スポンサー収益は前回の2倍、1.9兆円超え
2026年6~7月に開催されるFIFAワールドカップ(W杯)。米国・カナダ・メキシコの3ヵ国共催は史上初であり、出場国も従来の32ヵ国から48ヵ国へ拡大させた。オリンピックや世界陸上を上回る「史上最大規模」に加え、運営面の複雑性も格段に高い大会となる。
試合数は64試合から104試合へ増加し、開催期間も39日間に延長される。FIFAは2023〜2026年のスポンサー契約サイクルにおいて130億ドル(約1.9兆円)超えの収益を見込み、前回カタール大会(75億ドル)から約2倍となる見通しだ。
W杯は「試合やファン目線での盛り上がり」で語られがちだが、世界スポンサーの巨額コミットメントと各国放映権料を引き出す大会で、世界経済のパワーバランスが見える。さらに、オンライン放映配信や売買取引の新市場創出と、開催国・都市では受け入れインフラ負荷とそのリターンが生じる巨大駆け引きマーケティングである。
日本企業はどこへ?スポンサー企業の構成に起きている変化
W杯のスポンサー構成は、かつての「日・米・欧企業中心」から「中東・中韓・米国企業中心」へと完全にシフトした。
1990年代から2000年代初頭にかけては、SONY、Canon、Fujifilm、JVCといった日本の代表企業がピッチサイドを独占していた。しかし、SONYが2014年に撤退して以降、日本企業の姿は消えたままだ。
2026年W杯で最も象徴的なのは、サウジアラビアの国営石油会社「Aramco」が、FIFAの最大級スポンサーで契約したことである。Aramcoは1年で推定10億円×10年以上のスポンサー費をFIFAに確定した。2034年のW杯開催地選定と強く連動した国家戦略的な先行予約をつくる戦略投資だ。「化石燃料=気候変動」という旧来のイメージでは理解できない、AI産業が需要必須とされる“エネルギー大国”が見えてくる。同じく中東の「Quatar Airways(カタール航空)」も同調の国勢が窺える。
その他、中国のLenovo(テクノロジー)やMengniu Dairy(乳製品)、Hisense(家電)、韓国のHyndai/Kiaなどが主要スポンサーに名を連ねる。中韓・中東企業の動きは、これまで欧州や日本が前提としていたスポーツマーケティングの常識とは完全に異なる「次の20年」を示している。
日本での放映権については、2022年カタール大会ではABEMAが約200億円の放映権で全試合無料中継を実施したが、2026年大会の放映は電通+NHK+日テレ・フジ+DAZNのチームでの実施となる。推定350億円規模と言われており、これも前回の1.5倍以上である。
