ケーススタディ:網羅性訴求から、思い出される場面を選ぶ
同じ考え方は、他の商品やサービスにも応用できます。別の事例で確認してみましょう。
たとえば、総合栄養サプリメントのブランドを考えます。これまでは「必要な栄養素をこれ一つでカバー」と網羅性を訴求してきましたが、類似商品が増えた結果、選ばれる理由がぼやけていました。
AIとの壁打ちを通じて、「思い出されうる場面(CEP)」を広げていくと、健康診断前・疲労時・繁忙期前・睡眠不足など、多くの想起文脈が見えてきました。AIは仮説を広げることには強い一方で、実際にどのCEPが有効かは、購買データや継続率などの検証が必要です。
次に、購買データとAIとの壁打ちを重ねると、「栄養補給」よりも、“忙しくなる前に整えておきたい”という心理との結びつきが強いことが浮かび上がってきました。繁忙期前との相関・継続率の高さ・想起との結びつきの強さを改めて確認し、「忙しくなる前に整える」に焦点を絞ることを決定しました。
最後に、「忙しくなる前に整えるサプリ」という想起の核を定めます。こうして、「どの場面で、どう思い出されたいか」が明確になります。

まとめ:「広さ」と「深さ」を使い分けることで、選ばれる確率が高まる
総花戦略でも一点突破でもなく、「ブランド全体では広く、施策では深く」という両立が戦略の核心です。
AIとの壁打ちで強みを具体的な事実に変換し、CEP候補を網羅的に広げた上で、今回の施策で焦点を当てる場面を一つ定める。重要なのは「何かを捨てること」ではなく、広げた選択肢の中から「今回の企画で何を前面に出すか」を決めることです。
この3ステップを通じて、「どんな場面で思い出されるブランドになるか」が明確になり、選ばれる確率が高まります。AIは候補や論点を広げる上では有効ですが、「どの場面で強く想起されたいか」を決めるのは、現場と顧客を知る人間です。「広げる」と「絞る」を行き来しながら、AIを"思考の壁打ち相手"として使いこなすこと——それがSelectの要点です。
次回は第4章「Solidify(具体化)」です。絞り込んだ戦略を、広告・SNS・店頭などの市場接点へ落とし込み、「この場面ならこのブランド」を育てていくプロセスを解説します。
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