効率化か、それとも人間拡張か──AIが突きつける分岐点
2022年後半以降、爆発的に普及した生成AI。説明文から画像を作成する「Midjourney」や、大規模言語モデル(LLM)を使った対話型の生成AIサービスの「ChatGPT」が瞬く間に世界に広がり、創作活動はもちろん、業務改革や効率化に向け一気に導入が進んだ。2025年はAI技術がさらに進化し、特定の専門業務を担うAIエージェント(エージェンティックAI)が登場して、AI活用は今後もさらに広がっていくと見られている。
こうしたなか、「生活者を真ん中においたAIテクノロジーを。」というコンセプトの下、「Human-Centered AI」という哲学を基にAI活用を推進しているのが博報堂DYグループだ。
2025年12月2日〜4日に都内で開催された「ADVERTISING WEEK ASIA」に登壇した博報堂DYホールディングス 代表取締役社長の西山泰央氏は、「AI-Powered Creativity:AIと、価値ある未来をデザインする」と題する講演のなかで、この哲学について次のように説明した。
「この“Human-Centered AI”は単なるスローガンではありません。北米では、AI投資を拡大する一方、大規模な人員削減が続けられており、私たちは『人間がAIに使われるのか、使いこなすことができるのか』という分岐点に立たされています。そうしたなか、私たち博報堂DYグループはAIについて『単なる効率化の道具ではなく、人間の可能性を拡張する共創パートナーであり、使いこなすことができるものとして向き合っていこう』と明確に決めました。そのスタートとして、私たちがどのようなビジョンの下、どのような取り組みを行っているのかを紹介したいと思います」(西山氏)
博報堂DYグループの“Human-Centered AI”を具現化した「バーチャル生活者」
ADVERTISING WEEK ASIAのテーマは、「Creativity excites Industries(創造性が産業を盛り上げる)」だ。西山氏はこの言葉に深く共感したという。
「あらゆる産業モデルが刷新されつつある現在、『AIは人間のクリエイティビティを本当に拡張できるのか』という問いは避けて通れません。この問いを、ぜひ広告業界、そしてすべてのリーダーとともに考えていきたいと思い、『AIと、価値ある未来をデザインする』という講演テーマを定めました」(西山氏)
そんな博報堂DYグループが、同社の哲学である“Human-Centered AI”を具現化したものが、2025年11月に発表された「バーチャル生活者」だ。バーチャル生活者とは、これまで同社が蓄積してきた膨大な生活者データと日々アップデートされるデータをAIに学習させ、バーチャル上の“人格”として再現したソリューションだ。
「これにより、当社の社員は、PCを開けば『いつでも本音が聞ける生活者』と対話できる環境を手に入れました」と西山氏。これまでのデータ分析やペルソナ作成の限界を超え、社内で日常的、かつ瞬時にマーケティングにおける「生活者発想」を実現する革新的な一歩であり、博報堂DYグループではそんな新しい世界がスタートしているという。

