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決算書からザックリ理解!ビジネスモデル全解剖

なぜ赤字なのか? 夏野マジックは起きるのか?
決算書から分析するニコニコ動画の実態とこれから


 株式会社ドワンゴの子会社であるニワンゴが運営する「ニコニコ動画」。12月4日に行われた『ニコニコ大会議2008冬~ザ・デイ・ビフォー・明後日~』においてサービス名を12月5日をもって、(秋)から(冬)へと変更し、12日にはニコニコ動画(ββ)と生まれ変わった。しかし、同サービスは以前として“赤字”という言葉がつきまとう。今回は、赤字に陥っているその原因から同サービスのマネタイズ手法を分析し、今後の展望についてみていきたいと思う。【ビジネスモデル全解剖シリーズの1回目はカカクコムを解剖しています。記事はこちらへ】

2つの衝撃的コストが赤字スパイラルの原因

 2008年11月13日、『ニコニコ動画』を運営する株式会社ニワンゴの親会社である株式会社ドワンゴが決算発表を行った。決算資料『平成20年9月期 決算説明会資料』によると、今期(2007年10月~2008年9月)売上高は249億7,800万円、経常利益はマイナス1億700万円となり、小幅ながら赤字となった。

 対前年同期比(2006年10月~2007年9月)でみると、売上高は222億5,700万円、経常利益はマイナス3億1,000万円となっており、対前年同期比の今期売上高ベースでは約12.2%の成長を遂げており、部分的に見れば悪い数字には見えない。しかしながら、経常利益ベースではいまだ赤字となっているのが現状だ。

 なぜ、売上高の成長があるにもかかわらず、赤字幅がなかなか減らないのであろうか。それは、ニコニコ動画を含めたいくつかの事業が、高コスト体質にあるためである。高コストの最たる原因として挙げられるものは「通信費」と「著作権等使用料」…この2点である。

 
前期
2006/10 - 2007/06
今期
2007/10 – 2008/06
売 上 原 価
11,044
14,232
 
外注費
3,307
2,669
人件費
3,059
3,452
通信費
524
1,482
支払手数料
1,785
1,716
著作権等使用料
2,782
4,264
その他経費
1,914
2,054
( 他 勘 定 振 替 )
(2,329)
(1,407)

(単位:百万円)

 ここで、再度決算資料に目を戻してみたいと思う。上記は、ドワンゴ社の売上原価(売上をあげるためにかかったコスト及び販売プロダクトの製造のためにかかった製造コスト)の一覧表であるが、製造費用の欄にある「通信費」と「著作権等使用料」の項目に注目していただきたい。

 通信費を見てみると、前期が5億2,400万円だったのに対して、今期は14億8,200万円と飛躍的にその額が増している。比率でみると、約2.8倍のコスト増である。一方の「著作権等使用料」はというと、前期が27億8,200万円なのに対して今期累計は42億6,400万円となっており、約1.5倍のコスト増となっている。「通信費」の増率については目を見張るばかりであるが、なぜこのような数値結果となってしまったのだろうか。

通信費

 「通信費」においては、言うまでもなく『ニコニコ動画』のユーザー増による回線利用負担の拡大である。ニコニコ動画は月間約50万人のペースで会員が増えており、会員数は2008年12月3日時点で約1,029万人にものぼっている。また、PV数は2008年10月の計測値では、一日約5,700万PV(単純計算で月間累計17.6億PV)、UU(ユニークユーザー)数については一日221万人となっており、その勢いに通信費がおされた形になったというわけだ。

著作権使用料

 「著作権料等使用料」については、2008年4月に発表された「JASRACとの許諾に係わる契約締結」が大きく関係している。これまでニコニコ動画では野放し状態だった著作権が、JASRACという著作権管理機構が間に入ることで“ある程度”管理される状態になったのだ。しかしながらその代償として、コストの前期比1.5倍増という結果を招いたのである。

 また、当該コスト増については、別の要因も存在している。それは、ドワンゴの主力事業である着メロサービスである。特に、「着うたフル」については、期初と比較してその会員(利用/購入者)数が約1.6倍近くに跳ね上がっている(『平成20年9月期 第3四半期決算説明会資料』参照)。”着うた”は、歌詞、楽曲…と複合的に著作権が絡み合ってくるものでもあるため、売上に正比例してコストが積み重なっていくのは当然のことである。

 さて、ここまでお読み頂ければ「なぜ赤字なのか?」ということがわかったかと思うが、赤字になる(もしくは、高コストになる)本質は実をいうと、そのビジネスモデル自体にあるのである。

 着メロ事業については先述した通りであるが、売上があがった分だけ管理機構に中抜きされる仕組みになっており、常に高率の著作権等使用料がコストとしてついて回る。また、ニコニコ動画については、利用者数の増加が容赦なく通信費というコストに転嫁される。加速度的にユーザーが増える=コスト増を意味する。しかしながら、その加速に収益の獲得が間に合ってないのが現状なのである。

 つまり、このような状態が続く限り、ニコニコ動画を含めたドワンゴ社の高コスト体質からの脱却は難しいのである。しかしながら、その加速度的なコスト増を埋めるべく様々なマネタイズの試みが行われているのも事実である。

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この記事の著者

池永 尚史(イケナガ ヒサシ)

 

1979年生まれ。CGMブログ・メディアを展開するベンチャー企業、インターネットサービス系企業を経て独立。2010年3月より株式会社ノイズ代表取締役。

 

■ 著書
・ 稼ぐアフィリエイターはブログが違う!(技術評論社刊)
・  ドロップシッピングス...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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2010/06/17 11:59 https://markezine.jp/article/detail/5125

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