“外部の視点”を活用、サービスの魅力を伝えやすく
NTTドコモビジネスの平川氏は、「お客様の視点でサービスの魅力をわかりやすく伝えるために、外部のプロの目線を取り入れたいと考え、武井さんに入っていただきました」と語る。
では、武井氏はNTTドコモビジネスでどのような活動を実施したのか。新規事業の立ち上げと成長においては、0から1を生み出す「内省フェーズ」、1から10に広げる「社会化フェーズ」、10から100に拡大する「社会実装フェーズ」がある。
新市場創出を目指す今回のプロジェクトは、社会化フェーズにおける取り組みだ。この段階では、社内外のステークホルダーと接触し、そこから得られる意見や要望を踏まえて事業を改善していく。これまで想定していなかった価値や課題も見つかる。
そのため、武井氏が最初に取り組んだのが、様々な関係者や資料によるインプットだ。具体的には、社内の各営業チームに「どのようなクライアントの、どの部署や役職の人に、どのような話をしているのか」「競合はどのようなサービスか」などを細かくヒアリング。開発チームにも、開発の意図やプロダクトに込めた思いについて聞かせてもらった。
また、NTTドコモビジネスが蓄積している社内アンケートや社外リサーチの資料も読み込んだ。さらに、外部の人の意見を聞くために、サービスについてメディア関係者らに説明する場に同席し、寄せられた意見や質問に耳を傾けた。
そういったデータをインプットしていくと、様々な強みや課題が見えてくる。「やるべきことがたくさんある中で、実際に何を優先して取り組むべきか。深掘りして整理していきました」(武井氏)
その中で改めて感じたのが、NTTドコモビジネスが誇る技術力の高さだ。「日本で唯一」と訴求できる技術を有しており、受賞実績もある。それらを積極的に打ち出していくべきだと考えた。
現場の実行力を劇的に高めた共創プロセス
一方、サービスに関する営業資料には、大きな課題があると感じた。顧客視点よりも、開発部門や社内経営企画向けの言語・視点でまとめられているものが多く、営業担当者が顧客にそのまま使いにくい内容になっていたのだ。
「営業現場の視点で見ると、もう少し内容をわかりやすくかみ砕いて表現したほうが、営業先に持って行きやすいのではないかと感じました」(武井氏)
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特に、最も重要なポイントである「ネットワークとセキュリティ」に関しては、用語が難解だ。経営・開発視点の社内言語や業界用語を、できるだけわかりやすい言葉に落とし込んでいった。
同サービスでは、従来は50枚もの分厚い資料を使っていたが、商談用として3~5枚の営業資料にまとめた。また、セキュリティ機能に特化した手引書なども作成した。
「ITリテラシーが高くない人にも伝わるようにするために、どこまで言葉を平易にするか、意識しました。どのような人にとってもわかりやすい営業資料に仕上がったと思います」(武井氏)
その過程で欠かせなかったのが、NTTドコモビジネス側のチームとの“壁打ち”だ。
武井氏は毎週の会議に向けて、「お客様に伝わりやすいメニュー名/見せ方の整理」「プレスリリースに向け、メディアに伝わりやすいシナリオ検討」といった宿題を設定。自身の視点でたたき台を作って会議に参加し、内容についてディスカッションを重ねた。その作業によってプロダクトの強みを理解し、営業資料に落とし込むことができた。
「会議で出た意見や要望を集約したものを翌週に持って行き、また議論する、という作業を続けていきました。毎週3歩進むけれど、新しい情報が入ることで1歩下がる。それでも着実に2歩ずつ進んでいきました」と武井氏は振り返る。
NTTドコモビジネスの平川氏も「社内では、様々な部署から情報や要望、指示が飛んできます。それらの情報を武井さんと共有し、日々の相談に乗ってもらいながら、客観的な目線で方向性を見出せたことが良かったと思います」と話す。
重要なのは、壁打ち相手が「一緒に言語化する人」かどうかだ。コンサルティング会社の分析レポートを社内で読み解く作業は負担になりやすいが、週次で情報を共有しながら言語化を並走する形であれば、アウトプットが社内の言葉として定着しやすくなる。

