オーディオ広告の独自価値が進化、リーチメディアとしても機能
MarkeZine:オーディオコンテンツのリーチ拡大にともない、従来のラジオ広告の価値も変わってきているのではないでしょうか?
千代反田:そうですね。元々、ラジオ広告の独自価値は「態度変容効果の高さ」にあります。ラジオ広告は「嫌悪感が少なく」「ブランドやサービスを好きになる」というような効果が強いと言われており、主にミドルファネルで活用されてきました。実際にビデオリサーチとエフエム東京の共同調査では、番組への貢献意欲・番組参加度が高いリスナーは、ラジオ広告で接触した商品・サービスに対する「情報検索や購買、利用意向」が、非リスナー層と比べて増加することがわかっています。
この「態度変容型」というラジオ広告のユニークネスに、リーチ拡大が結びつくことで、オーディオ広告が「認知型広告」としても機能するようになっているというのが近年の注目ポイントです。さらに、効果検証手法の進化により、店舗来店や購買といったローワーファネル(購入促進)のコンバージョンも可視化できるようになり、「獲得型」のチャネルとしても対応できる土壌が整ってきました。
効果検証も可能に。インクリメンタルリーチの高さに注目
MarkeZine:なるほど、オーディオ広告の効果検証では現在どのようなことができるようになっているのでしょうか?
安部:radiko、Spotify、ポッドキャストといったデジタル音声メディアでは、広告接触者データ(どのIDに広告が当たったか)を取得できます。これは博報堂のソリューション「Tele-Digi AaaS」を活用した例になりますが、radikoが持つ位置情報データやサードパーティの購買データ、アプリデータなどを組み合わせ、データクリーンルーム上でID突合することで、CVを含む効果検証が可能になっています。

また、地上波ラジオもradikoのデータをもとに拡大推計することで、アスキング(調査)ベースではなく、ログベースで効果測定ができるようになりました。
MarkeZine:ラジオ広告は効果検証に限界があると思っていましたが、そこまで進化しているんですね。効果が可視化されたことで見えてきた、オーディオ広告の価値はありますか?
安部:実際にデータクリーンルームを活用した事例では、先ほど千代反田がお話しした通り「アッパーファネル+ミドルファネル」の両方に効果があることが確認できました。オーディオ広告はオフスクリーンで消費されるため、テレビCMやYouTubeなどの動画広告を組み合わせることで新たなモーメントを捉えられるのではないか、という仮説のもと検証した事例です。
検証結果のポイント
・リーチ拡大の効果:動画で捉えられない層へのリーチ、つまりインクリメンタルリーチが高い結果に。OTT(動画ストリーミング)と比べて、オーディオ広告のインクリメンタルリーチは約10倍高かった。オーディオ広告は、動画広告では捉えられない層へのアプローチに有効であることが示された
・態度変容(ブランドリフト)効果:好意度や興味関心に加え、利用意向の指標が大きくリフト。音声独特の没入感によってメッセージがしっかり伝わり、態度変容に繋がったことが示された。
