X上で話題化する、共感の得られる動画のポイントとは?
――X上の実際のポストからエピソードを集め動画を企画・制作したとのことですが、どのように構成を組み立てましたか。
三浦:ポストやそれに対する反応で一番多く目についたのは「子供に隠れてのつまみ食い」だったので、動画の中でも一番象徴的なエピソードとして最初に入れました。
――Xを起点にしたコミュニケーションということで、ユーザーの会話を生み出すことが重要だと思いますが、会話のきっかけとなるような仕掛けはありますか。
三浦:動画を通じて話題を提供する感覚をとても大事にしました。最初に「こういう話をするけど、興味ある?」という問いをしっかりと提示した上で見てもらった方が、見た人がそれに対して思うことを投稿に込めやすいと考えたからです。
具体的には投稿文に「皆さん、こういうことありませんか?」と問いかけを入れ、ユーザーがどうリアクションしていいのかをわかりやすくしました。
中川:リーチの話と会話の話は表裏一体で、対立すべきものではありません。Xをリーチの面として見ていただくのは有り難いですし、そこもXの強みではありますが、そのリーチ効果を最大化したり、逆にリーチをさらに獲得できるのがXの最大の強みである「会話」の力です。今回は、Xの広告のルール改定などもありご心配をおかけしましたが、実際にはコンテンツそのものを引用ポストする形で意見を表明してくれるという、理想的な会話の生まれ方を見直すきっかけになりました。
当事者以外の人も楽しめる要素が会話を広めるには必要
――若杉様は、今回のクリエイティブのどういった点が優れていると感じられましたか?
若杉:私自身は子育ての経験がないのですが、三浦さんの考えてくださった企画が素直におもしろくて。同時に、この企画がXに投稿されたときのお客さまの反応がとてもよく想像できましたし、「わかる、わかる、分かりみが深い」という共感の輪ができそうだと確信できてしまう力があったように思います。三浦さんご自身のターゲット解像度が高かったおかげだと思います。
三浦:当事者のインサイトを深くつくことは大事ですが、その人に向けてだけ作ってしまうと、当事者以外の人が見たときに置いていかれた印象を持たれて、ブランドとの距離が生まれてしまいます。若杉さんのように、当事者以外の方が「おもしろい」「可愛らしい」と好意的に受け取ることができることが、会話を広げる上で非常に大切だと感じています。
若杉:また、動画の構成においても、いわゆるあるあるネタの連打だけでも十分おもしろく成立していたのですが、三浦さんと監督が最後に「一番は君なのです」と、お子様に向けたセリフを加えてくれたことで、企画がすごく骨太になりました。
中川:ママたちが「疲れた」と言う一方で、心の奥底で「でも本当は嫌じゃない」という皆まで言わない気持ちを、ブランドが言語化してくれたことに価値がありました。単なる「あるある集」ではなく、その先の感情まで入っていたことで、骨太な動画になったのだと思います。
――動画のリーチ数ではなく、動画を見た後のユーザーのアクション(リプライ、引用ポストなど)を増やすために、他にどのような工夫をしましたか?
三浦:一つは、投稿文での投げかけをすることです。それに加えて、今回はインフルエンサーも起用し、話題化の火付け役になっていただきました。「夜、忍者のように抜け出す」というエピソードに共感してもらえる実際ママである漫画家さんに、「うちもこうしています」と関連した漫画を書いてもらい、動画とセットで投稿してもらいました。

――Xの中川さんから見て、今回の取り組みで読者の方に参考になるポイントはどこだと思いますか。
中川:この取り組みは、多くの広告主や制作者のみなさまでも参考にできるポイントが多いと思います。まずXに数多ある声の中からブランドのメッセージと地続きになるインサイトを捉えてストーリーに落とし込むのは定石ですが、この事例のすごさは、最初に「こっそりつまみ食い」など、最も強いアイキャッチになるエピソードを持ってきて、「何これ、私の話?」と思わせて最後まで見せきった点です。
これは、インサイトをどう使っていくかという上級編のテクニックであり、アイキャッチを言葉ではなくストーリーで作り上げた部分が、Xで動画をフックにする際に非常に参考になるポイントだと思います。

