たとえばWebサイトのポップアップは、タイミング次第では押し売りに感じられてしまうこともあります。店頭の接客と同じように、「誰に、何を、いつ、どのように」情報を届けるかを設計し、ブランドが大切にする価値観をWeb接客に反映させることが重要です。

塩谷:我々が最も重視しているのは、すべてのタッチポイントでブランドのあるべき姿を再現することです。多くのお客様にご満足いただけている店頭での体験を、そのままWebサイトの世界観に落とし込み、ブランドらしい体験の提供場所をさらに広げていきたいと考えています。

仮説が確信へ。データがもたらした社内の変化

MZ:プレイドによる顧客分析で、具体的にどのような発見がありましたか?

塩谷:お客様のことを、これまで以上に深く、そして明確に理解できるようになったと感じています。まず、自分たちが立てた顧客戦略が正しかったのかを、データで検証できました。

 たとえば、「ECと店舗では購入サイクルが違うのではないか」という仮説がありました。分析の結果、ECでは多くのお客様が2回目の購入までに50日、店舗では60日かかることが分かり、ECの方がリピートまでの期間が短いことがデータで証明されたのです。

 さらに、2回目の購入までの期間によって、お薦めすべき商品が異なることも明らかになりました。90日以内に再購入するお客様には初回とは“違う商品”を、90日を超えたお客様には“同じ商品”をお薦めする方が効果的だという傾向が見えてきたのです。

 もう一つ、勉強会でN1分析(一人のお客様を深く分析する手法)をしていて、面白い発見がありました。

 年間購入金額が約10万円、サイト訪問回数も20回以上という、弊社の顧客セグメント上「ロイヤル顧客」に分類されるお客様に関する発見です。購買履歴を見ると、1年間のうち5回購入されていて、うち4回は百貨店、最後の1回がECサイトでした。これだけ見ると「百貨店メインで、最後にECを使ったお客様だね」と認識できますが、顧客行動をより細かく読み解くと、百貨店に行く日の前日は必ずECサイトを閲覧していたんです。購入予定品の下見をされていたんですね。

 お客様の行動をそこまで細かく可視化されると「なるほど」と。そこで、「ECサイトを見てから百貨店に来訪するお客様は、ロイヤル顧客につながりやすい可能性があるね。だったら、その方に対してより適切な接客ができるような施策を考えた方がいいよね」といったことを議論しました。N1分析により解像度が上がり、「じゃあ次に進めよう」という勇気をもらえましたね。

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N1分析で「ロイヤル顧客」の理解を深める(クリックすると拡大します)

塩谷:この変化は社内にも大きな反響を呼びました。普段こうした分析レポートを直接目にしないメンバー、たとえば商品の情報をマニュアルに落として店頭のBCに伝える教育担当にもインプットしたところ、「顧客データを見ることで、お客様への理解度が格段に上がった」というフィードバックが寄せられています。データが部署間の「共通言語」となり、より具体的で活発な会話が生まれています。

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前年比二桁成長!マーケティングの主役を「お客様」に変えた成果

MZ:KARTEを使った具体的な施策について教えてください。

塩谷:たとえば「リポソーム アドバンスト リペアセラム」のトライアルキット販売でKARTEを活用しています。初回購入から2回目のサイト訪問、そしてリピート購入に至るまで、お客様一人ひとりの行動に合わせてメールやLINEを最適なタイミングで配信し、一気通貫したコミュニケーションを実現しています。

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トライアルキット購入者へのステップメール配信イメージ

 また、年間購入金額と回数を軸に顧客を5つのセグメントに分類し、新規顧客からロイヤル顧客へとステップアップしていただくための育成シナリオを設計しています。顧客のステージが変わる瞬間に、Web接客などを通じて最適なアプローチを実行しています。

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コーセー流の「顧客育成マップ」で顧客像を共通言語化(クリックすると拡大します)

内山:一般的な分析ツールは「今月は〇〇%のお客様がトライアルキットを購入した」という事実を示すにとどまります。しかしKARTEは、その分析対象となった〇〇%のお客様“だけ”に特別なメールを送ったり、サイト再訪時に限定の情報を表示したりと、分析からアクションまでをシームレスにつなげられるのが強みです。

MZ:導入による成果はいかがでしたか?

塩谷:定量面では、この仕組みの活用も加わって、2024年度のEC売上成長率が前年比二桁成長と、事業に大きなインパクトをもたらしています。今期も既に昨年を上回る売上目標をクリアしており、成長はさらに加速しています。

 そして何より大きな変化は、マーケティングの主役が「お客様主導」に変わったことです。これまでは「商品を買って欲しいからメールを送る」「今買ってほしいからポップアップを出す」という側面が少なからずありました。しかし今は、これまで難しいと考えていたお客様の行動に合わせた施策がECでも実現可能になりました。お客様の体験に寄り添ったコミュニケーションが取れるようになったのです。

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MZ:顧客を主役にしたことで、素晴らしい体験が生まれて成果につながっているのですね。こうした「DECORTÉ」の事例を通して、多くの企業が参考にできる事業成長のポイントについて、伴走されたプレイドの内山さんからご解説いただけますか。

内山:そのブランドにとってベストな形で、いかに顧客理解を深められるかに尽きます。業種や業態によって、お客様の商品利用実態やブランドとの関わり方はまったく異なります。だからこそ、データから得られた顧客理解に基づき、お客様がブランドをより深く愛してくださるための体験とは何かを見極めることが重要です。現状と理想の体験とのギャップを施策で埋めていくことこそが、事業成長への一番の近道だと考えています。

デジタルとリアルの融合で、顧客体験はさらに進化する

MZ:最後に、今後の展望についてお聞かせください。

塩谷:今後はKARTEを活用し、広告も含めたすべてのタッチポイントをシームレスにつなげていきたいです。また生成AIと顧客データを組み合わせ、よりパーソナルなコミュニケーションの実現も目指しています。

 私達は、デジタルによる自動化が進むほど、BCによる“人ならでは”の接客の価値は、むしろ高まっていくと考えています。日常的なケアのご提案はデジタルが担い、店頭では温かみやサプライズのあるコミュニケーションを提供する。こうした役割分担によって、お客様にとってさらに満足度の高い顧客体験を実現できると信じています。

内山:KARTEをカスタマーデータプラットフォームとしてさらにご活用いただけるよう支援を続けていきます。Webの閲覧履歴はもちろん、店頭での接客履歴といったあらゆる顧客情報を蓄積し、リアルタイムに活用できるのがKARTEの強みです。膨大なデータをどう組み合わせ、どんな示唆を得て、いかに最適な情報をお届けするか。これは非常に難易度の高い挑戦ですが、我々プレイドがお客様の期待を超える提案と伴走支援で、その実現をサポートしていきます。

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この記事の著者

和泉 ゆかり(イズミ ユカリ)

 IT企業にてWebマーケティング・人事業務に従事した後、独立。現在はビジネスパーソン向けの媒体で、ライティング・編集を手がける。得意領域は、テクノロジーや広告、働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:株式会社プレイド

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2025/09/26 10:00 https://markezine.jp/article/detail/49689