楽天、第4の挑戦は「AIの民主化」 AIで未来の購買者の予測まで可能に
楽天は、「ECの民主化」「フィンテックの民主化」「携帯電話市場の民主化」に続く第4の挑戦として「AIの民主化」を掲げている。「全ての楽天社員がAIを使いこなせるように」という方針のもと、マーケティング/オペレーション/クライアント効率を20%向上させる「トリプル20」の目標が掲げられているそうだ。
「まずは社内でAIを使い倒す。その上で、お客様のマーケティング現場でも役立つ形で、楽天のAI技術を提供しています」(林氏)
講演では、楽天のAI技術を活用した2つのソリューションが紹介された。
圧倒的なデータ量からAIが購買傾向を導き出す「SQREEM」
「SQREEM」は、AIによる行動パターン分析技術を用いた運用型の広告アセットである。旧来の手法では扱えない膨大な量のデータをAIに分析させ、人間の行動パターンを抽出する独自の手法が用いられている。
具体的には、「SQREEM」が作成したペルソナと、主要メディアの配信セグメントを紐づけて、ウェブ広告のパフォーマンスを向上させる。この時、「SQREEM」が選定するセグメントは、人間の勘や経験、想像を大きく超えてくるという。
たとえば、ウォーターサーバーの広告を配信する時、読者ならどのようなセグメントを選定するだろうか。美容や健康に関心がある人をターゲットとし、サプリメントや美顔器などの購買者からセグメントを選定するかもしれない。
ところが、「SQREEM」が選定したセグメントでは、「教育」に関心のある人がターゲットにされていたそうだ。人間の理解を超えてくるセグメントではあるが、実際に配信してみると、下図のようにCPAが15%も改善したという。

「教育というキーワードでウォーターサーバーの広告配信のセグメントを作成する――これはなかなか人にはなかなか思いつかないキーワードです。SQREEM では、人が思いつかない切り口で、本当の潜在層にリーチすることができます」(林氏)
近い将来CVするユーザーを予測する「未来購買予測」
続いて紹介されたソリューションは「未来購買予測」。近い将来CVする確率の高いユーザーを予測し、広告を配信することができる。
方法としては、楽天が蓄積するデータと、広告主が蓄積するデータを機械学習にかけ、CVする可能性の高いユーザーをAIでスコアリング。スコア上位を配信リスト化して、楽天内外の媒体で広告配信に活用する。
AIはどのようなデータを学習させるかが肝心だが、未来購買予測の場合はCVユーザーと非CVユーザーのデータを収集し、学習させている点がポイント。学習用の自社データが少ない場合も、楽天の保有データだけで学習・配信まで実施できるメニューが用意されている。

たとえば、「未来購買予測」を活用し、近い将来不動産を購買する可能性があるユーザー層を分析すると、「成約の約3年前から子育て関連の商品を購入している」「成約月の前後7ヵ月で家電や家具の商品検索をしている」といった傾向が明らかになる。
住宅は展示場来訪の前にウェブ上で候補がほぼ絞られてしまうため、“顕在”の一歩手前にいる潜在層をいかに捉えられるかが重要だ。「未来購買予測」なら、近い将来の不動産購買者を予測することができる。

実際に、食品メーカー、美容業種の企業が「未来購買予測」を活用した時には、下図のような成果が出たと言う。

林氏は、「未来購買予測」を活用する時のコツとして「全セグメントに一律で投下するのではなく、CVスコアの高いセグメント、言わば“甘い部分”だけを先に試す方法がおすすめです。試験的に配信し、効果を確認してから、段階的に配信を拡張していくとよいと思います」とアドバイスする。他にも、CVスコアにデモグラフィックデータを掛け合わせ、ターゲット別に投資配分を調整すれば、自社の事業戦略に基づき中長期で顧客を育成していくこともできるだろう。
マーケティングでは、LPの設計や広告媒体の選定・運用、効果検証、クリエイティブなどに関して、Howの議論が活発に行われている。しかし、誰に広告を届けるかという「Who」の部分はあまり議論されていないのではないかと、前田氏は指摘する。
これまで深く考えられてこなかった「Who:ターゲティング/セグメントの設計」にこそ、広告成果をさらに改善できる可能性があるかもしれない。
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