「新しい体験価値」を提供する
4つ目のカテゴリーは、既存の体験価値から大きく外れた新しい体験を提供する広告です。無料サンプリングに慣れたZ世代に対し、参加型の仕掛けや日常に潜むリスクの実感など、記憶に残る体験を設計します。
ミッションクリア対価
特典を得るために何らかのタスクをクリアする必要がある広告です。コロナ明け以降、POP UPで無料サンプリングを受ける機会が増え、Z世代は「もらえて当たり前」という感覚になりがち。斬新な課題を達成しなければ対価を得られない仕組みにすることで、対価へのありがたみが増します。
皿洗いや着ぐるみを着るなどの仕事を10分間体験して引換券をもらうと、名店「兆楽」監修の中華料理を食べられるというイベント。未経験者歓迎、履歴書不要、面接不要で参加可能。「本当の先輩」のようにサポートしてくれるスタッフによる没入体験も話題に。
潜在日常リスクスリル実感
日常に潜むリスクの恐ろしさを実感させる広告です。SNSトラブルや炎上といったリスクは、Z世代にとって「芸能人やインフルエンサーの話」「モラル違反をした人の自業自得」として、なかなか自分ごと化されません。スリルを感じながらリスクを体験させることで、危機感を持つきっかけを提供します。
人気インフルエンサーを起用し、スマホカメラのみで撮影した写真を展示。"何気ない日常こそ、かけがえのない時間"という展示コンセプトの裏で、SNS投稿における個人情報漏洩をテーマにしていた体験型写真展。制服の校章から学校が特定されるケースなど、日常に潜むリスクを可視化した。
簡易アハ体験
友達との話題にできる体験を、日常に潜ませてくれる企業に好感を抱きます。Z世代は、BeRealやSnapChatなどのSNSを通じて、些細な日常でも友達と共有する習慣がついています。予期しない驚きや「発見した!」という体験があると、テンションが上がり、シェアしたくなります。
発売30周年記念プロジェクトの広告。「社長に○を落としてください」と書かれている看板に、フラッシュをたいて写真を撮ると「ブラックサンダー30周年」の文字や骸骨になった社長が浮き上がる仕掛けになっている。
前編・後編を通じて、2025年にZ世代に刺さった広告を7つのカテゴリーに分けてご紹介しました。
「外れる」広告を企画する際に意識すべきポイント
「思いっきり外れる」というアプローチは、単に奇抜な表現やユーモアを追求すればよいというものではありません。本質的に重要なのは、Z世代が抱えている「社会的な窮屈さ」や」を正確に捉えることです。
今回の事例で言えば、「ルッキズムへの疲れ」や「SNSでの炎上リスクへの怯え」といった、彼らが日常的に感じている心理的な負担を解消するために、あえて定石から外した手法がとられていました。
単なる思いつきの逸脱ではなく、「その窮屈さから彼らを解放したい」という明確な意図があるかどうかが大事だと思います。その視点があるかないかで、ターゲットに「共感」として受け入れられるか、あるいは「単なる悪ふざけ」として退けられてしまうかが変わってくると考えます。
2026年もこの「二極化」の傾向は継続しますが、その中でさらに「人間らしさ」が重要なキーワードになると予測しています。
生成AIの進化により、個人の好みに合わせる精度や、便利さが極限まで高まるからこそ、効率性だけでは語れない「泥臭いプロセス」や、五感をともなう「身体的な体験」など、「生っぽさ」を感じさせるコンテンツこそが、これからの時代において、より深いエンゲージメントを生む広告になると考えています。
