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マーケター必読!論文のすすめ

5つの論考を通して見る、生成AIの可能性と現在地~広告活用から信頼構築、人との協働まで~【論文紹介】

生成AIで作られるバーチャルインフルエンサーは広告において有効か?

 最初の2つの論文は、消費者を対象とした生成AIに関する研究です。いずれもとても興味深いことに、「擬人化」を一つの重要な概念として捉えています。擬人化とは、受け手によって、ロボットのような機械、ブランド、動物、そして生成AIなど人間以外の存在についても、人間のような特徴、行動、または精神状態が付与されることを意味します。生成AIの可能性は、人間的ということにあるのかもしれません。生成AIについて、それを人間のように見なす人々は少なくないでしょう。

 近畿大学牧野耀准教授、中京大学小倉優海助教、広島修道大学厳秀延助教の「生成AIが作成した広告キャラクターが消費者の広告評価に及ぼす影響(英文・全訳付)」では、生成AIが作成した広告キャラクターが消費者の広告評価に及ぼす影響を考察しています。本特集では最もスタンダードな消費者行動の実証研究であり、消費者の生成AIに対する理解をどのように捉えればよいのかがわかります。

 彼らは、バーチャルインフルエンサーに関する既存研究を基に、バーチャルインフルエンサーを生成AIで作成します。既存研究では、バーチャルインフルエンサーは実用財との適合度が高く、快楽財においては人間のインフルエンサーのほうが好ましいと指摘されてきたといいます。

 これに対して、彼らの論文では、特定の快楽財を対象にして擬人化傾向が高く、製品知識が高い消費者においては、バーチャルインフルエンサーが有効になることが示されます。彼らは、バーチャルインフルエンサーと快楽財は適合度が低いとする従来の知見に対して新たな知見を提供するとともに、快楽財におけるバーチャルインフルエンサーの効果的活用に向けた実務的示唆を提示しています。

人と信頼を築く「感情AI」のマーケティング活用への示唆

 続く東海大学 小谷恵子准教授の「感情AIとの関係が自己の情報開示に与える影響 ― 旅行プランニングにおけるAIの活用 ―」では、生成AIは、ユーザーの感情を理解し、共感や配慮を表現する能力を備えた感情AIだと考えられています。人は、生成AIの振る舞いに親密さや擬人化を感じ、信頼関係を構築しようとするのです。

 本論文では、生成AIによる旅行プランニングのケースを用い、生成AIとの関係性と自己開示の意向について3つの点を指摘しています。第一に、人は生成AIが感情に対応できると知覚することで、AIとの親密さ、擬人化、信頼を感じます。第二に、感情AIとしての認知の高さは、親密さ、擬人化に加え信頼に影響し、第三に、生成AIに対して行動より感情の開示意向が高くなる傾向があります。

 感情AIとしての生成AIは多様なサービスへの応用が可能であり、消費者に対する新たなマーケティングが示唆されています。

次のページ
「AIペアプログラミング」から考察する、人と生成AIの協働の形

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この記事の著者

水越 康介(ミズコシ コウスケ)

 東京都立大学経済経営学部教授。2000年神戸大学教務経営学部卒業。2005年同大学院博士後期課程修了。博士(商学)。2005年より東京都立大学(前首都大学東京)。専門はマーケティングで、デジタル・マーケティングやソーシャル・マーケティングを研究。日本マーケティング学会(マーケティングジャーナル シニアエディター)...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/11/17 09:00 https://markezine.jp/article/detail/50005

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