ローンチ週の売上が2桁増に!X起点の動画が実現した成果
――今回の施策によってどのような成果が得られましたか。ブランドリフト調査の結果を踏まえ、教えてください。
中川:今回のキャンペーンは非常に高い数値を記録しました。広告に「接触したユーザー」と「接触していないユーザー」の広告・キャンペーン認知、購入意向を比較するブランドリフト調査を実施したところ、すべての数値が大きく向上しました。
また、特にエンゲージャー(広告に対しリポストやいいねなど反応した人)や動画視聴者のリフト値は高く、他社と比較しても驚異的な数値でした。
今回の調査によって、「キャンペーン認知:Xのタイムライン上に数多あるポストの中で目を止めてもらう突破力」「購入意向:その広告で製品を買いたいと思わせる説得力」の2つが明らかになりました。キャンペーン認知がなければ、購入意向の増加にはつながりません。また、キャンペーンが認知されても、購入意向が上がるとも限りません。
今回の施策でキャンペーン認知と購入意向が両方向上したのは、「コーヒーくらいゆっくり飲みたい」というインサイトを動画のストーリーに反映したからです。その結果、ターゲットが「私のことかも?」と自分向けであると感じて動画を視聴し、購入意向を持つにまで至ったと言えます。
中川:定性的な視点での評価としても、ポジティブな声が非常に多く、「広告と気づかずに見ていた」「素敵な広告で最後まで見てしまった」という声がありました。また、商品について言及を促していないにも関わらず、商品に対するポジティブな言及がリアルに多かったことも素晴らしい成果だったと言えます。
――これらの成果を、サントリー様ではどのように評価されていますか。
若杉:X上の投稿を見てポジティブなコメントが多く、幸せな気持ちになっていました。また、商品に関する言及が想定以上に多かったこと、そしてローンチ週の売上が2桁増で伸びていたことなど、成果が出て本当によかったと思っています。
コミュニケーションの先にある「反応設計」が重要
――動画広告を通じてX上で会話を生み出すために、企業が絶対に意識すべき「ルール」や避けるべきことがあれば、アドバイスをお願いします。
三浦:今回のような実体験に近いエピソードを起点にする場合、エンタメに振り切るか、リアルに忠実にすることで共感を得るかの二極化を徹底すべきです。その中で最もダメなのが中途半端になることです。
リアリティを追求するとはいえ、おもしろくするためにオーバーにやりすぎると、途端に「そんなことないわ」とユーザーから突き放されます。「あってもおかしくないけどおもしろい」という絶妙な範疇を見極めることが非常に重要です。
若杉:私からは、ターゲットのことを考え抜いた上で、最後まで「わかった気にならない」ということを徹底するのが大事だとお伝えしたいです。仮に自分が当事者だったとしても、様々な価値観の方がいます。第三者にもクリエイティブを見てもらい、世間の空気とずれていないかをチェックする作業は不可欠です。
また、X は他のプラットフォームに比べても会話が生まれやすい媒体なので、「お客さまにどのように反応・発話してもらうか?から逆算した投稿・情報設計」がとても重要だと感じます。サントリー社内ではそれを「反応設計」と呼んでいます。
――今回の施策をきっかけに、今後さらにXの動画広告でチャレンジしてみたいアプローチなどはありますか?
若杉:今回の企画のように、お客様の実体験や記憶を起点にした企画を色々試してみたいなと考えています。
ロングセラーの商品には、お客様との間に“思い出”のようなものが存在しますが、割るだけクラフトボスカフェのようなまだ若い商品にはまだそれが十分にはありません。そのため、どのように絆を構築していくべきかがとても難しいのですが、今回の施策からは新しい絆を構築する切り口を見出せた気がします。たとえば、今既に割るだけクラフトボスカフェを愛飲してくださっている方の熱量や使いこなし方を起点に、もっと認知や興味喚起を広げられるような方法を模索していきたいです。
三浦:広告は「とにかく目立つ」ことが求められていますが、今回は実際のエピソードを起点に広告を作ることで、「共感の輪を広げる」という役割を果たすことができました。今後も「目立つ」以外の役割での企画をクライアントに提案したいです。
中川:先ほどお話ししたブランドリフト調査でもまさに、「目立つ」ことではなく、「私のことかも?」と感じてもらうことがX上でユーザーの目に止まることにつながったという結果も出ていますよね。インサイトに裏付けされた「共感」がタイムライン上で「目立つこと」と同じ効果、もしくはそれ以上の効果をもたらしているのだと思います。
マス広告を制作してからその素材をデジタルに展開するという従来型のステップではなく、オリエン時からメインのクリエイティブの制作段階までもXの声に丁寧に寄り添い、発話が生まれるアウトプットを作っています。結果、Xのスーパーパワーであるユーザーの声とブランドが共鳴する先進的な事例になりました。
Xにおける動画広告は、プランニング上メディアプランの最後のほうに着手される広告主様もまだ多いかと思いますが、ぜひ、今回のサントリーさんの事例のようなXをプランニングの拠り所とされる動画広告がもっともっと増えることを楽しみにしています。

