(4)エンターテインメントとの融合:Samsung「The Mind Guardian」

アルツハイマー病は、55歳ごろから初期兆候が現れることがあり、早期発見により生活の質を最大10年延ばせる可能性があります。しかしスペインでは、初期段階の患者の約80%が未診断であると言われています。
そこでSamsungは、革新的なアプローチを取りました。その名も「Mind Guardian(マインド・ガーディアン)」。このゲームは、オープンワールドの仮想都市を旅するフォーマットで、プレーヤーの行動をAIがリアルタイムで分析。3つのミッションを通じて2,000以上の行動パターンを読み取り、小脳・海馬・側頭葉といった脳の重要な領域に基づいた「認知マップ」を構築します。その結果、アルツハイマー病やその他の神経疾患の初期兆候を、なんと97%の精度で検出できるのです。
このゲームは、従来の堅苦しい検査とは違い、ユーザーが「やってみたい」と思えるような楽しい体験として設計されています。いわば、認知機能のチェックを“遊び”に変える、ゲーミフィケーションの力を活かした新しいアプローチです。
健康管理をエンターテインメントとして浸透させる試みは多くなされています。

たとえば「Memento Beer(メメント・ビール)」は「ビールを楽しむこと」と「アルツハイマー病予防」という、これまで結びつかなかった2つの価値を融合させたノンアルコールビールとして注目されています。ポリフェノールを豊富に含む4種類のホップを使用し、抗酸化作用によって脳内の酸化ストレスを軽減し、アルツハイマー病の進行に関わるベータアミロイドたんぱく質の凝集を抑える効果が期待されています。生活を潤わせつつ「社会に貢献する選択肢」として、新しいクラフトビールの可能性を切り拓いています。
他にも、プロテインヨーグルトブランド「YoPro」は、競争の激しい市場での差別化を図るため、ブラジルでフィットネス愛好家やアスリートを対象にユニークなキャンペーンを展開しました。そこで注目したのは、音楽とワークアウトの深い関係性。神経科学とAIを活用し、オリジナルのワークアウトトラック「Energy Beat」を開発。音楽を通じて集中力やパフォーマンスを引き出すという、まったく新しいアプローチが話題を呼びました。
このように、エンターテインメントは、今やウェルネスの視点から再定義されつつあります。 ストリーミングプラットフォームや音楽、映像コンテンツなどが融合し、健康や教育に関する情報を誰もがアクセスできる形で提供することで、健康格差の解消にも貢献しています。
まとめ:ウェルネス=文化の時代へ
ライフサイエンスの進化は、私たちの健康観や暮らしのあり方を根本から変えつつあります。治療や予防にとどまらず、感覚の拡張、パーソナライズされた体験、家庭での医療的サポート、そしてエンターテインメントとの融合まで、健康はあらゆる分野と結びついています。ウェルネスと生活者の関係はさらに深まり、ウェルネスそのものが“文化”として根付く時代が到来しているのでしょう。
この新しい領域はブランドにとって大きな機会となっていくと考えており、テクノロジーの進化ともに、どのような新しいブランド体験が生み出されるか、注目していきたく考えています。