インサイトとマスデータの「分断」を埋める。東芝が提供する次世代のマーケティング基盤
マーケティング分野でのAI活用ソリューションも提供している。東芝では、「スマートレシート」と「レシートスキャン」というアプリで購買データを収集している。
スマートレシートはスマホに電子レシートが届くアプリだ。一方、レシートスキャンはレシートをスマホのカメラで撮影すると、自動で内容を認識して記録できる家計簿アプリ。どちらも利用者の許諾を取ることで購買データを利用することができる。
ただし、そのままのデータは使いにくいため、AIでメタデータ付与やクレンジングを行い、さらに統計加工などを施してビジネスを推進している。
これまでのデータ分析の課題として、宮崎氏は「インサイトを測るパーソナルデータ」と「POSなどのマスデータ」に分かれていたことを指摘。
「消費者のアンケートデータなどは、インサイトを探ることはできるが定量的な観測が難しいという弱点もあります。一方、POSデータではどんな商品が、どういった属性に売れたかというデモグラを把握できますが、その先の行動までは追えません。各小売りチェーンでデータが区切られているため、横断できないことも課題です」(宮崎)
チェーンの壁を越える「One ID」。AIがレシートを価値あるデータへ変える
消費者が複数のチャネルで買い回りしている時代に、個別のPOSデータだけを参照しても消費者像を捉えきれない。
そんな中、東芝のスマートレシートとレシートスキャンを組み合わせたデータでは、One IDで会員の購買情報をトレースできる。レシートデータはそのままでは価値化が難しいため、同社の「レシートインフォマティクス」というAIを活用した技術を用いて、価値を向上しているという。
たとえば、スーパーの購買データのうち約44%を占める生鮮食品や総菜などの「インストア商品」は、チェーンごとに異なるコードが振られているため、従来は名寄せが困難だった。東芝のソリューションでは、AI技術を活用することで、「豚肉」「鶏肉」といった詳細な分類を付与できるようになった。
同社は、ZENB JAPANと共同でこのレシートインフォマティクスのソリューションを活用し、グルテンフリー食品の市場を分析。
アンケートでは「健康ニーズとの相関がある」ということが分かっていたが、公開ビッグデータを用いてAIで分析した結果、さらに詳しい定量的なマーケットの傾向が明らかになった。具体的には、グルテンフリー食品の購買特性は「糖質オフ」「タンパク質摂取オン」「食物繊維摂取オン」であることが分かったという。
グルテンフリーという新しいジャンルで分析する際には、商品をカテゴライズするところにハードルがある。さらに、グルテンフリーと相性のよい商品まで知りたい場合、データを幅広く捉えることも必要だ。東芝のソリューションが、ビッグデータのままカテゴリーを横断して分析するからこそ抽出できたインサイトだ。
「日々様々なデータが生まれ、使えるデータも多様化しています。それを人の手だけで検証していく活動には限界があります。そんな中、昨今のAIの台頭によって、大量のデータを多角的に分析することが可能になりました。個人のライフスタイルや価値観など、従来の分析では見えなかったテーマでデータが眺められるようになってきたのです」(宮崎)
このことから宮崎氏は「これからデータ分析には、人の経験やバイアスにとらわれることなくデータと向き合うことが求められるのではないか」と提起した。
現在東芝デジタルソリューションズでは、スマートレシートとレシートスキャンによって収集した公開データを、AIエージェントを介して会話を通して活用できる環境を構築している。公開データを幅広く活用することで、経営課題に迫るデータ分析や、自社だけで見えなかったインサイトの発見につながるだろう。
「自社のデータだけでは十分にインサイトが見えなかった、といった課題を抱えている企業さんは多いと思います。そういった時には、ぜひこの公開データを活用する方法をご相談いただければと思います」(宮崎)

