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マーケターの「直感」を「論理的な戦略」に昇華する「5Sフレームワーク」

CEPは「広さ」と「深さ」の使い分けが重要!勝てる戦略立案に不可欠な「選択(絞る)」の3ステップ

 市場調査や競合分析を重ねるほど、失敗を恐れるあまり「あれもこれも」と盛り込んだ、特徴のない企画書になってしまう……。そんな、いわば「幕の内弁当」のような総花的な企画の罠から抜け出す鍵は、勇気を持って勝負どころを定める「選択」にあります。 本連載では、積水ハウス イノコムCROの日ノ澤氏が、直感を納得感ある戦略へと昇華させる「5Sフレームワーク」を解説。第3回は、整理された材料の中から勝てる筋を絞り込む「Select(選択)」のステップを解説します。

企画はなぜ「幕の内弁当」になってしまうのか

 「せっかくここまで検討したのだから、全部伝えましょう」

 市場調査や競合分析を重ね、成功させたいという思いから、企画書にあれもこれも訴求ポイントを盛り込みたくなった経験はないでしょうか。多面的に検討するうちに訴求ポイントは増え、結局「何でもできます」という企画になってしまう。これが、実務でよく見られる「幕の内弁当化」の罠です。 前回の「Structure(構造化)」では、市場調査や競合分析、顧客の声などをもとに、企画の材料を整理しました。ですが、そのまま企画書に盛り込むと、最終的に誰にも思い出されない企画になってしまいます。そこでカギとなるの「Select(選択)」のステップです。

Take Away:この記事で得られる3つのヒント
  • 戦略とは「広さと深さ」の両立である
  • CEP(思い出される場面)は増やすほど良いが、個々の施策では焦点を絞る
  • AIとの壁打ちで候補を広げ、施策では「思い出されたい文脈」に集中する

※「CEP」とは:Category Entry Pointsの略。顧客が商品カテゴリーやブランドを思い出す“きっかけとなる場面”のことで、本章のキーコンセプト。

  • See(観察):直感を適切な問いに変換する
  • Structure(構造化):競合の戦略を解き明かし、市場を読む
  • Select(選択):勝てる戦略を絞り込む(★今回)
  • Solidify(具体化):実行可能な形に具体化する
  • Settle(決断):責任を持って「納得解」を選ぶ

CEPをめぐる「2つの誤解」

 Select(選択)に入る前に、まず「絞ること」をめぐる2つの誤解を整理しておきます。

 「戦略を絞る」と言うと、次のような誤解が生まれがちです。一つは「絞る=魅力を削ること」だと捉えてしまうパターン。この思考だと、見つけた強みをすべて伝えようと総花戦略になり、かえって顧客の頭に何も残らなくなってしまいます。

 もう一つは、「絞る=最初から一点に決め打ちすること」だと捉えてしまう誤解です。十分に広げる前に一つの切り口へ飛びつくと、本来狙えたはずの場面を見落としてしまいます。「今回の施策でこの場面に絞る」ことと、「ブランドとして一つの場面しか狙わない」ことは全く別の話です。一つの場面だけに依存するブランドは、想起される機会そのものが減り、長期的には新しい顧客との接点を失いやすくなります。

 大切なのは「広さと深さ」の両立なのです。

 そして、ここでいう「広さ」には2つあります。一つは、ブランド全体として多くのCEPと接点を持つこと。もう一つは、施策を考える初期段階で、思い出される場面の候補を十分に広げることです。ただし、個別施策ではそのすべてを語るのではなく、今回勝ちにいく場面を一つに絞ります。

 実は私自身も、一つ目の罠に陥ったことがあります。

 保険商品のマーケティングに関わっていた際、顧客ヒアリングから「補償範囲の広さ」が価値になりうると考え、「幅広い補償」を前面に打ち出しました。顧客がまだ気づいていない価値を伝えようとした判断には、一定の根拠がありました。

 ただ、今振り返ると、「補償の広さを説明すること」と「必要な場面で思い出してもらうこと」を混同していました。どれだけ手厚い補償であっても、顧客が不安を感じた瞬間に思い出されなければ、選択肢には入りません。

 保険を意識する場面は、自然災害への備えを考えた時、家族構成が変わった時、住環境が変化した時など複数存在していました。つまり、“広げる”こと自体はできていた一方で、「どの場面で最も強く想起されたいか」を絞り切れていなかったのです。

 ここで重要になるのが、本稿の核である「CEP(Category Entry Points:顧客がブランドを思い出すきっかけとなる場面や状況)」です。

・CEPの「広さ」:ブランド全体の長期的な成長戦略

ブランドの成長には、既存顧客の購買頻度を高めること以上に「そのブランドを買う人を増やすこと」が重要です。つまり、多くの場面で思い出されるブランドほど、新しい購買機会が増え、結果として浸透率(=そのブランドを買う人の数)が高まっていきます。顧客が商品を思い出すきっかけとなる場面を多く持つことは、ブランド全体の長期的な成長につながります。

・CEPの「深さ」:個別の施策における勝負どころ

一方で、個別の施策においては、特定の場面との結びつきを強くすることが重要です。今回の施策でどの場面に集中するかを定める判断——これがSelect(選択)の核心です。

 ブランド全体では広く・長く。個別施策では今回強化する場面を一つ選ぶ。この両立を混同しないことが、戦略精度を上げる出発点になります。もちろん差別化も重要ですが、実際の購買では「その場面で自然に思い出されること」が大きく影響します。

【オンライン開催】MarkeZine Day 2026 Onlineに連載著者の日ノ澤氏が登壇!

 5月21日(木)18:00~18:30に「5Sフレームワーク」を30分で解説予定。オンラインでどなたでも無料でご視聴いただけます。視聴には事前登録が必要です。登録はMarkeZine Day 2026 Online公式サイトから。

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勝てる文脈に絞る「Select(選択)」の3ステップ

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マーケターの「直感」を「論理的な戦略」に昇華する「5Sフレームワーク」連載記事一覧
この記事の著者

日ノ澤 恵莉(ヒノサワ エリ)

積水ハウス イノベーション&コミュニケーション株式会社 CRO(Chief Research Officer) 

Royal Holloway, University of London MBA修了。オリエンタルランドでテーマパークのマーケティング戦略・商品企画を担当後、ソフトバンクや大手損害保険会社...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2026/05/19 09:30 https://markezine.jp/article/detail/50756

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