数百~数千人規模企業における現実的な選択肢「直接API接続」
AIエージェント連携に注目が集まる中、見落としがちなのが従来から存在する「直接API接続」だ。MCPやA2Aが脚光を浴びているが、これらに頼らないAPI接続にも依然として大きな価値がある。
APIは長年の運用で培われた「成熟度」と「信頼性」「判断速度(遅延の縮小)」を備えており、「制御・防御の細やかさ」や「調整ノウハウの蓄積」がある。対して、MCPやA2Aのような汎用接続は「簡便で柔軟」な反面、攻撃リスクの温床にもなりやすい。
数百~数千人規模の中堅企業にとっては、AIのMCPやA2Aよりも、既存のAPI連携を磨き上げるほうが、企業全体で見た場合の総コストを抑えられる可能性も高く、安全性の観点からも堅実な戦略となり得る。特に、金融取引や個人情報を扱うシステム、あるいは規制対象業務など、機密性と即時性が求められる領域では依然として最適な手法だ。
AIエージェントの本来の目的は「人間を介さずに業務をAI自動化すること」だが、その裏側で、最終的な人間チェックという最も重要な安全弁が逆利用され、リスクを助長する可能性がある。MCPやA2Aといったプロトコルは、高速なAI連携に対応する一方で、それに見合う堅牢な自動セキュリティ機構をまだ十分に備えていない。
AIエージェント元年に備え、いまやるべきこと
統合型AIの不具合を自社でも経験してきたグローバル・コンサルティングファームは、その複雑性と経験値をレバレッジに「AIエージェント」の構築を新たな巨大商機と捉えている。従来のアドバイザリー中心のコンサルから、スケーラブルなAI製品・ソリューションの提供へと転換を進めている。
たとえば、大手コンサル企業によるAI投資(提携・投資・買収)は、2023年以降で100件以上確認された。技術アセットの獲得、データ基盤の構築、業界別の統合モデル設計が加速している(図表2)。またその基盤には、Microsoft・NVIDIA・Google Cloud・Anthropic・SAP・AWS・Salesforce・Oracleといったテックジャイアントとの連携パイプ網が広がる。
「AIエージェント元年」という楽観論と、「2025年はエージェント元年にならない」という慎重論が存在する。最大の懸念はAIの性能そのものよりも、データプライバシーやセキュリティ・ガバナンスであり、そのための「地道な基盤整備」が不可欠だ。
「船に乗り遅れるな」と焦るよりも、今後2〜3年は自社での大規模なAI投資を抑制し、非競合領域を含め、アーリーアダプター企業の成否を冷静に観察するのが賢明であろう。今はむしろ“深呼吸”のタイミングである。冷静な「観察者」の視点を持ち、AI企業倫理を強化することが、長期的な安全と成長につながる。
