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生活者データバンク

値上げしても「売れるブランド」は何が違う? データで導く、ファン維持の「生存戦略」

「高いけど買いたい」を作るコミュニケーション戦略

 値上げを成功させるためには、日常的なヘビー層の育成施策と合わせて、ブランド価値を的確に伝えることも重要です。そもそも値上げは単なる価格改定ではなく、生活者に心理的な負担を与える行為です。価格が上がることで「損をした」という印象が生じやすく、その不満が購買離脱につながる可能性が考えられます。この心理的ハードルを乗り越えるために重要なのが、値上げ時のコミュニケーション戦略です。

 成功ブランドに共通するのは、値上げ後も広告や販促を継続し、提供価値を丁寧に再提示している点です。たとえばコーヒー飲料ブランドは、香り・ひと息つく時間・日常性といったブランド価値を継続的に訴求し、“日常の相棒”としての存在感を保ち続けてきました。その姿勢は、買い物登録アプリに寄せられた生活者の口コミにも表れています。

 「ほっと一息つきたい時も買いたくなります!」(女性 30代)
 「香りも風味も良い!」(女性 30代)
 「あっさりしていて、毎日仕事のお供に飲んでる。」(女性 40代)
 「いまや毎日欠かせないものになっています。」(女性 30代)

 これらの口コミは、コーヒー飲料ブランドが単なる飲料ではなく、“習慣の一部”として生活者の中に定着していることを示しています。この“日常の質を上げる体験”こそが、値上げ局面で心理的負担を和らげる強固な土台になります。

 同じくカップ麺も、ブランドの歴史・革新性・変わらぬおいしさといった価値を一貫して発信し続けてきました。特に「変わらぬおいしさ」は、長年のブランド資産として生活者に深く浸透しています。

 「定期的に食べたくなる安定したカップ麺」(女性 30代)
 「学生時代から愛してやまないカップ麺。変わらぬ味でよかったです。」(女性 30代)
 「昔から変わらぬカップ麺。」(男性 50代)
 「手軽さ、美味しさ、ともに完璧です」(男性 20代)

 “変わらぬ美味しさ”に加え、“安定”や“手軽さ”といった声も、ブランド価値の核心そのものであり、値上げへの納得感を支える力になっていると考えられます。また、重要なのは、値上げ時に「理由」と「価値」をセットで伝えることです。「原材料高騰」「品質維持のため」など背景を丁寧に示しながら、生活者から日々支持されている“そのブランドの価値”を提示することで、生活者は価格以上の価値を感じ、関係性は維持されます。

まとめ ― 値上げ成功の条件とマーケターの次の一手

 本稿で見てきたように、値上げ後のブランドの明暗は、価格改定そのものではなく、複数の要素が相互に作用して決まります。ブランド特性、業態戦略、購買層構造、コミュニケーション──これらは単独ではなく、組み合わせによって耐性を形成します。重要なのは、値上げを防御策ではなく、ブランド戦略を再設計する契機と捉えることです。

 値上げは生活者に心理的負担を与える一方で、ブランド価値を再確認させる機会でもあります。購買データを活用し、現状を把握することで、値上げ後のリスクを予測し、打ち手を設計できます。また、ブランドが持つ固有の価値を一貫して伝え続ける姿勢も重要です。習慣化や信頼感が、値上げ局面での心理的ハードルを乗り越える力になります。

 短期的な価格対応ではなく、長期的なファン作りこそが最強の防衛策となります。まずは自社ブランドの顧客構造をデータで可視化し、「ヘビー層」のインサイトを深掘りすることから始めてみてはいかがでしょうか。それが、値上げ環境で勝ち残るための第一歩です。

【CODE(コード)】
 月間30万人のアクティブユーザーが日々の買い物データを登録しているアプリ。利用者はレシートや購入商品のバーコードをスキャンすることで、提携ポイントに交換可能な「TAMARUポイント」が貯まり、その他にも、移動で貯まるポイントやクーポンなど、楽しみながらポイントを貯められる。家計簿としても活用できる。

月間商品登録数:約4,000万点口コミ・評価数:累計1.3億件超
主な利用層:20〜50代女性
特許取得済み:複数の特許を保有(例:特許第5980448号ほか)

【買いログ】
 CODEユーザーが登録した購買データや口コミを閲覧できるBIツール。定量データ(購入履歴)と定性データ(口コミ・評価)を含み、加工食品・飲料・日用品のほか、生鮮・惣菜までの幅広いカテゴリーをカバーしている。消費者から直接収集したデータのため、商品名やチェーン名をマスキングせず公開可能。

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この記事の著者

井口 颯一朗(いのくち そういちろう)

株式会社リサーチ・アンド・イノベーション 新規事業部

2024年に大学院卒業後、インテージに新卒で入社。同年6月よりリサーチ・アンド・イノベーションに出向しメーカー・流通向けの新規事業開発や購買データの分析に従事。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/12/17 08:00 https://markezine.jp/article/detail/50232

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