SNSを購買の場へ進化させる「ソーシャルセリング」の仕組み
──両社のお取り組みをAIQ様はどのようにご支援されていますか?
今井(AIQ):我々が提供しているのは、SNSを「認知の場」から「購買の場」へと進化させる「ソーシャルセリング」の仕組みです。
今井(AIQ):支援内容は3つあります。1つ目が、個の力の可視化とマッチングです。「プロファイリングAI(独自AI特許技術)」でスタッフの個性を分析し、「誰から買いたいか」を重視する消費者に合わせ、最適なスタッフとお客様をマッチングさせます。
2つ目は、SNSの投稿状況や投稿内容の管理、ナレッジシェアのためのツール提供です。
3つ目が、組織運用の伴走支援です。たとえば資生堂ジャパン様から、プロジェクト開始時に「1年で5,000人規模のSNS体制を作りたい」とご相談いただきましたが、私は「まずは熱量の高い300人から始める」ことをご提案しました。上から指示されて行う「やらされ仕事」では、SNSの熱量は伝わらず成果も出にくいからです。現在は、少数精鋭で生まれた成功体験をPBP全体に広げることを目指しています。
この組織定着・運用支援が、我々の最大の提供価値です。SNS投稿ルール作成、炎上対策、投稿・撮影方法のレクチャー、インセンティブ設計、マネジメント支援なども、各社の課題に合わせて幅広く行っています。
これら3つを組み合わせることで、個人のモチベーションやリテラシーに左右されずに、組織としてSNSを売上につなげる体制構築が可能となります。
テクノロジーで、販売スタッフの個の力を可視化し磨き上げ、組織力に昇華
──パルでは、販売スタッフの個の力を組織力にするために何を重要視されていますか。
堀田(パル):10年以上前から徐々に仕組みを作ってきた中で、重視しているのは「教育(ノウハウ提供)」「評価制度」「データ活用」の3点です。教育は、マニュアルの作成や研修の整備、教える人のブラッシュアップ、個人のスキルアップのための1on1や責任者同士の交流などです。評価制度は「会社が成果として認める」との意思表示です。スタッフのモチベーションと収入をアップさせるためにインセンティブを取り入れています。
そして、特にデータは最大限の活用が不可欠です。SNS運用でいきなりフォロワーを増やすのはハードルが高く、苦しい時間が続くものです。そのため、日々の「保存数が増えた」などのデータの変化に着目し、ステップを楽しみながら継続できるようにしています。
──資生堂ジャパンがPBPの個の力を組織力にする上で重視されていることは何ですか?
笹間(資生堂):弊社も大きく3点あります。1つ目は企業・ブランド・個人のアカウント総体としての「お客様とのつながりのストック(量と種類)」を増やすこと。これにより、顧客動向もわかるため、将来の組織の力になります。
2つ目は、つながりが生む「メディア価値」です。オムニPBPの年間約5,000投稿は、広告費に換算すると40~50億円ほどの価値があると試算されています。この力があるからこそ、生まれた小さなバズを、「オールウェイズオン」で火を消さずに持続させられるのです。
3つ目は、将来に向けた「DX/AIに手触り感のある社員の蓄積」です。自分で実際に投稿する経験を積んだ社員の増加は強みになります。かつてのパソコンやExcelのように、いち早く全員ができる状態にすることが、組織の力を向上すると考えています。
個人の力をAIで増幅するソーシャルデータの新たな価値
──AIQは、販売スタッフやPBPの個のセンスや個性、販売ノウハウ、熱量をどのようにサポートするのでしょうか?
今井(AIQ):SNSで得られたデータを、SNS以外で活用する取り組みにも一緒にチャレンジしています。たとえば、SNSの投稿内容からAIで個性を再現する技術を活用して、パルの販売スタッフの個性を反映したAIスタッフによる24時間接客の実証実験を、2023年10月に行いました。

堀田(パル):2週間の期間限定で実施したところ1万~2万の会話が発生し、実際に売上も上がりました。ただ、ChatGPTの普及でチャットへの慣れが進んだ今、その体験を超えていく必要があります。次の課題は、お客様のことをより深く知った上で、その方に本当に意味のある提案をしていくこと。スタッフが自分のAIを育てるほど、成果につながる仕組みが生まれるのが望ましいですね。
──そうした個の活動によって集まる「データ」をどう活用しているのでしょうか?
今井(AIQ):今、両社とチャレンジしているのは、スタッフの皆様のソーシャルデータを単なるフロー情報ではなく「資産」としてどう利活用していくか、という点です。
商品数が多すぎる現代では、商品で「第一想起」を得るのは非常に困難です。そこで重要になるのが、「誰から買うか」という視点です。
従来、SNSは「認知」を獲得する場とされてきましたが、我々はそこから一歩踏み込み「購買」までを完結させる「ソーシャルセリング」を提唱しています。これは、プロファイリングAIが、スタッフの個性や価値観を分析し「その商品の価値が本当に伝わる層」を特定して確実にリーチさせる戦略です。
たとえばアパレルなら、身長・骨格・パーソナルカラーなどの掛け合わせで自分の体型に似たスタッフに相談したいニーズが存在します。企業がマス広告で「この服は素敵です」と画一的に伝えるよりも、AIでマッチングされた自分と似た特徴を持つスタッフの提案のほうが、お客様にとっての「唯一無二の正解」になり、納得して購入いただけるはずです。
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今井(AIQ):このように、スタッフの「個」の力をAIで最大化し、SNSを「重要な売上創出チャネル」へと進化させられることが、我々AIQの強みです。
この「個性」のデータを資産として、広告やエージェント型ECなどで利活用するチャレンジを堀田さんと一緒に進めています。ソーシャルデータ分析は「誰が」「なぜ」それを利用しているのかが非常にわかりやすいのがポイントで、私としては、ここをもっと磨いていきたいですね。
──データ活用において、現場ではどのような実感がありますか?
堀田(パル):我々本部は、データを整理して現場に伝えるだけ。お客様に喜んでもらえるアイデアの発想は、現場スタッフのほうがよほど上手ですから。さらに、テクノロジーの進化が加われば、本質的な顧客との深いつながりがきちんと構築できる時代になると感じています。
今井(AIQ):我々も同感です。アルゴリズムをハックして、テクニカルなところで視聴完了率を高めてビューが伸びても、視聴者はそのブランドに良い感情は抱かないでしょう。目先のバズより「本質を見失わない」ことを支援する側としても気を付けています。

