名前は知られているのに選ばれない……「ahamo」が直面した停滞期
MarkeZine編集部(以下、MZ):今回は、NTTドコモと電通デジタルが展開した「ahamo」のお取り組みについてうかがっていきます。まず、実施背景や課題感を教えてください。
高嶋:ahamoは、2021年3月に提供を開始したZ世代向けのモバイルサービスです。新社会人の方を主なターゲットとして、シンプルでわかりやすい価格設計で展開しています。
取り組みの検討を始めたのは2023年頃です。当時はahamoのリリースから約2年半が経過したタイミングとなり、リリース初期に比べると検索ボリュームやサイト訪問数、獲得効率が落ちている状況でした。他社が同様の価格帯のプランを次々と展開していたことなども影響し、契約者数の伸びも鈍化していました。

モバイルマーケティング担当 高嶋紘基氏
マーケティング推進部モバイルマーケティング担当として、「ahamo」「ドコモ MAX」「ドコモ mini」などの契約者拡大に向けた販売促進を担当する。
高嶋:特に「ahamoという名前は知っているけれど、自分に合うプランなのかわからない」というユーザーの声も多く、顕在層だけでなく潜在層へのアプローチが重要だと感じていました。そこで、顕在層向けの施策は継続しつつ、興味・関心を喚起するミドルファネル施策へ着手したいと考え、電通デジタル社に相談しました。
“認知と獲得の乖離”をつなぐ「ブランデッドダイレクト」な戦略とは
MZ:課題を解消するために、どのように施策を設計されたのでしょうか。
河上:ブランドネームの認知が高い一方で、契約意向が顕在化していないことが獲得に結びついていない理由なのではないかと予想しました。そこで、認知と獲得の間に生じていたコミュニケーションの乖離をなくし、ahamoへの興味喚起を図ることに。その上で、顕在予備軍の母数を増やせば、獲得効率が上がると仮説を立てました。
そのためには、ターゲットのエンゲージメントを高め、モチベーションを上げることが重要です。広告接触からCVまでの体験をより豊かに、そして効率的に設計する「ブランデッドダイレクト」という手法が有効だと考えました。
具体的には、動画クリエイティブで興味を喚起し、LPで顕在層のパイを広げる構成です。継続的に接点を持つためにLINE友だち追加をKPIに設定し、中長期的な獲得効率の向上を狙ったコミュニケーションプランとして設計しました。
株式会社電通デジタル アドバンストクリエイティブセンター
ブランデッドダイレクトクリエイティブ第2事業部 河上奈央氏
クリエイティブに加え、プラットフォームやデータテクノロジーを活用しながらクライアントの事業成果と収益最大化を支援する組織「アドバンストクリエイティブセンター(ACRC)」に所属。クリエイティブディレクターとして認知領域を軸にフルファネルやアクティベーション施策を設計し、クライアントのビジネス課題解決に取り組む。
MZ:ブランデッドダイレクトについて、詳しく教えてください。
河上:当社が提唱している、ブランディングとダイレクトマーケティングを掛け合わせた考え方です。まず、「獲得」「認知」といった分離しがちな施策を一つのカスタマージャーニーとして捉えます。広告接触の段階からターゲットのモチベーションを上げ、エンゲージメントを築き、その結果として、最終的に購買意向が高まる状態を作ります。

河上:ブランデッドダイレクトを実現する具体的な手段は様々ですが、今回はZ世代がahamoのターゲットだったため、親和性の高い縦型動画からLPへつなぐ流れを採用しました。

