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MarkeZine Day 2026 Spring

これからのパーソナライゼーション

「美容迷子」「健康迷子」を救うため花王、キリンらが価値共創 パーソナライズを進化させる“RNA”活用

「束になった時に最大の価値」花王とキリンのリーダーが語る企業間連携の狙い

 現状においてRNAの活用は一定の成果が見えているが、この社会実装を実現する過程では、いくつかの大きな困難も存在した。その最たるものは、企業間の「競合意識」という組織的な課題である。特に美容や健康という隣接する領域で、独自の技術やブランドを持つ企業同士が連携することは、従来のビジネスモデルでは異例のことだった。この課題を解決するために、RNA共創コンソーシアムでは「生活者の課題解決」という共通の目的が最優先事項に掲げられた。

 花王の長谷部氏は、「我々だけでできないことは他社がやってくれる。それが束になった時に、生活者にとって最大の価値が生まれる」と語り、競合意識を超えた協調の必要性を説いた。これに呼応するように、キリンホールディングスの磯崎氏も、自社の持つ免疫研究の知見をRNA技術と掛け合わせることで、セルフケアの質を一段引き上げるというビジョンでコンソーシアムに合流した。

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キリンホールディングス株式会社 代表取締役会長CEO 磯崎功典氏

 企業が持つ個別の「点」の技術を、RNAという「線」で結ぶことによって、これまで単独では解決できなかった「一人ひとりに最適な健康・美容習慣の提案」という大きな課題の解決に道筋をつける。これがコンソーシアムとして生活者と企業の双方にメリットをもたらすロジックだ。

 RNA導入初期には、解析の利便性やデータの精度の担保といった技術的なハードルもあったが、AI技術の高度化と膨大なデータの蓄積により、スマートフォン一つで本格的な解析ができる環境を構築してきた。また先述の花王での事例のように、サブスクリプションモデルを採用することで、導入後のユーザーの変化を継続的に追い、その時々の状態に合わせた最適解を提示し続けることができる。この仕組みが整えられたことも、組織的な運用の成功要因と言える。

One to Oneマーケティングの新たな地平

 本事例から得られる最も本質的な教訓は、これからのマーケティングは「最大公約数的な訴求」から、科学的根拠に基づいた「真のOne to Oneリコメンド」へとシフトしていくということだろう。これまでのマーケティングは、年齢や性別、あるいは過去の購買履歴といった属性情報に基づいて行われてきたが、RNAという生体情報を活用することで、より本質的な「今の体の欲求」に応えることが可能になる。

 アイスタイルの遠藤宗氏は、「自分を知って、最適なものと出会う。RNAのプロフィールが選択の大きな要素に変わる」と述べ、従来のブランド人気や成分だけで選ぶ時代から、個々の生体データに基づく選択が主流になるパラダイムシフトを予測している。

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株式会社アイスタイル 代表取締役社長 兼 COO 遠藤宗氏

 ここで重要なのは、RNAは変化し続けるという点だ。固定的なパーソナライズではなく、変化し続ける自分を継続的にアップデートし、その都度最適な選択を行うという「動的なパーソナライズ」こそが、これからのビジネスの方向性を示唆している。

 また、RNA共創コンソーシアムの歩みは、プラットフォームやメーカーの垣根を超えたエコシステムの重要性を浮き彫りにした。花王が持つ解析技術、キリンが持つ健康素材、アイスタイルが持つ生活者データベースとプラットフォーム。これらが一つの「RNAという物差し」でつながることで、生活者は一貫性のあるサービスを受けられるようになる。

 花王・長谷部氏が登壇時に語った「最強のマーケティングとは、商品が自分に合わないお客様にはリコメンドしないこと」という言葉は、徹底した顧客中心主義が、結果としてブランド評価の最大化と廃棄の抑制といった持続可能なビジネスモデルを構築することを示している。

 このように、RNA技術の社会実装は、単なる美容・健康情報の提供に留まらず、科学的な根拠をもって「自分らしさ」を支える新しい社会インフラとしての可能性を秘めている。企業間の協調とデータの共有が、生活者一人ひとりのQOL(生活の質)を向上させ、ひいては産業全体のアップデートを促す。この事例は、技術とビジネス、そして社会貢献が高度に融合した、次世代のビジネスモデルの先行事例と言えるだろう。

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この記事の著者

安原 直登(編集部)(ヤスハラ ナオト)

大学卒業後、編集プロダクションに入社。サブカルチャー、趣味系を中心に、デザイン、トレーニング、ビジネスなどの広いジャンルで、実用書の企画と編集を経験。2019年、翔泳社に入社し、MarkeZine編集部に所属。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2026/01/23 09:00 https://markezine.jp/article/detail/50317

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