企業ブランディングにおける3つの障壁
前編では、企業ブランディングの方向性を検討する「方針策定フェーズ」におけるポイントとして、企業ブランディングの目的と自社が目指す姿を明確化する方法や、そもそも企業ブランディングが目的を達成する手法として適切かも含めて問い直すことの重要性をご紹介した。後編となる本稿では、実際に企業ブランディングを推進していく「実行フェーズ」におけるポイントを解説していきたい。
弊社の過去支援事例を振り返ると、企業ブランディングの実行に際しては、多くの企業が以下の3つの障壁に直面していた。
- 障壁1:何をKPIにすべきかわからない/目標水準がわからない
- 障壁2:なかなか効果が出ない
- 障壁3:PDCAサイクルが回らない
それぞれの障壁の内容と打開策について、順番に解説する。
障壁1:何をKPIにすべきかわからない/目標水準がわからない
第一の障壁は、活動の成果を定量的に観測するための適切なKPIと、その目標水準が設定できないというものだ。
前編で解説したとおり、企業ブランディングは、自社が目指す姿に基づいてブランディングを行い、目的として設定した「行動」を取ってくれるステークホルダーを増やしていくのが定石である。もちろん、この「行動」自体を計測できる指標をKPIに設定してもよいが、「行動」は必ずしもすぐに起きるわけではない。また、ブランディング活動以外の影響も受けてしまうことも多い。このため、「行動」自体を計測できる指標をKPIと設定しても、適切に評価ができないといった難しさがある。こうした理由から、「企業ブランディングがうまく進んでいるかを判断できる適切なKPIをどう設定すれば良いかわからない」といった声が多い。
また、適切なKPIを設定できても、妥当な(=実現可能かつ挑戦的な)目標水準を設定することにも難しさがある。
KPI設定の鍵は、ステークホルダー行動プロセスの「断面」を見極めること
KPIの設定において重要なのは、ステークホルダーが最終的な行動に至るまでのプロセスを分解し、計測すべき「断面」を見極めることである。これは、ステークホルダーが情報を得て、態度を変え、行動に移すまでの間で、自社のブランディング活動がどの段階において最も影響を与えうるのかを特定することを指している。ステークホルダーの行動パターンが複雑化する現代において、この「断面」を正しく捉え、定量的に把握することが、KPIを適切に定めるための第一歩となる。
目標水準は、自社の状況を踏まえ、4つのパターンのいずれかで検討する
KPIの目標水準を設定する際には、代表的なパターンを知っておくことが有効だ。
水準の決め方は、(1)自社の過去スコアを維持・上回る、(2)業界トレンドより伸長させる、(3)特定の競合に近づけるか逆転する、(4)順位を維持または逆転する の4つが存在する。自社が置かれた状況ごとに、目標水準を設定するために適した方法は異なるため、3C分析などによって自社が置かれた環境を正確に把握し、実現可能性を考慮して最適な目標を設定することが重要だ。
