SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

直近開催のイベントはこちら!

MarkeZine Day 2026 Spring

MarkeZine Day 2025 Autumn

「人を動かす」とは何か? 電通・佐藤真木氏が説く、感覚を「型」で捉えるインサイト発掘術

インサイトを“育てる”思考の「型」、出世魚モデルとは?

 では、この「裏側」から考えるアプローチは、どう実践すればよいのか。その実践の型となるのが、佐藤氏がインサイト探索の達人たちへのインタビューを重ね、インサイト発掘の思考を体系化した「出世魚モデル」である。

 「出世魚モデル」と名付けた理由を、佐藤氏は「インサイトは『見つける』というよりも『育てる』ものであるため」と語る。

画像を説明するテキストなくても可

 「インサイト=閃きと感じられる方も多いと思いますが、実際はだんだん育っていくものなんです。最初誰かが言ったボソッとした一言がどんどんどんどん成長していくイメージです。そして、その時の栄養源になるのが『対話』です」(佐藤氏)

 「対話」とは、会議での議論だけでなく、SNSのコメントやAmazonのレビュー、さらにはAIとの壁打ちまで、あらゆる定性情報とのやり取りを指す。

 「出世魚モデル」は、このプロセスを視覚化したものだ。日常で感じる小さな「魚卵(気づき/違和感)」が、「対話」という栄養の海の中で、「稚魚(疑問/問い)」、「幼魚(仮説/推論)」を経て、やがて高値で取引される「成魚(インサイト)」へと育っていく。「インサイトへと『育てる』ための思考の『型』」こそが、このモデルの核心だ。

 この「型」は、以下の5つの思考ステップが連鎖することで機能する。

【ステップ1】気づき/違和感:日常の中の違和感に目をむける

【ステップ2】常識/定説:その違和感が、どんな常識に対するものか把握する

【ステップ3】疑問/問い:常識の裏に隠れたホンネは何か?と問う

【ステップ4】仮説/推論:隠れたホンネを自分の納得いく言葉にする

【ステップ5】確認/検証:その自分の言葉を客観的に検証し、信じてもらう

 「『型』は一度覚えれば終わりというものではありません。技術の上達のために、絶えず立ち戻って振り返るものとして、この『型』を使っていただくことがインサイトの発見確率を上げる近道となります」(佐藤氏)

「ん!?」という違和感と、それが反する「常識」を掴む

 「出世魚モデル」の出発点、すなわち「魚卵」となるのが【ステップ1】気づき/違和感だ。佐藤氏は、インサイト探索は「感情」から始めるべきだと説く。

 特に重要なのが、日常で見過ごされがちな「ん!?」という微細な違和感やモヤモヤ、あるいは「ドロドロした感情、コンプレックス」といったネガティブな感情だ。

 「インサイトを探そうと思ってから行動したのでは、少し遅いです。勝負は日常から始まっているのです。日常生活で見過ごされがちな、自分の微細な感情の動きに、自覚的になることが、インサイトの発掘のスタートラインです」(佐藤氏)

 なぜ感情が動いた時に着目すべきなのか。佐藤氏は、感情は「予測誤差」が大きい時に発生するためだと説明する。脳は常に世界を「予測≒常識/定説」に基づいて判断しているため、その予測と現実との間にズレ(予測誤差)が生じた時に「驚き」や「違和感」といった感情が動く

 だからこそ、感情が動いた(=予測が外れた)時、その背景にある「予測≒常識/定説」を特定する【ステップ2】が不可欠となる。

 「インサイトは、常識という石の裏にある」と佐藤氏はいう。闇雲に探すのではなく、まず「常識/定説」という“目星”を明確にすることで、その裏側に隠れているインサイトを見つけやすくなる。

 また、このステップを怠ると、「大発見!と思ったのは自分だけで、あなたの気づきは、ただの無知のことも……」という罠に陥る。たとえば「世の中は『男は男らしく、女は女らしく』だと思っているかもしれないが、自分は『性別らしさにこだわらなくていい』と思う」という気づきが生まれたとしても、今やそれが「常識/定説」となっているため、インサイトへと育つ「気づき/違和感」にはならない。

画像を説明するテキストなくても可

次のページ
常識を疑う「問い」と、インサイトを「言語化」する技術

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • note
MarkeZine Day 2025 Autumn連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2025/12/02 08:00 https://markezine.jp/article/detail/50142

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング